14. 首都攻防戦
おはようございます。
第14話
首都攻防戦
ヴァルトの戦いで敗走した貴族と団員はボルク要塞へ帰還していた。
また、この戦いに参加していなかった国境警備隊も無傷でボルク要塞に合流した。
エルマーはスピィ伯爵を見つけた。
ラウレンツは? ラウレンツも進軍していたはずでは?
「伯爵ッ!」
「殿下!」
エルマーは、『しまった』と思った。伯爵の浮かない顔は、何かあったのだろう。
しかし、ここで黙ってしまうのは、あまりにも不自然だ。
「伯爵、ラウレンツは?」
「ラウレンツは医務室に運ばれ、手当を受けております」
エルマーは一礼をして、医務室へ行った。
「ラ、ラウレンツ!」
「あ、殿下」
「お静かにお願いします」と衛生兵が言う。ラウレンツは重体だ。
身体には数本の矢が刺さったのだろう。包帯から出血の痕が見受けられる。
特に、左上腕は重体のようだ。
痛みが酷そうだ。痛みを麻痺させるため、麻を使うのだろうか?
治療の邪魔なので、一旦、医務室から出ることにした。
霊安室から、大きな泣き声が聞こえた。
なんと、マーガレットだ!
「お、お姉さまぁ。いや、いやぁ」
隣の男性は父親だろうか?
つい先日、皆で「騎士の称号を取ろう」と言っていたのに。
その頃の要塞は、明るく活気に溢れていたのに。
今では、怪我人で溢れている。
これは何なんだ!?
そして、自分は何をしているんだ。
すると、後ろから、
「エルマー殿下! 隊長がお呼びです」と、声をかけられた。
呼んだのは国境警備隊の隊長だった。
「エルマー殿下、お願いがございます。アキュリア陛下に援軍の要請を殿下からお願いしたいのです」
「派兵しないと公言していると思いますが」
「そこを何とかして欲しいのです」
「そんなに、危ない状況なのですか?」
一呼吸置いて、隊長と呼ばれる男は説明した。
「兵力の問題だけではないのです。総長の突然の斬首。
後任者など後の事は何も決めていません。混乱状況なのです。それを統括出来るお方に来ていただきたいのです。
となると、同民族の王侯貴族になります。
森の王国のアキュリア陛下か、南の帝国のジークント陛下しかおられません」
「なるほど、連絡はしてみますが、あまり期待しないで下さい」
「ありがとうございます」
そう言うと、執務室を出て、自分の部屋に戻った。
その際、霊安室を避けて通ったのは、無意識だったのだろうか?
数時間後、緊急警報の鐘がなった。
すぐそこまで、新生王国軍が迫っているという。
読んで頂き、ありがとうございます。
次回、最終回「終わりの始まり」
お楽しみに!