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異世界無双、始まる

クリフが転生して1月あまり、予想外の速さで、中心都市の各区無料教育機関、学校が建てられた。


配給も、ケインに伝えた翌月から行われた。


どれも、ケインのポケットマネーだ。


代々仕えているケインの家は、貴族と遜色ない財力を持っている。


「・・・クリフ様、失敗など、誰にでもあります」


ここ数週間、クリフは考えていた。


なぜ、学校に興味が向かないのか、なぜ犯罪率が上がったのか。


配給を始めて十日足らずで犯罪が多発した。


おかげで、治安安定にかかる費用負担が出始めている。


夜間警備の人員が増え、食料や施設利用に伴う人件費が増したからだ。


「ケイン、なぜこうなったのだ」


「・・・私には、さっぱりです。ノブレスオブリージュに則り、富めるものから貧しいものへ施しを与えたというのに、どうしてこうなるのやら」


クリフは、そこでケインを見る。


「ノブレス・・・オブリージュ、なんだそれは」


貴族、特権的階級の者は、持つ者として、持たざる者へチャンスを与える。


それは、違う。


既に、社会人として社会の理不尽や嫌なことを経験した自分にとっても、それは受け入れがたいものだ。


なるほど、反感を買うわけだ。


恐らく、本当に場所を作っただけなのだろう。


布告を行った後は、一切の管理を土地の人間に任せていたに違いない。


「なるほど、自分は無責任な人間になっていたようだ」


少なくとも、自分がやったことの傲慢さは理解した。


「ケイン、その施設を徹底的に管理するのだ。この施設はケインの物であり、お昼のみ開放している物だと。そして、配給は厳重に管理し、必ず一人3回までだ。これを徹底させてくれ。できるか?」


「・・・クリフ様、正直に申し上げれば、もうよろしいのではありませんか?不安、と言ったものでしたら、当家の別荘に移り、安静にしていれば、いずれ治りましょう。いかがですか?」


そもそも、消極的な貴族側のケインだ。


チャンスは1回のみだったのだろう。


「ケイン、分かった。今回うまくいかなければ、そうしよう」


表面では穏やかさを装いつつ、焦りが胸中に渡来する。


クリフの顔を見たケインは、一息吐くと頷く。


「承知いたしました。仰っていた通りにいたします」


これ以降、無法地帯となっていた学校という施設は、柵が建てられ、警備による時間厳守の場所となった。


配給も、券を発券し、1日に3食のみ、食事をする場所も、配給が行われる場所のみ、という厳重な物になっている。


その効果は、半年で現れた。


転生して1年が経とうとしているクリフは、順調に体調回復に向かい、衣食住も満ち足りていた。


異世界の地とは思えない程、便利な暮らしに満ちていた。


「・・・クリフ様、1年ほど前に始めた、公共事業ですが、この一年だけでも、よい効果が出ているかと存じます」


「どの様な状況だ?」


最近では、クリフに任せていた学校と配給は、以前問題になった点を乗り越え、あっても差し支えない社会になりつつある。


「この1年では、若い世代の流れでは、学校という施設は日常の一つになりつつあります。特に10代20代の男性に人気かと。逆に、女性には不人気です。今後は、若い世代全体に浸透させることが課題になりそうです」


男女で浸透率が違えば、いずれ差ができてしまう。


学校という施設は、男性の若者にとっては、遊戯の場になりつつある。


しかし、女性にとっては、なかなか、馴染みづらい場所になっている。


「女性か、原因は分かっているのか?」


ケインは、眉根をひそめ、推測を言う。


「恐らく、将来に必要かどうか、と言った点が問題かと思います。女性は、学をつけても今のところ出世の見込みはありませんから、これが原因でしょう」


「確かに、それに、用途として勉学の機会だけでは魅力は感じないということだろう」


ケインは、顎に手をあて、頷きつつ(なるほど・・・)と唸っている。


「現役の女子高生は、どんなことを言っていたか・・・」


前世の、それも高校時代の記憶を掘り出す為、しばし沈黙していたとき、名前も顔も、性別さえも思い出せないが、誰かが、こんな事を言っていた。


『学校?青春!、ていうか友情と恋愛がメインでしょ?友達がいなかったら学校なんて行かないって』


どこの誰で、男か女かも分からないが、ともかく、そういう事なのだろう。


昨今、現代の教育現場で恋愛や友情云々の出来事が起こるのは何故か。


大々的に婚活を行うと良い顔をされないのと同じ理由と考えるならば、学校に行っている、というある程度の信用と安心感ではなかろうか?


後は、男女に心理的に学校での恋愛はドラマティックでロマンがあり、素晴らしいものだと感じるからなのではなかろうか?


しかし、昔の日本も男女を別の学校にして管理していたと言う。


一体いつから男女で学校に通い始めたのだろうか?


そしてふと思い出す。


「なるほど、差別か」


「差別でございますか?しかし、女性が学があっても、意味がないかと」


「なるほど、確かに」


今の体制で、要職に女性を付けるのは、危険で危ない。


だって、寿退社とか、出産退社とか、普通にある世界だ。


現代の様に、効率化と余裕があれば、育休制度や出産休制度があってもいいかもしれない。


しかし、この世界は専制君主で戦争ありきの物騒な世界だ。


隣の国では、今頃何万の兵が死んでる、みたいな世界なのだ。


「出生率が下がっても困っちゃうんだけど」


かと言って、学のない人間を登用する場所は、ない。


「一旦、保留にしよう。門土は開け、女性一人一人の自由意志に任せよう」


「かしこまりました」


何はともあれ、一年前まで考えられていなかった、学をつけることでチャンスを与えること、そして、食事を取り、生きる機会を作ること、この2つが達成され、以前のような治安悪化は防げるのではないだろうか。


ここから、俺の異世界無双が始まる!(始まらなかった)

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