僕はこの国の大臣だ
僕はこの国の大臣だ。
父は立派な政治家で身を切る政策をしてこの国を良くしようとした。
あれの民営化だって父が頑張った成果だ。
全員ではないけれど一部でも他国に拉致された国民を取り戻せたのだって父がいなければ成功しなかったはずだ。
僕は父を尊敬している。
いつか僕も父のような偉大な政治家になりたいと思う。
今は大したことない大臣職だけどきっともっと高みを極めてやる!
「あっ、大臣。そんなところにいたんですか」
声をかけてきたのはとある団体の役員さん。
彼には某国の友人が沢山いてとっても国際的。某国語だってペラペラだ。
最近、何かと声をかけたり気遣ってくれたりしてくれる。
とても気さくで良い人だ。
「大臣、これからは石油燃料に頼らない太陽光などを利用した新しい発電こそが未来志向のエネルギーとなりますよ」
「へぇ」
彼は物知りだ。
そして、威張るでも何でも無く僕に親切にいろいろ教えてくれる。
この間だってレジ袋を大量に消費するのはエコじゃないって教えてくれた。
だから有料化にして少しでも国民にレジ袋を使うのを控えさせようと僕は思ったんだ。
彼はエコを考える僕を褒めてくれた。
地球に易しい僕を政治家として立派だと讃えてくれた。
こんな僕が大臣をしているこの国をラッキーだって言ってくれた。
うん。
僕って地球環境を考える良い政治家だよね。
こんな僕が大臣をしているこの国ってラッキーだよね。
そして、今度は彼から未来志向のエネルギーを意識した太陽光発電が提案された。
太陽光発電かぁ。
あの屋根の上にある奴だよね。
「なんたらソーラーじゃけぇ」とかテレビのCMでやってたなぁ。
でも、あれを使って発電するのって大変そう。
一軒一軒配置するのも手間がかかりそうだし、全世帯にってなったらどれだけ時間とお金がかかるかわからないよね。
「大臣、北海道の原生林を切り開いて太陽光発電パネルを設置すればかなりの発電を期待できますよ。ほら、大陸の某国ならお安く提供してくれますし。それに某国の少数民族の経済的発展にも寄与できます。自国のエネルギー問題もクリアして地球にも優しくて他国にも役立てる。良いことずくめですよ(にっこり)」
「へぇ」
良いことずくめかぁ。
うん。
僕は早速、北海道の原生林を開拓して広大な太陽光発電施設を作らせた。
一部の人たちが国会議事堂の前で何か騒いでいたけどどうやら「他人のすることなら何でも文句をつけてくる困ったちゃんたち」らしい。
そういう人たちがいるのって何だか残念だね。
どうして僕がいろいろと正しいことをしているのに反対するんだろう?
父もこんな人たちに悩まされてきたのかな。
まあ、きっと僕が頑張っていればそのうちわかってくれるよね。
マスコミが某国で少数民族を虐待しているって報道していた。
某国は「そんなことしていない」って言ってる。
そうだよね。
人類皆兄弟なんだから虐待なんかしないよね。
僕はその報道を信じないことにした。
あ、でもその報道をしたマスコミは出入り禁止ね。
きっと酷い人たちなんだろうし。
別の日。
米が不足しているらしいって報告を受けた。
ないなら他所から出せばいいのに。
だから僕は国の備蓄米を放出することにした。
なければあるところから出せば良い。
そしたら某国に友人が沢山いるあの役員さんが来て褒めてくれた。
「大臣、素晴らしいです! これで国民も安心してご飯を食べられますね」
うん。
僕って素晴らしいよね。
「こんな大臣がいるこの国はラッキーですね。大臣万歳!」
「えへへ」
うんうん、本当にこの国はラッキーだよね。
だって、こんなに優秀でこの国のことを想ってる僕がいるんだもん。
先日、僕の所属する政党の総裁選挙があった。
僕も出馬したけど負けちゃった。
でも、僕は諦めないぞ。
いつか必ず父を越えるような最高の政治家になってみせる。
そしたら絶対にこの国はもっともっと良くなるはず。
だって僕は立派で素晴らしくて誰よりもこの国を想っているんだもん。
こんな僕が政治家をしているこの国ってすっごいラッキーだよね。
さーて、今度は何をしようかな!
(そして、ニヤリとほくそ笑むあの役員さん)
おしまい。




