1.北の騎士団
「男の娘は、異世界でステキな王妃様になりました」のスピンオフ作品。
本編もよろしくね!
第1話
北の騎士団
大陸では、収穫の秋が終わり、各地で収穫祭が行われていた。
食料が確保できた国家とそうでない国家は、この冬、国政が異なる。
「おぉ、寒いのは嫌ですわ」
さて、しっかり食料が確保できた国家は、これからの時期は、食料と人材が豊富なわけだ。
あまった食料を他国に、売りさばくことも可能だし、余った人材でインフラ整備も可能だ。
農家も出稼ぎで一儲けすることを期待している。
しかし、食料が無く人手が余ると、略奪を考える国家も出てくる。
幸いにも我が王国は、不足なく収穫が出来たようだ。
さて、一つ間違えば、国家間の戦争にもなり兼ねない時期だが、貴族達のガス抜きを産業としている国家もある。
これが“北の騎士団国”だ。
正式名称は、“我が民族と聖母のための騎士修道会”というのだが、皆、“北の騎士団”と呼んでいる。
その領地国だ。
大陸には、三大騎士団というものがあって“神殿騎士団”“軍事病院騎士団”と並ぶ騎士団だ。
基本的には、修道士が武装し、病院や巡礼者などを異教徒や盗賊から守るのが、元々の立場なのだが、私から見れば、暴力団か海賊や山賊か武装商人にしか見えない。
では、海賊や山賊らと何が違うかと言うと、教会が公に修道騎士と認めているのだ。
「神によって認められた暴力」ということだ!
まあ、賛美歌を歌いながら殺害するというだけなのだが。
その三大騎士団のなかで、この“北の騎士団”は、我が王国にとって、南の帝国とは違った意味で厄介だ。
彼らの言う“我が民族”は、王国と同じ民族であり、また、騎士団の癖に国家を運営している。
無論、他の騎士団でも領地は持っているが、国家規模ではない。この領地と国家の違いは、貨幣や法律も定めることが出来るのが国家だ。
その騎士団の収入源の1つが、大陸の貴族を集め、戦争へのガス抜きをする“異教徒ハンティング”という商売がある。
血気にはやる貴族の若い子女に、戦争体験豊富な騎士団員が疑似戦争をさせるということだ。
しかも、獲物は異教徒であり、生身の人間である。
21世紀の世界なら、人権問題になりそうだが、この異世界では異教徒狩りは、なんと善行なのだから始末に悪い。
そして、収穫祭が終わったこの時期になると、若い子女がいる大陸中の貴族にダイレクトメールが北の騎士団から届く。
それは、『異教徒ハンティング、参加のお知らせ』が、各貴族に届くのだ。
そして、我が王国も、息子のエルマーが学園を卒業し、18歳なのだ。
つまり、彼らの商売として、良い相手となっていた。
そんなある日のこと!
ついに来てしまった。北の騎士団の紋章入りのダイレクトメールが、息子のエルマー宛に……
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