私はスギを一生許さないけれど
2作目です。父から「春」というテーマをもらい、色々連想していった結果この作品ができました。ぜひ読んでください!
生まれて初めてスギを呪った。私はスギ花粉のせいでティッシュとマスクが手放せなくなったのだ。一生許さない。
しかし、これは逆にいいことなのかもしれない……。世間がコロナが収まりつつあり、マスクを外していく中、私の醜い顔を見せたくないから身につけたままという状態は、正直辛かった。友達に「マスク外さないの?」と聞かれても、堂々と理由を答えられるのだ。今まで、素直に「自分の顔が好きじゃないから」と答えて、それでどう返されても傷つく気がして何も言えなかった。そんな日々も今日で終わる。それは本当に素晴らしい。それはそれとしてスギは許さないけれど。目は痛いし、呼吸がうまくできないし。
……でも、このままでいいのだろうか? 今はまだ大丈夫かもしれないけれど、春が過ぎれば花粉症は治まって、また理由を探さないといけなくなる。それだけじゃない。その理由探しを乗り越えたとして、私はこのまま一生マスクをつけていいのだろうか? 外せないままでは、自分の顔へのコンプレックスを深めるだけではないのか? それで本当にいいのか? 私の顔は嫌いだけど、マスク越しに吸う空気はなんだか窮屈に感じてもっと嫌いだ。
……このまま春が過ぎたら、誰もいない場所でマスクを取ろう。外の空気を思い切り吸おう。それでもし、みんなに顔を見られてもいいと思ったら、街に出かけてみよう。その覚悟ができるまで、一生許さないスギにお世話になろうと思う。