イチョウ並木の下で
秋ッという事でイチョウ並木を
秋の陽光が、イチョウの葉を優しく染め上げる。
学校の裏手、この並木道は、私の心の秘密の庭。
黄金の葉が風に舞い、足元に柔らかな絨毯を織りなすたび、胸の奥が甘く疼く。
綾――それが私。高校二年生の、ただの少女。でもここでは、風に溶け込むように、私の想いが息づく。
今日も、放課後のこの道を、独り佇む。心に抱くのは、彼女の影。美優。私の世界を照らす、唯一の光。
「綾……待って。」
その声は、葉ずれの調べのように優しく響く。
振り返ると、美優がそこにいた。
黒髪が秋風に揺れ、瞳は黄金の葉より輝く。
女子サッカー部のエース。
だんし顔負けのテクニックを持っているらしい。
らしいと言ったのは私はサッカーが詳しくないだけで、
たまに教室の窓から見るとすごいなぁっていう感想しかなかった。
そんないつもみんなを魅了する彼女なのに、私の視線だけを、そっと捕らえて離さない。
制服のスカートが風に翻り、まるでイチョウの花弁のように儚く美しい。
彼女の存在が、この並木道を、夢の宮殿のレッドカーペットではなく、金色の絨毯になった気がした。
「美優……どうして、ここに?」
私の声は、葉のささやきのように震える。
心臓が、黄金の雨に打たれる鼓動を刻む。
幼馴染みの彼女。
でも、最近のこの想いは、静かな湖に落ちる一滴の雫のように、波紋を広げて止まらない。
女の子同士なのに、彼女を見ると切なく胸を締め付けられる思いだった。
彼女は微笑み、私の隣に寄り添う。
肩が触れ、温もりが伝わる。イチョウの葉が、私たちの間に舞い落ち、黄金のヴェールのように包む。
「いつも、一人でこの道を歩く綾を見て……心が、疼くの。君の寂しげな横顔が、忘れられなくて。一緒に、歩きたい。」
美優の指が、私の手にそっと触れる。電流のような、甘い痺れ。
もうドキッって心臓が鳴った感じがする
うん本当に、漫画みたいな感じが起きるなんて夢にも思わなかった。
彼女の香りが、秋風に混じる。
彼女の花蜜のような甘さと、汗の秘めた情熱が、私の鼻腔をくすぐりめまいがしてきた。
やばい、私に酸素下さいってに注文してるんだろ。
冷静に冷静に。
「私なんか……美優の隣じゃ、釣り合わないよ。」
私は目を伏せ、足元の葉を踏む。
私は突い本音を言ってしまって後悔をした。
たぶん彼女は、深い意味なんてないはずなのに、これでは私が、深い意味があるように言ってしまった。
美優は足を止め、私の頰に手を添える。温かな掌が、涙の予感を拭う。
「釣り合わない言ってそんなことないよ。綾は、このイチョウの葉のように、優しく輝いてるし、綺麗じゃん。君の静かな微笑みとか細い指先等すべてが愛おしいのに。」
彼女の声は、風の囁きより低く、熱く。瞳に映る私の姿が、赤く染まっている。
私の心の扉がゆっくり開いていた。
「愛おしい……?」
息が詰まる。
私は、勇気を黄金の葉に託すように、彼女の胸に身を寄せる。
並木道のベンチに腰を下ろし、私は、自分の手を絡め合う。
美優は、今なんて言ったの?
「ずっと、綾を想ってた。サッカーのフィールドで走る私より、君の瞳に映る世界が、ずっと美しい。君の唇に、触れたくて……夢中で。」
言葉が溶けるように、唇が重なる。
柔らかく、蜜のように甘い。
イチョウの香りが、二人を包むヴェールとなり、時を止める。
キスは、葉の調べに溶け、深く、激しく。彼女の舌が、私の秘密を探るように絡み、胸の奥が溶け出す。
黄金の雨が降り注ぎ、私たちの髪を濡らす。
体温が混じり合い、恋の炎が静かに燃え上がる。
ようやく唇を離すと、美優の瞳に、星のような涙。
「綾、私のすべてを、君に捧げたい。この並木道のように、永遠に、君だけを愛する。」
私は頷き、彼女に抱き着きながら首に腕を回す。
風が歌うようにイチョウの葉が舞いながら、私たちは再び唇を重ねる。
甘い吐息が、秋空に溶ける。
並木道を、手を繋いで歩く。
イチョウの黄金が、私たちの恋を祝福するように輝く。
高校の門が見える頃、美優が囁く。
「これが、私たちの始まり。ずっとこの道を歩いていこう」
「うん」
私は微笑み、彼女の肩にもたれかかった。
胸に満ちるのは、幸せで何事にも代えられない気持ちだった。
このイチョウ並木の下で、私の恋は、黄金の永遠を約束された。




