8.同窓会とヒャッハー電撃隊
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北の騎士団 8話
第8話
同窓会とヒャッハー電撃隊
そのころエルマーは、北の騎士団の首都:ボルク要塞を目指していた。
彼は、『半年ぶりに同級生に会える』ということで、頭がいっぱいだ。
そして、ボルク要塞に到着すると、各チームに分かれて行動することになっていた。
エルマーは“ヒャッハー電撃隊”という昭和テイストな5人のチーム名だった。
そして、その電撃隊には、エルマーの同級生が含まれているのは当然で、騎士団の思惑が垣間見える。
しかし、2人は同級生でなく、西の島国からの女性が含まれており、メアリーとマーガレットと言う姉妹だったのだが、彼女が言うには、
「我が王国には、男爵以上の男子しか騎士になれないの。だから、この騎士団のイベントに参加して騎士の称号を得るのよ」
「なるほど」とエルマー達、王国貴族は頷いた。
「そう、皆さんご存知ですか? 異教の顔を!」
「異教徒の顔ですか?」
「なんでも、口は耳の下まで避けて、目はほとんど無いぐらい小さいらしいですよ」
「お姉さま、大きな口で頭から食べられたら、どうしましょう……」
「ご心配なく、私達がついておりますので、そんなことはさせません」と言ったのは、同級生の一人だった。
「そうですとも、殿下もおられます。殿下の剣の腕は、それはそれはッ」
「あまり揶揄うなよ。実戦は、これが初めてなんだ。皆、気を引き締めて行こう!」
とエルマーが言うと、他の貴族達も微笑みながら、頷いた。
「メアリーお姉さま、“ヒャッハー電撃隊”って、何ですの?」
「う~ん、きっと“ファイブレンジャー”の後番組よ」
「整列!」と若い騎士の声が聞こえた。
すると奥から、髭を生やした騎士が歩み寄ってきた。
北の騎士団のトップにあたるユン総長だ。
ユン総長は、兄のコンラート総長が病気で退官された後の総選挙で、満場一致という前代未聞の得票数で総長になった方だ。
「諸君、よく北の地に来られた。ここは戦場だ!」
若い貴族の子女は、鎧姿に髭のユン総長の一言で、酔ったかもしれない。
「我々、神の民は異教徒どもを成敗する必要がある。
何故なら、彼らの存在は神への冒涜である。教会の外に救い無く、いずれ地獄に落ちる者たちである。
なら、今すぐ、地獄に送ってやることが、愛なのである」
エルマーは「何のことやら」と思ったが、周りが歓声を上げているので、空気を読んで同じようにすることにした。
さて、総長の挨拶が終わり、各チームのブリーフィングルームへ移動することとなった。
しばらくして、騎士団の騎士が一人やってきた。
その騎士は大柄な体格だが、粗野でなく紳士的な男だ。
この1か月間は、彼が隊長となり、その下で戦闘を行うことになる。
そして、早速、明日の昼からの作戦の説明がなされた。
その作戦は、城壁の中に入り込んだ異教徒殲滅という内容だった。
城壁には弓兵がおり、容易に近づくことが出来ない。
各自、盾などを用意し、味方の援護の中、城壁にとりつく。
中に入れば、3人一組で戦闘となる。
と、言ったものだ。
翌日、エルマー達、“ヒャッハー電撃隊”は、包囲している城壁へ向かった。
***
「貴族のガキどもは出かけたか?」
「はい、総長!」
「そうか、包囲しもう1カ月以上経っている。敵も、相当疲れておろう。武器も食料もあと数日。そこを落とせんようでは、騎士とは言えんの」
「はい、ですが、死なれても困ります。貴族の子女ですから」
「そうだ。毎年来てくれて、カネを落としてもらわないとな」
「そのために、たやすく落とせる戦場を作り出しておりますから」
「だな」
***
エルマー達は、城壁の前に着いた。
ほかにも、“太陽部隊”なるチームも来ていた。また、反対側の城壁にも3チームきているようで、5チームで攻撃を仕掛けるようだ。
さあ、作戦の確認だ!
隊長の合図で、盾を持って突撃する。
弓兵の弓矢を避け、城壁まで走り切る。
全員無事なら、ドアを破り、中に入る。
敵と交戦し、進んでいく。
初戦闘の者が多いが、何とかなっていた。
城壁を突破し、市街地に入ろうと思った時、前を行く同級生が倒した敵兵が気になった。
『本当に、この異教徒は耳まで口が裂けているのだろうか?』
『本当に、目が無いのだろうか?』
他の隊員が市街地を見ている隙に、エルマーは鎧の隙間から異教徒の顔を見てしまった。
「これは……」
「他の部隊も城壁にとりついた。さあ、市街地に突入だ!」と隊長が言ったのに併せ、電撃隊は突撃していく。
さて、市街地は簡単に落とせ、ボルク要塞に電撃隊も戻ってきたのだ。
あの市街地に、あの城壁に、“口が裂けた” “目が無い”、いわゆる異教徒はいたのだろうか?
「オレは見なかった。誰もオレたちと変わらない兵士と市民だった」
すると、
「お姉さま、相手の異教徒、凄かったわ。口が大きく避けていたの。怖かったわ」
「俺も見たよ! 眼とか無くて怖かったよ」
「本当に怖かったよね」
『えっ? 皆、何を言っているんだ。そんな奴はいなかったぞ。オレは兜の中を覗いたんだ』
「殿下! 殿下も異教徒の顔を見ましたか?」
「あぁ」
「凄かったですよね」
「あぁ、そうだね」
皆、どうしてしまったんだ。それともオレがおかしいのか?
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