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安心安全の異世界生活?

転生した異世界は、ゲームに登場した場所である。


それも、拠点となった場所で、設けた屋敷そのものに見えた。


ただ違うのは、時代が未来に行っていることだろう。


ゲームのプレイヤーとしてエンディングを見たとき、キャラクターは商人として大成し、孤独な一生を終え、普通のエンディングを迎えたはずだ。


ヒロインと一緒になるわけでもなければ、結婚もなく、貴族にもなれず、物言う大商人となって終わっていた。


では、今の状態は一体どうしたことだろうか?


現状が分からない以上、情報収集と現状理解を急がなくてはならない。


何より、記憶がない状態では、何もできない。しかし、ここでネガティブスパイラルに入るわけにはいかない。


折角のチャンス、今世は最大限挑戦しなければ、後悔してしまうに違いない。


と言うことで、まず外に出てみたいのだが、クリフという人物は、これまで外出をしたことがない。


全ては、魔法による呪詛だった。


現代日本では、思い込みによる体調不良と絶望感を抱かせる、まさに身体を蝕むものだが、異世界では事情が違う。


「クリフ様は、呪詛により身体の過度な動きが禁じられていたのです」


精神的影響はなく、単純に呪われる。


呪いは身体に纏わりつき、本人の何かしらを制限し、本人が呪いにより制限された事を行うと、身体が異常をきたし、病に倒れる。


その正体は、魔法があるならではの世界にあってこそ通じるもので、身体の内在魔力の使用傾向の制限である。


既に解かれた呪いだが、その代償はクリフという少年の記憶だったようだ。


「今は何もかもが分からないことかと思います。我々一同が身命を賭してお支えいたしますので、どうかご心配なくお過ごしください」


クリフは、転生という事態に浮ついてるため、現状がどの様な状態なのか興味を向けることができなかった。


生まれ直し、新しく得た時間と若さ、生前にはなかった裕福さに酔いしれていた。


「ありがとうございます。以前の事は何も覚えていませんが、どうかよろしく頼む」


うっかり、営業言葉が出てしまった。


どんなに考えようとも、悩もうとも思い出せないことをどうこうしようというのは、できないことだ。


ならば、これからの人生は、クリフにとっても最良といえる人生にするべきだろう。そのためには、良好な関係作りから始めるべきだ。


「クリフ様・・・我々も全力でお支え致します」


ケインの頼もしい言葉に頷きつつ、内心は不安が募っていく。


ここは、現状への深い理解が必要だと考え、二人に外出を提案する。


それに、家族の信頼は必須である。


どんなに良いとこの坊ちゃんでも、家族で不和は良くない。


ここは、家族に家族と思ってもらえるような、そこまでできなくとも尊敬される、外に出して誇らしい人間になるべきだろう。


それには、実績が必要だ。


「早々で申し訳ない。少し外を見るか」


窓の外を眺める。


外からは光が降り注ぎ、眩しいぐらいの陽光が窓から部屋に入る。


「クリフ様?」


ケインは眉根を下げ、心配な様相をする。


クリフにとって、外に行き、現状を少しでも理解することが不安解消のつながる。そう信じての提案である。


「クリフ様・・・分かりました。私がお供いたします。外出してみましょう」


「閣下への許可は、私が取りましょう」


コルトがそう言うと、ケインはコルトを見て頷く。


「ケイン様、気分が優れないなど、ささいなことでも仰ってください」


「ああ、ありがとう」


結局、両親の許可は取ることができ、早々に異世界をこの目で見る機会を得た。


新天地どころか、現代の価値、感覚が全く通じない世界である。


文化も違えば、技術も違う。


「クリフ様、ご用意が出来ました」


クリフは、スーツという、現代と全く同じ格好をすることになった。


違うところと言えば、一張羅の様な動きやすさを持ち、私服以上に動ける様に感じる。


しかし、見た目はスウェットやジーンズといった、足や身体のラインを見えるようにはなっていない。


「これがオーダースーツ、良すぎでしょ」


「クリフ様?」


「何でもない」


手を振り、煙に巻く。


木製とは思えない程重厚で、巧みなデザインを施された大きな扉の向こうには、馬車が待っていた。


扉の前で待つケインが腰をまげ、クリフを導いていた。


しかし、2人は既に高齢、20代で腰を痛めていたクリフには、その姿が尊く映った。


「行こうか」


「はっ」


いざ、異世界へ。

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