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優君とキャンプ!

#1


「ま、まぁ、取り合えずこんな何にも無い所に居てもしょうが無いから、移動する?」柚葉は嬉しそうな優太を見ながら尋ねた。


「そうよね。暗くなる前に人のいる所に行きたいよね」

「うん!」優太はお腹に『四次元ポッケ』を付けると嬉しそうに頷く。


「うーん、スマホは12時くらいだけど、こっちの時間とスマホの時間が合ってるかも怪しいしなぁ…」

「そうだよね…」


 柚葉はスマートフォンから視線を外し、空を見上げ、再度周囲を見渡した。


「それに、どっちに行ったらいいのかな?」そう言って文乃も周囲を見渡す。

「スマホのコンパスアプリだと、あっちが東みたいだけど…」そう言って柚葉はそっちを示した。

「え?スマホってそんな事も解るの?GPSとか無くても?」文乃は驚いて聞いた。


「うん、つか、GPSが使える所で、コンパスアプリ立ち上げないんじゃないかな?機種とかアプリにもよるだろうけど、GPSとコンパスの機能って別らしいよ」

「へー、そうなんだ…」


「…どっち行くか、大丈夫?」優太は不安そうに二人に聞いた。


「だ、大丈夫だからね!優君!」

「そうだよ優!姉ちゃん達に任せとけって!」


 優太は二人を見ると、少し考えて「う、うん、解った」とコクコク頷いた。


「えっと、あの森の方は、モンスターとか出ると怖いから、反対の南の方に行く?」


「え!モンスターとかいるの?」優太は驚いて問い返した。

「うん、いるって」


「優君、異世界のお話にある冒険者って言うやっつける人もいるって言ってたよ」文乃は優太を怖がらせない様に柚葉の言葉をフォローする。


「あー、それ私聞いてなかったけど、やっぱ冒険者ってあるんだ…。私達も街に着いたら、冒険者になるべきかな?」

「神様の話だと、地球で読んだ異世界の物語を参考にしてもいいって言ってたけど…」

「まぁその辺も、街に着いてから考えようよ…」

「そうね…。じゃあ、南の方に進んでみましょうか」


 進む方角が決まると、三人はそちらを目指して歩き始めた。文乃は優太と手を繋ぎながら、小まめに話しかけて元気付け、優太は優しい文乃に嬉しそうに何度も笑いかけた。


「うーん、道か川無いかなぁ…」そう言った柚葉は、定期的にコンパスアプリで方角を確認していた。

「うん、川があれば川沿いに進んで橋を探せばいいよね」


 歩いていると多少汗ばむくらいの陽気で、三人は日本の四季で言うなら春程度に感じていた。


 しばらくは歩きながら他愛の無い会話をしていたが、柚葉は二人に比べ自分の疲労が少ない事に気が付くと、自分の授かった能力を確かめる事にした。


「ちょっと体動かしてみる…」


「ん?うん…」文乃は突然そんな事を言い出した妹を見つめた。


 柚葉は自身の体に『身体強化』と『怪力』を意識し、軽く垂直に飛んでみた。


「え?うわー!柚姉ちゃんすごいね…」優太は軽く飛んだだけで4mは浮いた柚葉を見て驚いた。


「よっと…」柚葉は着地すると自分の両手を見つめる「自分で意識すると『身体強化』と『怪力』は出せるみたい…」


「普段は、今まで通りって事?」

「うん、まぁ無意識に『怪力』で物壊したりしないで済むから助かるけど…」


「じゃあ、私も少し魔法を確かめてみようかな…」


「うん!見たい見たい!」

「そうした方がいいかも…。いきなりモンスターに襲われるかもしれないし…」


「え?あ…、そ、そうよね…」

「え…」優太はビクッと周囲を見渡した。


 文乃は自分の通学鞄を柚葉に預けると、何処からともなく魔法の本を取り出した。


「じゃあ、ちょっと火をつける魔法を…」文乃はそう言うと魔法の本に右手を置いて目を閉じた「ラン・フィールス・エル・『ティフス』」


 文乃が呪文を唱え終え、右手の人差し指を上に向けると、その先にゆらゆらと火が灯る。


「わー!火が点いたね!」

「おー、魔法だ。これでたき火とかには困らなそうだね!」


 魔法に対しての意識の持続を止めて文乃は火を消すと、満足そうに本を一度消す。


「ちょっとだけ疲れた感じがしたから、難しい魔法とかたくさん使うと動けなくなっちゃうかも…」

「あー、ゲームで言うと魔力を消費してる感じかもね。何かない限り、練習は別の日にした方がいいんじゃない?」

「うん、歩きながら練習するのも大変だし…」


 周囲の風景も所々木々が増え、視界が良好とは言えなくなって来ていた。途中で柚葉は手頃な木の棒を拾い上げると、護身用か二度三度と素振りをして、その具合を確かめる。


「そ、そろそろヤバくない?」柚葉は空を見上げて言った。

「う、うん…、陽が翳ってきたね…」


「野宿の用意した方がいいのかな?」

「そうよね…。暗くなってから野営の準備は危ないだろうし…」

「野宿って、こんな何にも無い所で大丈夫かな…?」


 そこまで言って、二人は優太を見つめた。


「優、なんか便利な道具無いの?」

「う、うん、ネコえもんは、こういった時にいろいろな道具を出してくれるでしょ?」


「え?道具出していいの?」優太はきょとんとして二人を見つめ返した。


「ん?うん、あるなら出そうよ」

「優君、わざと道具使わなかったの?」


「わざとって言うか、柚姉ちゃんが『姉ちゃん達に任せとけ!』って言うから、道具を使わないで頑張るなんて偉いなぁって思ってた…」


 それを聞くと文乃は柚葉を見つめた「なんで、そんな余計な事言ちゃったの?」


「いや、違うって!優を元気付けようとして言ったんだよ!」


「優君お願い!なんか便利な道具出して!」

「うん!わかった!」


「つかさ、そんなのびいぬ君を見守るネコえもんみたいに姉ちゃん達見んなよー。もうネコえもん気分なの…?」柚葉は下唇を突き出してブツブツと言い出した。


「じゃあ、まずは寝る所を出すけど、どんなのがいい?」


「え?そんなにいろいろあるの?」

「うん!『キャンピングボール』『キャンピングボール豪華版』『キャンピング帽子』『パーフェクトテント』、他にもあるけど、キャンプだと、この辺の道具は有名!」


「い、いっぱいあるのね…」


「あ、『キャンピングボール』は知ってる!映画の恐竜のに出てきたヤツでしょ?地面に刺してエレベーターで上ってくヤツ!」柚葉は思い出した様に言う。

「うん!それ!」


「あれ?でもそれって一人用だよね?」

「うん、でも『キャンピングボール』の豪華版はみんなで泊まれるよ」


 文乃は話を聞きながら、よく解らないといった表情を浮べた。


「優、姉ちゃん困ってるから一つずつ説明してやって」

「ごめんね、優君」


「ううん、大丈夫!」優太は得意気な表情で説明を始めた「『キャンピングボール』はね。一人用でベッド、トイレ、シャワーがあるの、豪華版は皆で泊まれて部屋は別々なのね。部屋にベッド、シャワー、お風呂、トイレがあって、真ん中の部屋はリビング、2階は展望台になってるよ」


「すげー」


「『キャンピング帽子』は、猛獣に襲われても大丈夫な様に入り口が上に付いてて、部屋が5個、部屋にはベッドとトイレだけで、シャワーもお風呂も付いてないの。『パーフェクトテント』はね。一つの部屋でリビング、お風呂、寝室、展望台機能、音響システム、出前システム、ゴミ吸い取り装置とかあるけど、出前とゴミの装置は、ここだと使えないと思う…」


「えっと、私的には『キャンピングボール豪華版』が良さそうに聞こえるけど…」


「『キャンピングボール豪華版』は、普通の家とあんまり変らないから、モンスターとか襲った来たら、ちょっと困る感じかも…」


「優、他のは?」


「『キャンピングボール』と『パーフェクトテント』は高い位置に出来るからちょっと安全、『キャンピング帽子』は作りが丈夫かな?」


 それを聞くと柚葉はそれぞれの特徴から判断していった「一人用の『キャンピングボール』はお互い何かあった時に困るからやめよう」


「「うん」」


「あと、お風呂入りたいから、『キャンピング帽子』もちょっと…」

「そうね!」文乃はコクコクと頷いた。

「そうすると安全面を考えると、『パーフェクトテント』?」

「そうかな…?優君何か問題ある?」


「えっと…、『パーフェクトテント』は部屋が一つしかないから…、お姉ちゃん達がお風呂入ってると、僕どうしよう…」優太は恥ずかしそうに言った。


「別に一緒に入ればいいじゃん」


「え!」文乃はびっくりして妹を見つめた。


「え?だって、私達が入ってる間に、優、外で待たせるの?」

「いや、それは…」


「私は別に優だったら気にしないし…」

「私だって優君だったら一緒でも構わないけど…」

「じゃあ、いいじゃん!」


「あ…」優太は何かに気付いたように声を上げた「最初に『キャンピングボール豪華版』を出して、お風呂入ったら、『キャンピング帽子』出せばいいんだ!」


 文乃と柚葉は、それを聞くと優太を見つめた。


「優君…」

「え?駄目?」

「いや、いい案だと思うけど、姉ちゃん達の決意を無駄にすんなよ…」




#2


 優太の意見により、豪華な作りのキャンピングボールが出されると、それぞれの部屋に入って入浴をする事になった。


「一応、モンスターに勝てるか解らないけど『ガードロボ』を五体出しておくね…」


 柚葉は優太が防犯用の小型のロボットを出すのを見ながら、呆れた表情を浮かべた「ひみつ道具、万能すぎ…」


 それぞれ入浴を終えると、優太は『キャンピングボール豪華版』をまず仕舞った。


「私達はポーチに下着の代え入れておいて助かったけど、優はかわいそうだね」

「そうね…」


 体操着とジャージ姿の二人は、『キャンピング帽子』を出している優太を見ながら、いろいろと足りない物に気付き始める。


「じゃあ、『キャンピング帽子』出すから、ちょっと下がってて!」


 二人が下がるのを見ると、優太は帽子型のひみつ道具を取り出し、てっぺんのボタンを押すと少し離れた。すると帽子はムクムクと膨らみ始め、すぐに帽子型の建物へと姿を変える。


「わー!凄いね!優君!」

「うん!22世紀ですから!」


 優太を先頭に二人は『キャンピング帽子』の横に付けられたタラップを上がり、頂点の入り口から中に入る。


「おー、いい感じ!」柚葉は中央の部屋から内装を見渡す。

「うん!ベットもトイレもあるし!」文乃も手近な部屋を覗いて喜んだ。


「好きな部屋使ってね!いまご飯出すから!」


 それを聞くと、部屋の内装を見ていた二人は振り向いた。


「え?ご飯って優君、なに出せるの?」


「何でも出せるけど…、この『グルメテーブルクロス』で注文すれば…」そう言って優太はテーブルクロスを1枚取り出した。


「それって、童話の『北風がくれたテーブルかけ』みたいなの?」柚葉は驚いて聞いた。

「うん、多分同じだと思うけど、こっちは科学ですから!」


「す、すごいね優君…」

「でも、食事するテーブルとかは無いよ…」


 柚葉の言葉を聞いて、文乃も中央の部屋から手近な隣室を覗いたが、ベッドとトイレなど最低限の備え付けしか成されていなかった。


「大丈夫!『ミニミニ家具』出すから!」


 優太は得意気にポケットに手を入れると、確かめながら小さなテーブルと椅子を3脚取り出す。そしてそれを足元の絨毯に置くと、次に懐中電灯の様な道具を取り出した。


「あ!それ『ビッグ電灯』よね?」文乃は自分の知っている道具に笑顔を浮べた。

「うん!」


「もうなんか私の知ってる異世界の話と比べても、一番凄く思えてきたよ…」


 早速、優太は『ビッグ電灯』を点けると、絨毯に置いた家具を巨大化させていく。それを少し離れた位置で見ていた二人は、適当な大きさになったテーブルと椅子の具合を確かめた。


「うん、いい感じだよ優君!」

「じゃあ、夕飯食べよ!さすがにお腹すいた…」


 柚葉の言葉を聞くと、優太は先程出した『グルメテーブルクロス』をテーブルに広げて二人の前に座った。


「これ、何でも出てくるの?」

「うん!僕、カレーライスとリンゴジュース!」


 試しに優太が注文すると、すぐにテーブルクロスから温かなカレーライスと氷の入ったリンゴジュースが現れた。


「あ、美味しそう!私もカレーにしよ。飲み物は烏龍茶でいいや」

「じゃあ、私はカルボナーラにしようかな。飲み物はアイスレモンティーで」


 二人にも注文どおりの品が出ると、優太は先に汚れないようにと『グルメテーブルクロス』を仕舞った。


「普通に、うま!」

「うん、もう地球の食べ物なんて食べれないと思ってたから、凄く嬉しいよね!」


「でも、これってどうやって出来てるのかな?」柚葉はスプーンでカレーを少し混ぜ返してみた。


「多分、ちゃんと材料から作ってるみたい」

「え?そうなの?」

「うん、最初はね『無料ハンバーグ製造機』って道具があって、水と空気でクロレラを作ってそこから人工肉を作る道具があるから、そんな感じで作るのかな?って思ってたのね」

「うん」

 

 二人は口を動かしながら優太の話を聞いた。


「でも映画で『B級グルメテーブルクロス』って道具が出てきて、それはちゃんとした製品の道具じゃなかったから、たまに間違えて、素材のまま出てきちゃうシーンがあったの」


「あー!素材のまま出るって事は、素材から作ってるって言う事か!」柚葉は納得した表情を浮べた。

「うん」

「じゃあ、ちょっと安心感あるわね!」

「でも、その素材は何処からって謎があるけど…」


 食事を終えると、三人は食べ終えた皿を眺めた。


「優君、このお皿とかはどうするの?」


「えっと…」優太はマンガやアニメの時は気にならなかった部分に気付いて、反応に困った「邪魔だから『四次元ゴミ箱』に入れとくね…」


「え、勿体無いよ優君…」

「大丈夫、『四次元ゴミ箱』は、あとでまた取り出せるから…」

「あ、そうなんだ。便利だね」

「うん!22世紀ですから!」




#3


「取り合えず、街を探したいよね…」文乃はアイスティーの入ったグラスを両手で包みながら言った。

「うん、優『どこでも扉』とか使えないの?」


「えっと、今はまだ使えない…」


「ん?」柚葉は優太の言い回しに怪訝な表情を浮べる「今はって、使えるようになるって事?」


「うん、『どこでも扉』は映画での説明では、内蔵されている地図の範囲で、最大10光年以内の距離しか移動できないってネコえもんが言ってたんだけど、別の映画では本の世界とか、別の宇宙まで行けたりしたのね」


「う、うん…」柚葉は優太の詳しさにちょっと引き気味だった。


「その部分で、いろいろな設定があるかもしれないけど、僕の考えだと地図を登録すれば、こっちでも『どこでも扉』は使えるようになると思うの!」


「でも、優君、それには正確な地図が必要になるんじゃないの?」


「うん、それも大丈夫!さっきお姉ちゃん達がお風呂から出てくるまでに『自家用衛星セット』で、偵察衛星飛ばしたから」


「マジかい…」

「え、衛星まで飛ばしちゃったの?優君…」


「うん、見る?」優太は得意気に二人を見るとポケットに手を入れてモニター付きの道具を取り出した。


 文乃と柚葉はテーブルに置かれたモニターを見ると、優太は起動させて画面を点けた。画面には『キャンピング帽子』を中心とした周囲の風景がリアルタイムで鮮明に映し出されている。


「すご!」柚葉は興奮して周囲の様子を確認した。

「あ!ここ街じゃない?」文乃はすぐに壁に囲まれた建物が密集した場所を指差した。

「うん、そうだよ!ちょっと離れてるけど、これ街だよね!」


「えっとね。取りあえず周囲300キロ圏内を偵察させたから…」優太はそう言い「この辺の地図を出すね」とモニター上部から、次々と周辺の地図をプリントアウトし始めた。


「すげー、チートって言うかオーパーツって言うか、ひみつ道具最強すぎる…」

「異世界に行ったあとの事を一番しっかり考えてたのは、優君の様な気がしてきたよ…」


「あとで、この地図を『どこでも扉』に登録しておくから、明日の朝、一番近くの街に行こうね!」


「う、うん、ありがとね優…」

「でも、優君、そんな難しそうな事出来るの?」

「大丈夫!『天才メット』と『万能改造オートドライバー』があるから!」

「うん、もう何でもいいや、任せた…」


「街に着いたら偵察が終わり次第、世界中の地図を登録しておくから、そのうちどこでも行ける様にするね!」


「ひみつ道具って本当にすごいのね…」


「あとお姉ちゃん達、何か困ってる事とかある?」


 優太の言葉に文乃は少し考えると「えっと、あ!あのね優君。お姉ちゃん達、着替えとか無いから、洗濯とかしたいの…。優君もお着替えしたいでしょ?」と少し恥ずかしそうに伝えた。


「あー、洗濯はちょっと待っててもらっていい?着替えは、僕『時間ふろしき』で洗濯する前までパンツと着てた服戻したんだけど…」


「あ!その手があったか!」

「優君、頭いい!」


 喜んでいる二人を見ながら、優太はポケットから大き目のカメラを取り出した。


「それと、服は『着せ替えキャメラ』があるんけど、これ、分子を組み替えて、新しい服にするから、今着ている服は無くなっちゃうんだよね…」


「む!んー、街に行ってから、いらない服を買ってからの方がいいかなぁ?」

「そうよね…。地球の服を消しちゃうのも、ちょっと寂しいよね」


「あとは…」優太はポケットを漁るとハンドバッグを取り出した「この『取り寄せハンドバッグ』で…」とハンドバッグを開けると中に手を突っ込んだ「地球から自分の服とかパンツを持って来るしかないかな?」と自分の服やら下着を次々と取り出した。


 それを見ると、流石に二人は目を見開いて優太を唖然と見つめた。


「え?」最初に柚葉が声をあげた。

「うそ…」文乃も信じられないといった表情を浮べる。

「え?え?なんで地球から持って来れるの?」


「なんでって、『取り寄せハンドバッグ』は他惑星、別次元、亜空間、過去未来、空想世界、夢世界だろうが、取り寄せられるのは、ネコえもんファンなら誰でも知ってる設定ですけど!」


「いや、ネコえもんファンじゃないから…」

「え?え?じゃあ、そのハンドバッグは地球と繋がってるって事なの優君?」

「うん、そう」


「じゃあ、地球から何でも取り寄せられるじゃん!」

「そうだけど、ネコえもんの道具で泥棒とかしちゃ駄目だからね!自分の物だけ出すなら、貸してあげます!」そう言うと優太は頬を膨らませた。


「いや、それ上手く使えば地球に帰れるんじゃないの?」

「駄目だよ!出来るけど、これは取り寄せる道具なんだから!」

「…えー、優、そこは柔軟に考えようよ…」


「ま、まぁ私達も覚悟してこっちに来てる訳だしね…。でも…、向こうの世界に繋がってるって言うのは、少しだけ寂しさが紛れるよね」

「そうだけど、異世界を冒険する前に、地球に帰れる手がかりが見つかちゃったよ…」


「あ…、優君、お願いがあるんだけど…」

「なにー?」


「あとで、みんなでお父さんとお母さんにお手紙書いてもいいかな?読んで信じてもらえるか解らないけど、こっちで元気に頑張りますって…」文乃は物憂げな表情で優太を見つめた「だって、家から勝手に私達の荷物が無くなったら、みんな驚くでしょ?それに、お別れ位したいし…」


「あ、そうだよね…。優、私からもお願い」

「うん、いいよ!僕もお手紙書くから!」


「じゃあ、手紙書いたら、私のスマホで三人でさよならって動画とって、マイクロSDも同封する?」

「あ、その方が、真実味があるよね?」

「うん!」


 その日、三人は地球から持ち込んだ筆記用具を使って家族に手紙を書いた。書きながら三人は何度か泣き、最後に柚葉のスマートフォンをホールドリングスタンドでテーブルに立てかけると、ビデオレターを撮った。


 書かれた手紙は『取り寄せハンドバッグ』を使い、思い思いの場所に置いていく。


「はー、いっぱい泣いちゃった」文乃は赤い目をしたまま目元を擦った。

「うん…」優太の方はまだ寂しいのか、目を閉じて俯いている。


「でも、ま…、私の手紙に動画を同封したし、少しは信憑性あるっしょ!」

「そうよね!これで、少しだけ踏ん切りがついたよね!」

「うん…」


「それじゃあ…」柚葉はニヤリと笑った「自分の荷物を取り寄せじゃー!」

■あとがき


*ネコえもんの道具は元の話準拠ですが、詳細の無い部分は優太の脳内補完になります。

*作中のネコえもんの道具は、超常現象、魔法等ではなく、科学として成立して存在しています。


以下、この物語の注意点を少々。


この回からひみつ道具が使用されていますが、キーワードタグに「考察」がある様に、ひみつ道具に関しては、かなり綿密に下調べがされています。ですが、漫画、アニメ、大百科、図鑑、絵本、雑誌、公式、有志様のHP等々だけでは、詳細が分らない部分ももちろん多々あります。


幾つかの部分で作者が補完し、判断の付きにくい部分は、協力してくれている知人との話し合いにより、読者の方が納得できるだろう範囲で描かれている事をご理解ください。


ですが、おそらく各道具には、自分の視点、考察を持った方、作者が拾えきれてない道具の使用場面が必ずあると思います。その場合、感想に元の話の場面と状況、考察を交えてご連絡頂ければと思います。(投稿後の内容を変えるのは難しい部分があると思いますが…)


それとは別に、このひみつ道具の、こんなエピソードを!みたいなのがあったら教えて欲しいです。面白かったら採用したいと思います。読者の皆様にもひみつ道具に関しては「もっと上手く扱えるんだ!」と思われている部分が必ずあると思います。


ひみつ道具は、調べれば調べるほど、これヤバすぎだろ?って物が本当に多数存在しますが、優君の良心で使用して行きたいと思います。


次回は、優君が調子に乗って二人に酷い事を言ってしまう回ですね。この場面では、優君は長々と引きずる事になります。

ちなみに次回いきなり35000字もあるんですけど、どうしよう…。

ちょっと分割も考えてみます…。


感想、誤字報告ありがとうございます!


それでは、次回も3日後になります!

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― 新着の感想 ―
[一言] 道具の中でもとりわけ物騒なシロモノ「地球破壊爆弾」(だったかな?)をぜひ作中で活用させてみて欲しい(笑)。
2020/10/18 05:11 通りすがり
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