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3.因縁の刃と蘇る記憶

プロローグ:月下の再会

 漆黒の道服が闇に溶け込む。男の妖刀が鈍く唸り、刀身から滴る血が月光に赤黒く輝く。頬の蛇の刺青が不気味に蠢く。「十年ぶりだな、蘇璃……あの夜の刺し傷、まだ疼くぜ」


 蘇璃の指先が剣柄を軋ませた。初めて見る彼女の動揺。「不可能だ……私は貴方の心臓を貫いた。屍すら残らなかったはず」


「仙門の偽りの教えでは、死を超えられんさ」男が舌なめずりする。妖刀を振りかざし、地面に瘴気の渦を描く。「だが今は『天魔噬霊体』が欲しい。あの少年を渡せば、お前の家族の仇も帳消しにしてやる」


「……馬鹿を言うな!」蘇璃の剣が閃いた。

——————————————————

戦闘:冷血剣姫の過去

 第一幕:剣戟の舞

 妖刀が八つ裂きの軌跡を描く。蘇璃の「氷魄剣」がそれを迎え撃ち、氷華と瘴気が空中で炸裂する。私の頬を鋭い破片が掠め、血の味が広がった。


「お前の剣、鈍っているぞ」男が嗤う。「家族を殺した罪の重さに押し潰されたか? あの夜、お前が俺を刺した時と同じ脆さだ」


 蘇璃の睫毛が微かに震える。その隙に妖刀が迫り、彼女の左肩を斬り裂く。血の飛沫が月を染める。


 第二幕:噬霊体の覚醒

「無涯、今だ!」陸の叫び。左手の痣が灼熱に疼き、黒い鎖が妖刀の瘴気に喰らいついた。まるで血管が逆流するような感覚。男が驚愕する。


「まさか……天魔噬霊体がここに!? だが不完全だな」妖刀が突然光を増し、鎖を振りほどこうとする。「この程度なら──」


 第三幕:共闘の軌跡

「蘇璃さん、今です!」私が叫ぶ。鎖で妖刀を拘束する隙に、蘇璃の剣が雷鳴の如く突き出る。十年前の夜と重なる軌跡──だが今回は、氷の刃が男の右腕を斬り落とした。


「ぐああっ! この……小娘が!」男が虚空に身を翻す。「だが『劫』が完成すれば、お前たちも終わりだ。楽しみにしていろ」


 黒い霧が渦巻き、男の姿が消える。蘇璃の剣先に、斬り落とした腕が転がる。その掌には、私の痣と同じ「劫」の文字が刻まれていた。

——————————————————

深淵:蘇璃の真実

 戦闘後、蘇璃が岩壁に凭れる。初めて剣を置いた姿に、どこか人間らしい脆さが滲む。


「……あの男は元・青雲門筆頭弟子だった」彼女が静かに語り始める。「私の師であり、家族を虐殺した張本人だ」


 陸が丹薬を調合しながら耳を傾ける。私は瘴気の残滓に震える手を握りしめた。


「なぜ教える?」私が問う。


 蘇璃が左手首の痣を睨む。「お前の鎖が彼の瘴気を消した。仙門の禁術すら及ばぬ純度だ。もしこの力が本物なら……」

 言葉を濁し、懐から古びた鈴を取り出す。「母の形見だ。あの夜、彼がわざと残していった」


 鈴には「劫」の文字。私の痣と一致する。

——————————————————

禁術の代償

 陸が突然咳き込み、血を吐く。道服の襟がはだけ、鎖骨にまで広がる黒い紋様が露わになる。


「これは……!?」蘇璃が駆け寄る。


「『九劫鎖』さ」陸は虚ろに笑う。「禁術を使うたびに体を蝕む。あと三回……か」


 私が拳を握る。「なぜ教えてくれなかった!」


「面白いからさ」陸が丹薬瓶を傾ける。「それに、お前の『劫』と俺の『鎖』は繋がっている。接引使の筋書き通りだ」


 月明かりが陸の首筋を照らす。そこには、妖刀の男と同じ蛇の刺青が浮かんでいた。


——————————————————

断章:闇夜の密約

(視点切り替え)

 漆黒の森の奥で、男が瘴気で再生した右腕を握りしめる。「くそ……天魔噬霊体の成長は予想以上か」


 背後から声が響く。「報告通りだな」

 影から現れたのは、白髪の青雲門長老──入門試験を宣告した人物だ。


「あの少年を『劫』が完成するまで生かしておけ」長老が冷笑する。「門主の計画通りだ」


 男が妖刀を鳴らす。「だが蘇璃が邪魔だ。あいつは十年前と同じく──」


「気にするな」長老が瘴気の玉を渡す。「次の『劫』は地下聖域で刻まれる。お前の役目はそちらだ」

——————————————————

エピローグ:刻まれゆく運命

 夜明けの光が左手の痣を照らす。単なる模様から、くっきりとした「劫」の文字へ変化していた。


 陸が指でなぞり、ため息をつく。「第一劫が刻まれた……接引使の予言が動き出したな」


 遠くで雷鳴が轟く。雲間から巨大な門の影が覗いた。それは、私が転生の際に見た「仙界の門」に酷似している。


 蘇璃が剣を手入れしながら呟く。「明日から地下聖域の探索だ。門主の秘密が眠っている」


 陸の首筋の蛇の刺青が、不気味に光った。

「突入! 青雲門地下聖域! 蘇璃の鈴に隠された第二の『劫』! 陸明軒を蝕む九劫鎖の真実! そして仙界の門が示す衝撃の未来!」

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