社会制度の変革
クリフは、今年で16歳になるらしい。
病気?呪い?が治ったおかげか、身体は16歳の身体として、十分に成長していた。
十全に動ける様になったところで、裏路地問題を解決すべく手を打っていた、配給、学校制度に関して、より洗練された制度と機関の確立をしたいと思っていた。
富めるものは、這い上がってくるものに試練を与えるに違いない。ならば。
「まず、この地域として、大きな投資を募ろう。公共事業を興すという形で」
資産を持つ者の懐を軽くしたい。
資産を多く持つものは、基本的に長期的な投資に前向きなものが多い。それに、同じ富める側が不利になることをするとは考えづらい。
「公共事業を興すぞ。融資を募り、大々的に今後起きうる問題を片付けるのだ」
既に身体は直っているというのに、未だベッドでの生活を続けるクリフは、ベッドの縁にもたれかかる。
「公共事業ですか?」
ケインは、先の学校の事業で、思うことがあったのか、話を聞いてくれるようになった。
「ああ、何か、問題になりそうな災害はないか?」
ケインは、ふむと一つ頷く。
「・・・やはり、病と水でしょうか、どちらも問題になりうる状態です」
「病は分かるが、水というのは?」
非常に脆い情報筋では、疫病と飢饉が問題になっていたが、病と水が挙げられたことに、少々驚く。
「近年、人口が増え、大量の排泄物が出ております。それらは、川に流すことで処理しております」
何でも、水圧で一切を垂れ流すという、いかにもなやり方をしているようで。
下流の地方の民からは、少しづつ苦情が出ているとか。
「では、水の処理から行おう。まず、研究者を集め、ゴミ処理と水を清浄化する方法を探し出すのだ。後々、商品化する技術として広く広告を出し、出資者に対する特許による請求を行わないことを条項に入れてくれ」
ケインは、手元の手帳に、言葉をメモしていく。
「技術でんでんは、一切を託す。しかし、つどレポートを作成し、提出させるのだ」
ケインは頷く。
「次に病に関してだが、医療の心得を持つ人間は居るのか?」
「魔法による魔法的施術と、体外より治癒を促す、体外的施術があります。一般的には魔法的施術が最も良いとされています。当家は、魔法による施術は弱いですな」
「分かった。では、魔法的施術の研究、体外的施術の研究、どちらも大々的に行う。どちらも出資を求めるのだ」
「承知いたしました」
ケインは、お辞儀をし、早々に部屋を出て行った。
「ケイン、どこに行った・・・」
突然出て行ったケインに対して、疑問を持ったまま、明日聞けばいいと思っていた。
しかし、ケインは数か月間クリフの元を訪れることはなかった。
今回の考案は、富めるものの力を奪い、這い上がる者に隙、チャンスを与える。
これを、今回如何に成功させるかで、今後この領地が発展できるかがかかっている。
一方で、競争力を高めすぎ、逆に格差ができてもよろしくない。
この制度は10年ほどで終了し、学校の有料化及び、資金返還を各出資者に行う方向で行った方がいいだろう。
しかし、ケインがいない以上、動き出すことはできない。
心にもどかしさを抱きつつ、今日も眠りにつく。
ケインが訪れたのは、あれから4ヶ月後のことだった。
何でも、話をしてすぐ行動していたらしく、大々的な動きをしていたそうだ。
今回は、執事長の権限をギリギリまで使ったらしい。
出資者に関しては、半年で集まった。
領内のあらゆる富める者に声をかけ、或いは前金を出し、殆どの上流と呼ばれる人間を融資に協力させることに成功した。
この事業は、研究開発から建設発行まで、10年はかかる見込みだ。
10年間、ひたすら彼らの懐を軽くする事を目的とされた大事業である。
無論、貴族たるこの家も危険にさらされるわけでして。
「商売を活発化させなければならない。今、家はどういった商売をしている?」
「北の物を南で、南のものを北で、海の物を山で、山の物を海で、それぞれ売買を行っております」
「生活用品を作ろう。まず、材料費を最も抑えられる方法を考えるのだ。特に木材、鉱物だ。何処か格安な場所はないか?」
「いくつかあります。まず、東のドルツ村、ここは鉱物資源が豊富です。しかし、険しい山々に囲まれている為、輸送経路の確保が困難でして、北にホルツ村と言う、森林の中を開拓中の村があります。こちらも、輸送経路が困難です」
「いよし、まずドルツ村だが、鉱山労働者と共に、技術者を大量に送り込むのだ。そこで加工を行い、加工品を商売品にするのだ。この村は、クリフ名義で一切を管理所有することで、可能になる、はずだ。だって貴族だもん」
「承知いたしました。北のホルツ村はいかがなさいますか?」
「こっちも同じだ。あ、いや、人は居るのか?」
「当家は人材が余っていて、持て余している状態ですので、いくらでも。開拓中の村であれば、後に村長として活躍できるとの野心も焚き付けられます。今が丁度よい頃合いかと」
「よし、すぐやろう。もうお金がない。両親が年度末に帳簿を見る前に、利益を上げるのだ。後1年、正念場だぞ」
両親は、どうせ明細は見ない。
というのも、この家は非常に古い貴族らしく、黙っていても人材は集まり、おまけにお金もある。
独自の交易で潰れる心配もなく、制度も整っている。
体制も安定していて、傀儡になることもない。
まさに、生きる大貴族なのだ。
それ故、今回の事業への契約もすんなり集まった。
競争をより一層激化するこれらの制度は、今後数年のうちに、クリフの領地に能力的人材の最高峰と謳われる数々の機関を作り出した。




