表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/5

◇◇◇


 私、大野茜(おおのあかね)25歳、それなりに()()


「あー、ごめんね?」


 クリスマスにチキン屋さんで買ったバケツとケーキ、そして彼へのプレゼントを持って、メゾネットタイプのアパートに住む彼氏の家に突撃したら、あら不思議☆見知らぬ女、B子びーこがタオル一枚で出てくるじゃない☆


 水滴のついた長い黒髪をかきあげなら、にやにやと笑うびーこ。



 その後ろからひょっこと顔を出してきたのは、彼氏クズオ



 くそださいトラ柄のトランクス一枚で現れたクズオは、私を見てなんて言ったと思う?



「ちょ、連絡してよ(笑)!」



 薄ら(笑)い浮かべてるんじゃねえよ。ふざけんじゃねえよ!!


 って思ったわ☆


 そこから始まったのは、当然大乱闘スマッシュシスターズ。もしくは、クズヤローハンター。


 ……ん?私の世界だと大人気の格闘ゲームとモンスター討伐ゲームの名前よ。



「おっらああああああ」

「「きゃああああああ」」


 持ってきたケーキをクズオの顔面に投げつけ、チキンバケツの中身を、ビーコの足元に投げつけてやったわ。


 本当に、ぺ〇ちゃん、カー〇ルさん、ごめんなさい。ってちゃんと謝罪したわ……ん?


 ああ、可愛い女の子と偉大なおじさんの名前よ。



 で。


 勿論、二人もただやられるばかりじゃなかったわ。


 特に、ビーコ。


 即座に動きやすいようにクズオのくそださい恐竜のTシャツと短パンを着て、おいしいチョコレートケーキを私の顔面に叩きつけてきたわ。


 

 多分…二人で食べていたのでしょうね。


 それに気が付いた私は、なんだか無性に力が湧いてきて、ビーコの髪を思い切り引っ張ってやったの。


 こう、がしっと掴んで、ぐいっとね!



 そしたら、ビーコも私の髪を掴んできて、二人でアパートの前の道路で転がりまくったわ。



 私の絹のような肌は砂と擦り傷だらけ。コテで綺麗に巻いていた茶色の髪は、ぐっしゃぐしゃのぐしゃ。


 例えるなら、もう、からまりまくった毛糸超えてアフロって感じ。



「ちょ、うけんだけど」

「草」

「やべーって」


 時間は、丁度夕食時。


 近所の人たちは続々と家の窓から顔を出してくるし、シャッター音とか、笑いながら電話をしている音も聞こえてくるし、オーディエンスも最高潮☆って感じだったわ。


 でもね、争いを望まない心優しい人はどの世界にも存在するし、当然、醜すぎるバトルにはいつか終わりが来るもの。



「まあ。全員いい大人なんだから。ね」



 にやにや笑いながらスマホのカメラを私たちに向ける人がほとんどだったけれど、流石に誰かが通報したんでしょうね。


 しばらくしたら、警察官が来たわ。


 ……ああ、うん、そう。自警団みたいな感じ。


 まあ、夕食時に、あれだけ大騒ぎしてたら仕方ないんだけどね。



 え?犯罪者なのかって?


 では、一応ないわ。

 厳重注意、ってやつ。



 私いい子だから、警察官に注意されたら、すぐにビーコの髪から手を離したもの。


 一応、ビーコもね。


 お互い足を最後に踏み合ったけど、それもすぐに注意されたから、ちゃんとやめたわ。



「茜!」


 警察官とのやりとりや手続きが終わった後、立ち去ろうとする私の名前を、クズオが大きな声で呼んだの。


 私はどこかで、流石にクズオが謝罪なりなんなりすると思ったわ。


 だって、このバトル(警察騒動)の発端は、浮気をしたクズオなんだもの。


 そう思って振り返ったら、


「俺たち、別れよう!」


 って。


 くそふざけたことを、クズオがビーコの手を握りしめながら、笑顔で言うの。


「ったりめえだろうが!死ね!」


 当然☆


 私は中指をクズオとビーコに向けたわ。



 私の判断、絶対間違ってなかったと思うの。だって、見送ってくれていたお堅そうな男性警察官が、私に向けて親指をたててくれたもの。


 私はすっきりした気持ちで、コンビニに向かったわ。


 あ、正式名称はコンビニエンスストアね。食べ物だけじゃなくって、便利グッズとか、緊急グッズとか、それはもういろいろ備えている、生きていれば一度はお世話になる最高なお店よ。



 そこで、私は籠いっぱいの買い物をしてやったの。


 酒。酒。おつまみ。酒。酒。酒。酒。おでん。

 あ、おでんは食べ物ね。美味しいよ。


 


「あ、あとおでんください、たまご一個と…大根ひとつ」

「あー……はい」


 途中までは誰かとパーティーでもするのかな、とか店員さんも思っていたでしょうに、一人分のおでんを頼んだ瞬間に何かを察したんでしょうね。


 どこか切なそうな目を向けてきたけど、今日働くあなたほどじゃないわ、ふふん。って気持ちを込めて、お釣りを受け取ってやったわ。


 ……え?アフロでぼろぼろだったからじゃないかって?そんなことないわよ。


 それで、酒とおつまみとおでんを持って、自分の家のアパートに帰ってきた私は、一人祝杯をあげたわ。


 そう、祝杯。間違ってないわ。

 着替えなかったのかって?着替えたわよ。

 化粧落として、シャワーを浴びて、お気に入りのソフトクリームピケ通称ソフピケのもこもこパジャマに着替えて、カラーコンタクトを外して眼鏡をかけて。


 ちゃんと臨戦態勢、整えたわ。


 私の家にはね、こたつがあるの。


 こたつっていうのはね、超絶最高な暖房器具よ。


 机の天板の下に専用のふとんを挟んで、電気を使用して机の中が温まるっていう、ものすごくいいもの。兎に角いいもの。


 寝るとき用のベッドではないんだけれど、こたつの魔力に取りつかれたら、抜け出せない人も続出よ。


 え?

 ああ、魔法道具ってわけではないわ。


 そのこたつのうえに、買ってきたものを綺麗に並べたわ。


 モッパンもできちゃう。モッパンは、食べ物食べながら動画配信することよ。動画配信ってのは……まあ、この世界にはまだないサービスよ。こたつ以上に抜け出せない人続出よ。ああもう、だから魔法道具ってわけではないわ。



 ででで。そんなわけで、祝杯の準備万端。


 そう、祝杯よ。

 だって、クズオと別れられた記念日だもの。



 クリスマスは毎年来るのに、『私がフラれた悲しい日』になるなんて嫌じゃない。私が、『クズ男と別れられた最高の日』、でいいの。


 いい?

 だから私は一人でこう叫んでやったわ。


「お前、巨乳好きじゃないって言ってたじゃねえかああああああ‼︎なんだよあの爆乳ううううう‼︎浮気男はち〇こきれて、〇ねえええええええええっ」




 ちなみに、私のアパートってわりといいところで、壁が厚いからご近所に聞こえてはいないわ。多分。


 ゴトンッて上の階の人が何かを落とす音が聞こえてはきたけど、それ以外は特に何も聞こえてこなかったもの。


 叫んでからは、いったんすっきりしたわ。


 とりあえず元々クズオの家に泊まる予定で次の日には何も予定いれてなかったから、飲んで飲んで飲みまくってやったわ。


 酒強いのかって?


 何言ってるの?酒が人を強くするのよ?飲んだらね、つらいことも、どーでもよくなってくるの。


 勿論、アルコールが抜けたら現実が待ってるのもわかってるけど、そのどーでもよくなる瞬間が、あの時の私には必要だったの。


 何でクズオと付き合ったのかって?

 顔だけはイケメンだったの。あ、イケメンって、かっこよかったってことね。


 そう、それでね。


 こたつでぬくぬくして、お酒飲んで、ちょっとだけ涙流して、おでん食べて。そんな時間が、私には必要だったの。


 え?クズオとどのくらい付き合ってたのかって?

 

……クリスマスイブの夜に付き合ったから、半日くらいかな。




『で。そのままこたつで寝落ちた私は、目が覚めたらこの世界に来てしまってたってわけ。しかも、こんな顔だけのカスになって』



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ