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非常時最強備蓄野菜選手権!

 以前、仲間内で「最強野菜はオレだ!」選手権というネタディベートで盛り上がったことがある。


 まあ「最強肉は牛か豚か鶏か」であるとか、「魚肉界王者決定戦」みたいに誰しも一度は熱い議論を戦わせた経験があるであろう定番ネタだね。


 その時の最強野菜にエントリーされたのが

①もやし:コスパ最強 食味も栄養価も申し分無しの実力派足軽大将

②キャベツ:言わずと知れた定食界の影の帝王 キャベツ無しに定食は語れない

③白菜:鍋に漬物 和食を支える冬将軍

④レタス:密かにキャベツ追い落としを企む策士 汁物にしても美味し

⑤なす:天ぷら・マーボ・焼き・揚げ・煮びたし……得意技多数の唯我独尊戦士

⑥トマト:旨味と酸味と 両刀使いの欧州覇王

⑦昆布:出汁にツマミに佃煮にといくつもの顔を持つ怪盗紳士

などなど有ったのですが、最終的に勝ち残ったのが

『大根とタマネギ』

の両雄だったわけですね。


 この両雄が、多用途性と保存性の両方を加味すると、他を圧倒していると考えられたわけです。

 つまり料理法が多い上に、停電などの不測の事態が起きても常温保存できる期間が長いということです。


「それに、だ。大根の場合は大根葉だけでも立派に緑黄色野菜よ。根っこはオロシと千六本、おでんネタに使い、葉っぱは炒め物とか和え物・漬物。加えて未成熟なまみ菜は、年がら年中収穫できる。これを最強と言わずして、だな」


「それを言うならタマネギだって、芽が充分に伸びるまで待てば、長ネギの代用として鋤焼き・鍋物に活用できようが。しかも大根最大の弱点である揚げ物ネタとして強い。天ぷら・フライ・掻き揚げとしても抜群であるぞ。さらに言えば、飴色タマネギ無くしてカレーもシチューも存在せず」


 侃々諤々。最後は両雄が最も信頼する助っ人を呼び、『おでん&熱燗 VS 串カツ&ビール』のタッグマッチになりましたが、四者がっぷり四つのまま結論つかずで終了した記憶があります。


 馬鹿で~す。



 それでまあ台風が迫る中「小人閑居して不善を為す」とでも申しましょうか、台風が迫る時には最低でも三日分の食料備蓄をと力説するニュースを注視しつつ

「レトルトやカップ麺が無くても、芋があったらなんとかなるなぁ」

などと言うようなことをボンヤリと考えておったわけですよ。


 そして「最強野菜はオレだ選手権のときには、エントリー外だったなぁ」とも。


 いえね、台風10号は突風被害も出ているし、大雨の被害は中心部から遠く離れた東日本にまで広く及んでいるのは、自分のようなボンヤリ馬鹿にも分かっております。


 けれど伊勢湾台風みたいな死者・行方不明5,000人以上のカタストロフィにならずにすんだのは

〇台風の目の部分が九州山地の西にありながら、利き腕の大枝とも呼ぶべき部分が「九州の屋根」の東側と、勢力が分断・二分された。

〇台風の目の部分が、エネルギー補給の源泉である黒潮および対馬暖流の上から逸れ、罠に誘い込まれるように八代海経由有明海という浅くエネルギーの低い水域へと進んでしまった。動きが遅い事と相まって、さながら落とし穴に嵌った猪状態で順次勢力を削られ衰弱していった。

などと幸運――幸運という言い方が不適切・不謹慎であるならば不幸中の幸い――が重なった結果としてであって、伊勢湾台風や室戸台風(死者・行方不明3,000人以上)みたいな被害が出る可能性はあったのだ、という事も。


 しかしながら人間、24時間365日を緊張したまま過ごすことは出来ません。

 ことに自分のような精神力の惰弱な者には。


 そこで線状降水帯や吹き戻しの風に怯えつつ、ひとり非常時最強備蓄野菜選手権で怖さを紛らわせるかな、などと思い付いたわけであります。



 するとサツマイモやジャガイモは、茹でる・焼く・揚げるなどすれば、米や麺が無くても十分に一食分のメニューとして成立するわけですよ。

 石焼芋であるとかジャガバターとか。

 ふかした芋に、塩辛(イカ・カツオの腸・ウニ)や佃煮(海苔・ちりめん山椒)を乗っけて食べるのは、こたえられませんからね。単に味噌やもろみ醤油をなすっただけもウマい!


 ダンボール箱に芋をゴロゴロさせておけば、冷蔵庫がアウトになった状況でも腐敗を怖れる必要がない。

 順次必要な分だけを茹でるなり焼くなりして食せばよいわけです。いやもう立派な非常食!



 しかしまあ世の中には、ヒトの意見には必ずナニガシかの粗探しをしなければ気が済まない、という奇特な御仁がいらっしゃるわけで、そういう御方の手に掛かれば

「しかしイモを蓄えておったとしても、煮炊きする火力を持たねば宝の持ち腐れ。貴殿の思い付きは所詮、絵に描いた餅」

とか言われてしまいそう。


 そんなんコメやスパゲティを備蓄しとっても一緒やあらしまへんか? カセットコンロか固形燃料なり、あるいは薪炭で煮炊きしたら良うございますやろ――などと、ぽーんと言い返してしまえばいいんでしょうが、「ジブン、不器用なだけでなく小心者ですから」なワタクシと致しましては

『芋は生でも食えるんですよ』

と別の理屈も付け加えておきたいわけですよ。


 実際ヤマイモ・ナガイモの類でありますと、生食しますよね? 短冊に切って酢醤油でお浸しにするとか、すりおろしてトロロで食べる。

(加熱しても当然食えます。茹でたりふかしたりすればホクホクで美味い)

 けれどヤマイモ系は値段が高いからねぇ。気軽に「箱一杯、貨っとけや」と決断するにはビビッてしまうんだ、これが。


 と、いうことで「サツマイモ・ジャガイモが生で食えるかどうかを検討」してみましょう。


 結論から先に言えば「当然、生でも食えますよ」だ!



 ま、わざわざビックリマーク(エクスクラメーションマーク 感嘆符)で強調しなくとも、生でも食べることが出来るのは皆さま既に御存知のところ。


 サラダの一要素として、レシピなんかにはよく取り上げられてありますからね。

 うん。シャキシャキして美味しいんだよ。

 だから拙なんぞがくだくだしく書くよりも、「サツマイモ 生食」や「ジャガイモ 生食」あたりのキーワードで検索かけてもらった方が早いっす。


 注意点としては――検索先に書いてあるだろうから――うだうだ蛇足したくはないのだけれど

「一度にたくさん生食すると、お腹を下すよ。一日に一個程度に止めておくべき」

が、ある。


 そうなってしまう理由としては、芋のカロリーの源となるデンプンは、生では消化吸収しにくいから。

 つまり人間は、アミラーゼというデンプン分解酵素を使って、デンプンを麦芽糖→ブドウ糖へと分解して腸から吸収するのだけれど、生のデンプンだとこの分解酵素が力を発揮できないから。

 アミロース+アミロペクチンの強固な構造が、アミラーゼの破壊工作を阻むわけだね。熱して糊化デンプンにしてしまったら頑強な結合が脆くも崩れ去るんで、口で噛んでいるだけで麦芽糖に分解していくにも関わらず。


 だから生の芋をガチ食いすると、お腹が緩くなるというわけだ。

 加熱できる状況下では、デンプンを糊化デンプンにまで化学変化させてから食べましょうぞ。



 そういえば、鶏卵も保存がきく食べ物なんですよ。

 卵白にリゾチームという、細菌の細胞壁成分ペプチドグリカンを分解する酵素が含まれていて、細菌が繁殖しにくいためだ。


 だから冷蔵庫が動かなくなっても、慌てて食べてしまう必要はないんですな。


 ただし常温保存した鶏卵には、特に卵殻にサルモネラ菌が繁殖する可能性があるので、ガッツリ加熱してから食べましょう。

 購入して2週間、採卵してからなら1ヶ月間くらいは全然ヘーキということらしいですが、詳しい事は専門のサイト情報を当たってみてくれぃ。



 すると、芋と卵が冷蔵庫に入っていたら、別に大慌てして台風接近前に食料の買い出しに狂奔しなくともダイジョウブ臭いですな。

 タマネギやニンジンなんかも入ってそうですしね。


 むしろ台風と関係の無いときに、カセットコンロとか固形燃料とか焚火台を購入しておくのが賢い感じですね。


 余談になりますが『大震災名言録』(藤尾潔 1997年光文社)には、阪神淡路大震災の後、焚き物に困った人のために倒壊した小屋や家を次々にチェーンソーで切り刻み、ジェイソンと仇名されて感謝された人の逸話が載ってました。


 チェーンソーまで購入する必要は無いでしょうが、ノコギリと鉈くらいは持っておいて損はないのかも。

 キャンプとかする人ならば、既に持っておられることとは思いますが。



結論)非常時最強備蓄野菜は人それぞれ。

特に食料備蓄に慌てる必要はない。


 むしろ必要なのは食材を煮炊きできる装備と燃料ではないか。


                        以上であります!

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