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優太と選択

#1


「あ、チーちゃん、まだここに少し血の塊が髪に付いてるよ」と柚葉はチートベルベルグの髪を一房掬って見せる。

「む…、浴室でよく洗ったのだがな…」


 食堂で引き続き晩酌をしていたチートベルベルグは、柚葉に指摘された部分に視線を向けて表情をしかめた。


「あー、血が凝固して髪にへばり付いちゃったんだね」と千恵はそれを見ながらビールの入ったグラスを傾ける「よければ、今から洗髪してあげようか?」


「いや、この程度なら自分で出来る」


「いいのーチーちゃん?」と柚葉はニヤリとした「千恵さん本職だから、髪洗って貰うと、ちょー気持ちいいよー」


「髪を洗うのに、本職などあるのか?」それを聞いてチートベルベルグは怪訝な表情を浮べる。

「洗髪だけと言うか、私達の居た国では理髪の仕事をしてたんだよね」と千恵は答えた。

「ちなみに、今の私の髪型は千恵さんにやってもらったんだよ!」と柚葉は自分の髪をサラリと撫でる様に見せつける。


「ほー」とチートベルベルグは多少興味が引かれた表情を浮べた「なら、頼めるか?」


「いいよいいよー!じゃあ、これ飲んだら下に行こうか!」


 テーブルの向かい側で優太と並んで聞いていたクーナは、そこで思い出したように顔を上げる。


「あ!ゆーたん、アルエ、チーちゃんに見せるです!」

「あー、チーちゃん、まだアルエ見てないよね?」

「アルエとは、なんだ?」

「ゆーたんの飼ってる、長いのです!」

「長いのって…」柚葉はクーナの表現力に苦笑いを浮べる。

「アルエはアルファーって、ふわふわの動物!」と優太は説明した。


 千恵の飲んでいたビールのグラスが空になると、クーナを先頭に優太、柚葉、千恵、チートベルベルグと食堂を後にする。


 しばらくして「千恵さん、追加のおつまみ出来ましたよー」と文乃は食堂に顔を出すと「あ、居ない!しかも、食堂そのまま!」と表情を引きつらせて立ち尽した。


 商業エリアに降りる階段に向かう途中、ちょうどアルエが階段の方からタタタと姿を現した。


「あ、アルエいた!」と優太はアルエを見ると呼びかける「アルエ、おいでー」


 アルエは優太に呼ばれると、走り寄り優太の足に頭部を擦り付ける。


「チーちゃんアルエです!」とクーナはアルエを抱き上げるとチートベルベルグに紹介した。


 チートベルベルグはアルエを見た後、アルエの毛色と同じクーナの髪色に視線を向けた。


「ほー、なかなか可愛らしい生き物だな!」


 だが、アルエの方はチートベルベルグを見ると、目を丸くして落ち着きを無くした。


「アルエ、どうしたです?」クーナは身をよじってグニグニと自分の手から離れようとするアルエを見つめた「こんなアルエ、初めて見たです!」


「ホントだ!」と優太もアルエを見つめる。


 クーナの手から離れると、アルエはピョンとチートベルベルグの胸元にへばり付き、スルスルとその体を登り始めた。


「…愛らしいヤツではないか」とチートベルベルグは自分の頬に触れたアルエの柔らかい毛の感触に笑顔を浮べる。


 しかし笑顔は次の瞬間凍り付く。アルエは頭部まで登りきると、チートベルベルグの角と角の間にボテッと座り、前足で右の角に対してガリガリガリガリと爪を研ぎ始めた。


「「「「あ…」」」」


「ふ、ふざけるでないわ!この畜生風情が、我がホーンに…」チートベルベルグは頭部に手を伸ばしたが、アルエは背中の方にスルリと逃れると、今度は左肩に乗り、背を伸ばして左の角をガリガリガリガリとまた爪を研ぎ始める「やめんか!脳が揺れるわ!」ガシッと今度はしっかりとアルエを捕まえた。


「クー…」とアルエは掴まると、情けない鳴き声を上げる。


「チーちゃん!アルエ、許してあげて!」と優太は慌ててチートベルベルグの服を掴む。

「殺しちゃダメです!チーちゃん!」


「いや、流石に殺しは…」と言うチートベルベルグに対し、アルエはお得意の蹴りを繰り出したが、チートベルベルグはヒョイと避わす「やっぱり殺すか」とジロリとアルエを睨む。


「わー!チーちゃん、殺しちゃダメー!」

「許してあげてです!チーちゃん!」とクーナも下唇を突き出して懇願する。

「クー…」


 チートベルベルグは「はー」とため息を吐くと優太にアルエを差し出す「ペットのする事だから、それ程怒ってはおらぬ」


「チーちゃん、優しいです!」

「アルエ!ダメでしょ!」と優太はアルエを叱った。

「クー」


「優、今度、アルエの部屋に爪とぎ用のなんか用意してあげれば?」

「うん」

「アルエ、いつも自分の部屋の真ん中の木にガリガリやってるです」

「え…、そうなの…?柱が倒れても困るから、なんか用意する…」


 その後、商業エリアの千恵の美容院から戻ったチートベルベルグは大興奮だった。


「チエ!そなたは素晴らしい!」


「だから言ったじゃん!」と柚葉は自分の事の様にフフンと笑う。

「えっと…、ども…」と千恵は恥ずかしそうにポリポリと頭部を搔いた。


「いや…、こればかりは体験するまで分からなかった!もしわらわがまだ王の立場であったなら、そなたにそれ相応の地位と財を与えたであろう!」


「うーん、嬉しいけど…、チーちゃんがその立場でも、今ほどの感動を与えてあげれなかったと思うよ」と千恵は少し考えて言う。


「何故じゃ?」

「私は自分の技術に相応の自信は持ってるけど、この技術を100%活かせるのは、優君が用意してくれた道具が必要なんだよね。だから、王様だった時のチーちゃんと会ってても、同じ様にはして上げれなかったよ」

「なるほどな!」とチートベルベルグは整った自分の髪を一房掬った。


 そこに文乃とエルメシアが、食堂に戻って来た。


「お姉ちゃん見て見て!チーちゃんの髪型、千恵さんが少し巻いたんだよ!」


「うん、凄い素敵だと思うけど…」文乃は不機嫌そうな表情を浮べる「貴方達は、ちゃんと食べた物は片付けてから行きなさい!私とエルさんとシーナさんで片付けたんだからね!」

 

 その言葉に優太、柚葉を始め、文乃の言葉に恐ろしさを感じて千恵達も視線を下げる。


「はい…」「すまん…」「ごめん文ちゃん」「ごめんなさい」「ごめんです…」


「はー…、優君とクーちゃんは浸けてある食器洗うように…」


「うん」「わかったです!」


 そこへアルエが食堂に入ってくると、ピョンとチートベルベルグの膝に乗り、テーブルにクルミをひと欠片置いて「クー」とチートベルベルグを見ながら一鳴きした。


「ん?」とチートベルベルグはクルミを摘み上げてアルエを見る。

「それ、アルエの大好きな木の実だよ!」と優太は教えた。

「あはは、アルエ、チーちゃんと仲直りしたいんじゃない?」

「フッ、かわいい所もあるではないか…」


 チートベルベルグがアルエを一撫ですると、アルエはスルリとチートベルベルグの肩から頭部に登り、また角でガリガリと爪を研ぎ始めた。


「ちゃうわ…。クルミやるから爪研がせろって意味だわ…」と柚葉は慌ててアルエを引っぺがした。





#2


 翌日、優太は一人で千恵の家に来ていた。


「優君、ほんとありがとう!」

「ううん、僕たちも千恵さん家使わせてもらうから!」


 そう言った優太は『天才メット』のシールドを上げて千恵の家を振り返った。ナポリタンのモルドハウスと王都を行き来する為に、千恵の自宅の一室を提供して貰った見返りとして、優太は千恵の家の数箇所を使いやすく改造していた。


「それにしても、あの小さい大工さんのロボットすごいねぇ!」と千恵も隣で見ながら感嘆する。

「うん!『職人ロボット 大工の竜っつあん』って言うんだよ!」

「へー」


「とりあえず、屋根に『太陽光電池』を6枚設置したから、部屋の照明、冷蔵庫、電子レンジ、エアコン、洗濯機は使えるようにしたよ。それと水周りとかは『ノビータガス菅』『ノビータ水道管』『ノビータ下水管』使って改造したから、日本みたいに使いやすいと思う!」


「おー!お風呂とトイレは?」

「それも用意したけど、本当にひと部屋まるまる脱衣所と浴室に使って良かったの?」

「もちろんもちろん!日本人だもん、家にお風呂作ってもらえるなら、ひと部屋くらい使っちゃうよ!」

「それならいいけど、柚姉ちゃんが王都でもキレイなおトイレ使いたいって言ってたのね。だから1階と2階はそれぞれかなりリフォームしちゃったから、住んでみて大変だったら、また言ってね」

「うん、ありがとー!でも大丈夫だと思う!こっちで日本並みの生活できる方が嬉しいし!」


「じゃあ僕、柚姉ちゃん達が帰ってくるまでに完成させちゃうから!」

「うん、柚ちゃん達は、早速チーちゃんの冒険者登録に行ってるんだっけ?」

「そう!」



「ヒルデさーん、強力新人見つけました!」


 ファルケンの冒険者組合に入った柚葉は、嬉しそうに職員のサントル・ヒルデにそう声を掛けた。


「え!早かったですね!仲間集めはどこでも苦労するものですが…」とヒルデは柚葉の後ろのチートベルベルグに視線を向ける。


「ベルだ。よろしく頼む」


 チートベルベルグは前もって仲間内で決めていた偽名で自己紹介をする。ヒルデは美形且つ長身のチートベルベルグに目が奪われた。


「は、はい!ひゃー、すごい美人さんですね!ユズハさんとエルメシアさんもお綺麗ですから、ベルさんが入られるとナポリタンはもっと人気が出そうです!」


「フフフ、見た目でも実力でも勝ちに行きますよ!」

「ファルケンの冒険者組合の為にも、是非お願いしますね!」


「それでベルさんはまだ冒険者の登録をしてないんですけど、お願いできますか?」

「はい、わかりました!」


 柚葉が主立ってチートベルベルグの手続きをしている間、チートベルベルグは興味津々と言った感じに周囲を眺めていた。


「どうかしましたか?」とエルメシアはチートベルベルグに声を掛ける。

「いやなに…、人の街が新鮮でな…」

「ああ…」


「…魔王であった頃、人側の王の住むこの都を最初の到達点と定めていた」

「そうでしょうね…」

「…その頃、まだ見ぬ人の都の様相を想像したものだが、やはり想像と実際に見るのでは大きく違うものだな…」

「そうですね。私も初めて人の街を見た時、そう感じました…」


「もしもわらわが勇者に負けず、いつかこの都を制圧した可能性があったのならば、出来るだけこの生活を守ってやれればと思っただろう…」


 エルメシアはそれには答えず、考え深げに周囲を眺めるチートベルベルグの横顔を見つめた。



「終わったよー!とりあえずチーちゃんの登録証は明日には出来るって、それと闘技会は昨日あったぽいから、次までちょっと間があるってー」

「そうか」

「では、しばらくは依頼を受けてベルの階級上げをするべきですか?」

「そうだね」

「ふむ、ならばどのような依頼があるか確認するか…」


 三人は依頼が掲示してあるボードに向かうと、それぞれ依頼書を眺める。


「先日に比べて、依頼書が増えてますね」エルメシアは目を通しながら柚葉に告げた。

「ホントだ」


「ベネゼア村、近隣の森林に増えすぎた狼の間引き」チートベルベルグは目に付いた依頼書を読み上げる「わらわが受けられる依頼は、場所さえ分かれば特に難しいものは無いな」


 柚葉に一通りの説明を受けたチートベルベルグは、他の依頼書にも目を通す。


「あ…」とエルメシアは依頼の内容を聞いて、チラリと柚葉に目を向ける。

「ごめんチーちゃん、私、討伐系の依頼は避けてるんだよね…」

「ん?」とチートベルベルグは柚葉に視線を向けた。

「ユズハ様は生き物の殺傷を好まないのです」


「正確には生き物を殺すのが怖くて出来ないだけだけどね…」柚葉は申し訳無さそうにチートベルベルグに謝った「チーちゃんがヤル気になってるのに、ごめんね」


「別に気に病む事は無かろう」

「え、そう?」

「ああ、個々に得手不得手があるのは当然であるし、王であったわらわは個々の配下の特質を理解して役職に就ける必要があったからな…」


「ベル、ユズハ様は戦えない訳ではないのですよ」


「ほー、それは後で確かめたいものだな…。だが、ユズハが出来ぬのならばわらわがすれば良いだけの話だ」

「まぁそうだけど、それだとチーちゃんは働いてるのに、私は見てるだけになちゃうよ」

「別に、それで構わぬと思うが?逆に依頼の細かな点でユズハが動いてくれればそれで良いし、こちらの生活に慣れておらぬわらわには、そういった事は出来ぬ」

「確かにそうですね」


「フミノの代わりに料理を作れと言われても、わらわではユータに満足のいく食事を作ってやれぬのと同じだな」

「はい、それに例えばですが、王が兵を派遣し、その王が城に居ても王が仕事をしていないと思う兵が居ないのと同じだと思いますよ」

「まぁそう言ってもらえるなら嬉しいし、ナポリタンとしても業務の幅が広がるからね」


 ぎこちない笑顔を浮かべる柚葉を見て、チートベルベルグは楽しそうに笑って目を閉じた。


「そうだな…。わらわは魔族として敵意ある者を殺す事に抵抗は無いが、本来はユズハの様に生物を殺す事に抵抗を感じるのは当然の感情なのかもしれぬ。だから、その気持ちを卑下する必要は無いし、大事にすれば良かろう」

「ユズハ様、私もそう思います」


「姉ちゃん達、なにブツブツ言ってんの?」


 三人は後ろで串焼きを食べながらこちらを見るモルド、ガガシャのメンバーのラズルに視線を返した。


「帰るか…」





#3


「なにするです?」

「チーちゃんと柚姉ちゃんが勝負するんだって」

「勝負です?」


 優太の言葉を聞いて、クーナは体育館の中央を隔てて対峙する柚葉とチートベルベルグに視線を向ける。二人は訓練用の木刀を持ち、軽く体を動かして準備をしていた。


「チーちゃんお手柔らかにね!」

「ああ!」


 柚葉はチートベルベルグの様子を見ながら、自分の実力を計った(わたしの『全武術』はこっちの世界で生まれた全ての武術って話だから、チーちゃんの技術も含まれるはずなんだよね。純粋な近接勝負なら簡単には負けないと思うけど…)


「ユズハ様、気を付けて下さいね」

「うん、ありがと」


「相手は元魔王様だけど、大丈夫?」と文乃も心配そうに声を掛ける。

「フフフ、もしかしたら勝っちゃうかもよ!」

「ほー、随分と余裕だな!ユズハ!」


「ゆーたん、街、楽しかったです?」

「え?楽しくは無いよ。千恵ちゃん家、改造しただけだから…」

「クーも行きたかったです」とクーナはプクッと頬を膨らませる。

「シーナさんにお手伝いしなさいって言われたんだから仕方ないでしょ?」

「うー、今度行く時はクーも行きたいです…」

「うん、今度ね」


「それでは二人ともよろしいですか?」とエルメシアは声を掛ける。

「うん」

「ああ」


「それでは、開始!」


 エルメシアの声掛けを聞いて柚葉は『身体強化』『怪力』を意識し、『全武術』の知識から体内で練り上げていた気を木刀に浸透させ硬化させた。ただ、これは日頃から訓練していた訳ではないので、出来はするが効果の程は本人も期待していなかった。


「それでは行くぞ、ユズハ」

「うん!」


 と、柚葉が答えた次の瞬間、チートベルベルグは一瞬で柚葉の正面に距離を縮め、木刀を叩き付けた。


「「「あ」」」と見ていた全員が声を上げた。


 辛うじて自身の木刀で受けた柚葉だったが、置いてあるゴルフボールをフルショットでもしたかのように吹き飛ばされた。


「わー!柚姉ちゃん!」

「ぎゃ!柚!」

「ユズハ様!」


「あ、すまんユズハ…」


 猛スピードで壁に飛ばされた柚葉は、木刀を手放し、高所より落とされた蜘蛛の様に両手両足を使って体育館の壁に衝撃を逃し、練気で体を硬化させるのではなく、逆に軟化させる事で体中の衝撃を逃した。


「…ゆずのん、死んじゃったです?」バンと派手な音を聞いて、クーナは目を丸くして柚葉を見つめた。


「うっ…、死んだかと思った…」と柚葉はズルリと床に落ちると、そのままペタリと座り込んだ。


「ユズハ様!大丈夫ですか?」

「…う、うん、一応、でも体中痛い…」


「おー!手加減したとはいえ、流石だな!ユズハ!」

「流石じゃないですよベル!」とエルメシアは抗議する。


「柚姉ちゃん、『お医者様カバン』の薬飲んで!」


「あ、ありがと、優…」薬を飲み終えると、柚葉は改めて魔王としてのチートベルベルグの恐ろしさを実感した「こわー、魔王様ヤバイわ!純粋に圧倒的な暴力だ…」


「もー、本当に死んじゃったかと思ったよ…」と文乃ははーっと息を吐いた。


「いやこれ、勇者、本当によくチーちゃんに勝てたね…」


「ん?まぁヤツも正面からの打ち合いはほぼ避けていたかな…。盾での受け流しも聖女による聖域や障壁、硬化、衝撃緩和や体重増加で耐えておった」


「で、ですよね…。人類が正面からまともに太刀打ちできるパワーじゃないよ…」


「まぁ魔族でも、わらわと打ち合える者は、それ程はおらぬからな…。ミヤマもわらわに挑んできたが、壁に叩きつけられて気を失っておったわ」

「魔王ミヤマをですか?ミヤマは七支公の一人、千界長カカ様と引き分けたと聞きますよ…」

「まぁ相性もあるからな…」


「はー、簡単には行かないかー」と柚葉は立ち上がると木刀を拾った「じゃあ、チーちゃん、続きやろ!」


「え!まだやるの?柚?」

「危険ですよ!ユズハ様!」


「ん?まぁ力量差は分かったからね!」と柚葉は笑った「それに、この世界では私にはコレしかないから…」


「おー!ユズハ!もし逆の立場なら、わらわは立ち上がり、そして立ち向かえる覚悟を持てぬかもしれぬ。そう考えれば、立ち向かってくる気概があるだけだけでも、そなたは素晴らしい!」

「褒めてくれるのは嬉しいけど、私は勝つ気でいるからね!チーちゃん」

「なお良い!」


 その言葉を皮切りに今度は柚葉からチートベルベルグに迫って行った。



「うー…」と柚葉は湯船に浸かりながら落ち込んだ表情を浮べた「ぜんぜん勝てなかった…」


「いや、慰める訳ではないが、十分強かったぞユズハ」

「そうですよ!ベルの剣を落としたり、転倒させたりしたじゃないですか!」

「そのあと、投げ飛ばされたり、逆に転ばされたりしたけどね…」

「そう落ち込むな…。もしわらわがまだ王ならば、そなたもまた重臣として手元に置いていた事だろう」


「ぐぞー、まだあの目の前で新幹線が通過するような、あのパワーが恐ろし過ぎる…」

「いや、慣れようとしないでくださいよ…」


 そんな話をしていると大浴場の戸が開く音がし、三人はそちらに視線を向ける。


「チーちゃん、チエちゃん来たです!」とクーナの声が浴室に響いた。

「こんばんわー!」

「おー!チエか」

「柚ちゃん、チーちゃんと勝負したんだって?」

「はい、もうボコボコでした…」

「あはは、元魔王様だしねぇ!」


 二人が入ってくると、しばらくしてまた戸が開く音がする。


「柚姉ちゃん、入って大丈夫ー?」と優太の声が入り口から響く。

「ゆーたん来るですー」

「おー!ユータか!」

「こらこらこらチーちゃん、前、隠して隠して!優ー、ちょっと待って!」

「はーい」

「何故だ?わらわはユータなら構わんぞ!」

「ダメなんですよ」とエルメシアは嗜める。


「えーっと…」柚葉は一度視線を上に向けるとチートベルベルグを改めて説得した「チーちゃん、優はまだ結婚するには早いって言ったでしょ?」


「ああ…」

「今からチーちゃんのエッチな体を見せてたらどうなると思う?」

「ん?どうなるのだ?」

「いい、チーちゃん、どんな美味しい料理でも毎日食べてたら飽きちゃうでしょ?」

「そ、そうだな…」

「それと同じで、毎日チーちゃんの裸見てたら、優が年頃になってもチーちゃんの裸見ても何とも思わなくなっちゃうかもしれないよ!」


「な!」とチートベルベルグは言葉を失う「そ、そうなのか?」とエルメシアの方を向いた。


「え?あー、ユズハ様が仰るのですから、そうかもしれないですね。私たちは家族みたいなものですし、基本的にどんな種族でも家族にそういった感情は抱かないものではないですか?」


「は!た、たしかにな!隠した方がいいな!ユズハ!」

「うん…、そうしてください。優の事に関してはお姉ちゃんも本気で怒るので、優がいる時は隠そうね」

「わ、わかった…」





#4


「はー、涼しい!」と千恵は地下の休憩所の椅子に座り、足をパタパタとさせた。

「ああ、火照った体に丁度良い冷気だ」とチートベルベルグも隣に座って涼む。

「食事のお酒が楽しみだねぇ」

「そうだな。しかし王であった時は常に何かしらの迷い事が合ったが、全てを失い、こういった生活を送ってしまうと、もう戻れなくなってしまうな…」

「ふーん、チーちゃんは戻りたいの?」と千恵はチラリと横のチートベルベルグに視線を向けた。

「どうだろうな…。遣り残した事や、わらわを信じて付いて来た者の事を思うと戻らなければと思う気持ちもある。だが、敗北した以上は次世代に譲り、ここでユータ達と緩やかな生活を送るのも悪くないと思う自分もいる」

「あー、どっちも解るねぇ…。でもそれってすぐ決めなくてもいいんじゃない?ここで優君達との生活を送りながら、必要に迫られたら決めれば?」


 それを聞くと、チートベルベルグは千恵を見つめた。


「チエ、確かにそなたの言う通りだ。王であった時は、常に何かの選択を迫られていたが、今は何も急ぐ事は無いな…」

「そうだね!」


 同様にチートベルベルグ達と共に涼んでいた柚葉はエルメシアの横で自分の手のひらを握ったり開いたりしていた。


「えっと、ベルと戦っていた時、ユズハ様が使っていたのは練気と言うのものなのですか?」

「うん、地球では存在しないけど、魔法並みに有名な技って感じなんだよね」

「それがランバルディアでは、本当に存在したんですね」

「そうみたい。もしかしたら地球の人が受け入れやすくする為に、神様みたいな方が地球でそういった情報を流してたからかもしれないけど…」


「あー、『気闘法』?」と会話を聞いていた千恵はヒョコっと二人に顔を向ける。

「はい、千恵さんは知ってるんですか?」

「うん、詳しくは無いけど、冒険者でもたまーに使う人がいるね。有名な人だと闘技会上位のモルドのリーダーに、ニケって人がいて『気闘法』の凄い使い手だよ。素手で鉄製の武器と打ち合ったり、大岩を叩き割ったりするらしいよ。確か流派はエンケイルス流って言ったかな?」

「へー」


「それは、私でも習得可能ですか?」

「うん、出来ると思う。こちらの世界では、南アジンベアのウルゾ族を発祥として、現在では数々の武術の流派で応用されてるみたい」と柚葉は自身の知識から答える。

「そういった知識もユズハ様の中にはあるのですね…」

「そうみたい。感覚と体現とは別に『全武術』として、それに必要なあらまし的な知識は引き出せるね」

「では、今度私にもご指導ください!」



「ゆーたん、コレなんです?」


 柚葉達は寛いでいたが、優太はクーナを連れてゲームなどを説明していた。


「それはドリームキャッチャー、中の人形を掴むヤツ操作して取るの」

「かわいいの、いっぱい入ってるです…」クーナはガラス越しに中のぬいぐるみを見つめた。


「やってみる?」

「お金ないです」

「これ、お金無くて出来るよ」

「じゃあ、ゆーたんやってです」


「いいですけど…」と優太はドリームキャッチャーのショーケースを覗いた「欲しいのあるの?」


「あの茶色いのかわいいです!」

「クマだけど、なんのキャラクターだろ?柚姉ちゃん知ってるかな?」

「取れるです?」

「分かんないけど、やってみる」


 そう言うと優太はスタートボタンを押し、横から覗き込んで縦軸を合わせていく。


「あ、銀色の動いたです!」

「うん、アームね」


 次に横軸を合わせると、二人は下がり始めたアームの行方を見守った。


「あ!掴んだです!ゆーたん!茶色いの掴んだです!」

「うん、…ん?」


 アームがクマのぬいぐるみを掴んだ瞬間、反対側の人形群の中からアルエがムクッと起きあがり、クマのぬいぐるみを掴んだアームにピョンと飛びついた。その衝撃でクマのぬいぐるみは落ちてしまう。


「「わ!」」と優太とクーナは突然の事に驚いて1歩下がった。


「どしたの?」と柚葉が声を掛ける。


「ドリームキャッチャーの中にアルエいた!」

「ビックリしたです!」


「え?どうやって入ったの?」

「出口からじゃない?」と千恵も体を起こしてドリームキャッチャーのガラス越しのアルエに視線を送る。


「もー」と優太は『四次元ポッケ』から『通りぬけリング』を取り出すとガラスにペタリと貼り、中のアルエを抱き上げて道具をしまった。クーナはアルエと『通りぬけリング』とガラスの中のクマのぬいぐるみに視線を向けて、「ん?」と言った表情を浮べる。


「クー」と抱き上げられたアルエはひと鳴きする。

「クー、アルエ持ってて」

「わかったです」


 クーナがアルエを受け取ると、アルエはクーナの顔をペロペロと舐め始めたが、その視線は後ろのチートベルベルグに向けられていた。


 優太は改めてドリームキャッチャーに向うと、クマのぬいぐるみを取りに掛かる。何度か落としてしまうが、4度目で優太はクマのぬいぐるみを取る事が出来るとクーナの方を向いた。


「取れたです!ゆーたん凄いです!」

「はい、あげる」

「あ、ありがとです!」クーナはアルエを降ろすと優太からクマのぬいぐるみを受け取った。


 降ろされたアルエは、トトトとチートベルベルグの前に行き、目の前でちょこんと座る。


「なにようだ?」

「クー」とアルエはチラチラと頭部の角に視線を向ける。


 チートベルベルグは理解したように、先に頭部の角をスルスルと仕舞ってしまう。それを見るとアルエは驚いてチートベルベルグの体を登り、頭部を前足でカシカシと探った。


「やめんか!」とチートベルベルグはアルエを抱き上げる。

「クー」とアルエは脱力したようにグッタリとした。



「あー、マッサージ機気持ちいい」と柚葉はマッサージチェアに身を沈めながら目を閉じる。

「本当ですねー」とエルメシアも隣に座りながら寛いでいだ。

「でも、本当のマッサージとは違うよね?」

「えっと、そうなのですか?里では腰を痛めた者を摩る程度しかした事が無いですが…」

「いや、私も優に肩揉んで貰った事あるくらいだけど…」


 二人の会話を聞いていた千恵は、その会話に反応した。


「なら、王都でマッサージ受けてみれば?」

「え?こっちでもマッサージとかあるんですか?」

「あるよー。王宮前広場は芝生みたいになってて、そこにマットみたいなの広げてる人いっぱいいるから、そこで受けられるね」

「へ?屋外なんですか?」

「まぁ屋内のもあるけど、そういったのは大体男の人向けだよね」

「あー」


「わたしもよく行くし」

「んー、でも他人に体触られるのって、ちょっと怖いですね…」

「そう?まぁ確かに私もこっちの世界で男の人に頼むのはちょっと嫌だけど、王宮前広場はだいたい女の人だよ。柚ちゃんより年下の娘も多いし…」

「え?そうなんですか?」


「うん、マッサージって、仕事としては体一つで始められるからね」と千恵は右の人差し指を唇に当てる「ホラ、東南アジアの方でも、そんな感じじゃない?」


「それは、技術的にどうなんですか?」とエルメシアは疑わしげな視線を送る。

「うーん、おばちゃんとかだとやっぱり上手いよね。その分、値段はちょっと高いけど…。若い子ほど安いけど、あんまり上手じゃないかな。でも私としては、揉んで貰えれば気持ちいいは気持ちいいし、若い子が頑張ってると応援したくなるというか…」と千恵は笑った。

「へー、ちょっと興味沸いて来ました」

「ユズハ様…」とエルメシアは少し嫌悪感を露にする。


「受けてるとお気に入りの人とか出来るよ。私は長旅の冒険の後は年配の上手い人にやってもらって、暇な時とか、長旅の前に軽く受けたい時は若い子にお願いしてるね。でも、私がよくお願いする若い子は、結構上手だよ」

「へー」



「あ、ここにいた」と文乃はビニール製の買い物袋を下げて休憩所に現れた。


「ふみのん!見てです!ゆーたんがくれたです!」

「わ、可愛い!良かったねクーちゃん」

「良かったです!」

「クーちゃん、その子の名前は何にするの?」


「え?」とクーナは文乃に視線を向ける「茶色いのです」


「え?もっと可愛い名前がいいんじゃないかな?」

「あー、ゆーたん、何がいいです?」

「いや、クーのだから、クーが決めてあげなよ」

「決めたこと無いです」


「それ、焦げちゃったクマシリーズでしょ?」と柚葉が後ろから教えた。


「そんなキャラクターなの?」と文乃が問い返す。

「うん、そこそこ人気ある。体の何処かに焦げ目があって、お尻が焦げてるのがレア!」


 それを聞くとクーナはクマのぬいぐるみを回転させてみた。


「あ!お尻、毛が無いです!」

「おー、良かったね」


「これ、こげ?です」とクーナは優太に聞いた。

「ううん、焦げちゃったクマだって」

「こげ…、じゃあ、ココちゃんにするです!」

「うん、可愛いんじゃない?」と文乃は頷いた。


 クーナが嬉しそうにクマのぬいぐるみに頬ずりするのを見て、千恵は改めて文乃の方を向いた。


「文ちゃん、なんか用事あったんじゃないの?」


「あ…、そうだ!前に言ってたナポリタンのトレードマークのケープが完成したよー」

「お!完成したの?」と柚葉は身を起こす。

「うん、ミシンあったし、エルさんとシーナさんも手伝ってくれたからね」


「…手伝わなくて、さーせん」と柚葉は落ち込んだ表情を浮べた。

「いえ、ユズハ様はナポリタンの活動の方で動かれてますから…」とエルメシアはフォローを入れる。


 文乃は休憩所の寝座の段差に座ると、優太達も回りに集まった。


「じゃあ、配るね」と文乃はビニール製の買い物袋に手を入れた「あ、これはエルさんのだね」


「ありがとうございます!」とエルメシアは若草色のケープを受け取った。

「着けてあげるよ」と柚葉はケープを受け取るとエルメシアの前に立って胸元で結び紐を結った。


「うん、可愛いね!」と文乃はそれを見て笑顔を浮かべる。

「エルさん、かわいいですー」


「丈が肘上くらいですから、暑い時期でも平気そうですね」そう言いエルメシアは着心地を確かめた。

「へー、生地も薄手だし、右の胸元のナポリタンのマークもかわいいね」と千恵はエルメシアのケープの手触りを確かめる。

「あくまでトレードマークとしてのケープなんで、寒い時期には下に着てから羽織る感じですね」


「エルさん、フードも上げてみようか」柚葉は手伝いながらエルメシアにフードを被せる。

「あ、なんかお話とかに出てくるエルフっぽい!」優太はその姿を見て言う。

「なかなかいい感じだな!」チートベルベルグもエルメシアの全体に視線を向ける。


「それと、これはチーちゃんのだね」と文乃は黒いケープをチートベルベルグに手渡す。

「わらわは黒なのか?」

「柚姉ちゃんは、魔王だから黒だよね!って言ってたよ」

「え!嫌だった?」

「いや、構わぬが…」


 言いながらチートベルベルグはケープを羽織ってみせる。


「チーちゃん、カッコいいです!」

「おー!ちょっと魔王ぽいかも!」と千恵はその姿を見て感心する。

「ふむ、悪く無いな」


 それを見ると、アルエは寝座の段差からピョンとチートベルベルグの肩に乗り、後ろのフードに潜り込んだ。


「そこに入ってもホーンは出さぬぞ…」

「クー…」


「えっと、これはクーちゃんだね」

「クーのです?」クーナは自分が呼ばれて嬉しそうに笑顔を浮かべた。


「あ、可愛い!赤ずきんだ」と柚葉は飛び跳ねて喜んでいるクーナに視線を向ける。

「クーちゃんのケープは、アルエとお揃いだよ」と文乃はアルエ用の小さなケープを取り出した。

「クー」名前を呼ばれて、アルエはチートベルベルグのフードから顔を出す。

「ほら、アルエ着けてやろう」


「アルエと同じですー」クーナは千恵にケープを着けて貰いながらアルエを見つめた。


「クーちゃんはフードに耳の部分があるんだけど、アルエは耳長すぎて地面擦っちゃうから、フードは無しね」


「帽子、耳のところあるです!」

「可愛い!ケモミミフード」柚葉はフードを被ったクーナを抱き上げる。

「ゆーたん、可愛いです?」

「うん!可愛いよ!」


「それでこれが優君で、こっちが柚ね」文乃は優太に青色、柚葉に黄色のケープを手渡した。

「あれ?柚ちゃん、黄色なの?」

「黄色と言うか柚色ですね」

「あー!名前から取ったんだー」


「優君はネコえもんカラーで青ね」そう言い文乃は優太のケープを着け始めた。

「うん!」

「ゆーたん、カッコいいです!」


 文乃はそれぞれケープを着けているのを見て満足そうな表情を浮べた。


「うん、みんな丁度いい感じかな?ケープだから結構調整できるしね」


「文ちゃんは何色なの?」

「あ、私は茶色にしました」


「チエのは無いのか?」

「あー、千恵さんは私達とモルドが別なんだよねぇ…。勝手に作って渡す訳にも行かないし…」と柚葉が説明する。

「そうなのか…」

「みんなと会う前から入ってるモルドがあってね。いきなり抜ける訳には行かないし、大事な仲間だからね」

「ああ、そうなのか。それは仕方が無いな…」


「お母さん、無いです?」

「うん、シーナさんは王都に行けないのね。だから冒険者になれないから無いんだよ」と文乃は説明する。

「あー」と言ったクーナの耳のフードが動いた。


「あ、今度、クーちゃんも冒険者登録しちゃおうか!」と柚葉が提案する。

「え?クーちゃんを冒険者にするなんて危険でしょ!」と文乃は驚く。

「基本的にうち薬草採取みたいなのばっから、私たちと居れば危なくないし、優も登録してるじゃん」

「それなら、別に冒険者登録する必要ないと思うけど…」

「早めに登録しておけば、大きくなった時、ランク上げに困らないんじゃないかな?」


「ゆーたん、登録したです?」

「うん」

「じゃあ、クーもするです!」

「んー、じゃあシーナさんがいいよって言ったらいいよ」

「あ、でもクーちゃんの年齢で登録できるのかな?」と柚葉が心配した。

「オルドラーダでは、登録料をお支払い頂ければ、年齢に関わらず登録は可能ですって言ってたよね?」

「うん、冒険者は見た目だけじゃ実力は解らないから、年齢制限は特に無いよ」と千恵が教える。


「じゃあ、明日から、このケープ付けて活動しよう!」とリーダーの柚葉は皆に声を掛けた。





#5


「ユズハ様、本当に行くのですか?」


 柚葉とエルメシアは早速ナポリタンのトレードマークのケープを纏って、王都ハグルガンドを歩いていた。


「うん、せっかく教えてもらったんだし、気になるじゃん!」

「まぁそうですけど、マッサージなら私がしますよ」

「え?うーん、それはそれで嬉しいけど、エルさんは家族だから申し訳ないと言うか…」

「私は気にしませんけど…」

「まぁ行ってみようよ!」

「はい…」


 二人は王城に続く道を歩きながら、左右に立ち並ぶ店などを覗いていく。


「今のお店の革製品、デザイン結構良かったよね!帰りにもう1度見て帰ろうよ!」

「はい!」


「あ、あのへん開けてるけど、あの辺りかな?」

「そうですね。王宮に続く道の左右に広場が広がってると言ってましたし」


 少し足早に二人は進むと、広々とした王城に向かう石畳の左右に、丈の短い草が生えた広場があった。そこには多くの人がシートを引き、何かしらの商いを行っている様だが、その多くはマッサージを生業としているようだ。


「おー!楽器やってる人とか、動物売ってる人とかもいるね」

「飲食関係もありますよ」

「パレード的な式典とか無い時は、国民に解放されてるって言ってたけど、ちょっとしたお祭りとか市場みたいだねぇ」

「はい、物売りは道寄りで、マッサージ的な商売は広場の内部で行ってるみたいですね」

「まぁ道の端でマッサージしてたら邪魔だよね」

「ふふ、確かにそうですね」


「じゃあ、行ってみよ!」

「はい」


 柚葉を先頭に右側の広場に向かうと、二人は柑橘系の果物を鉄製の絞り機で絞る果汁屋の後ろから、前の人に続いて広場内部に入った。


「ん?ルベル?」柚葉は入ってすぐのシートに置かれた木札の文字を読んだ。

「両替商ですね」


 シートの上のクッションに座る男は、興味津々に見る柚葉に銀貨を見せ、指を三本立てた。


「え?」

「多分、硬貨の交換のレートを示しているんだと思いますが、分かりませんね」

「えっと、ごめんなさい。両替したい訳じゃないです」


 柚葉が素直に謝ると、男は手を下げて首を振った。


「行きましょうユズハ様」

「うん」


 適当な間隔で広がる露店を二人は前の人に続いて見て回る。


「古物も売ってて面白いですね」エルメシアは一つの露店で手の平だいの木彫りの像を購入した。

「値引き交渉とかしなかったけど、いいの?」

「はい、私の主神ラーバビト様の像でしたので…」

「ああ…」

「ラーバビト様の写し身に値引き交渉するのは、神の価値を下げる様な気がしませんか?」

「あー、確かにね!」

「まぁ流石に馬鹿げた値段でしたら、私も購入しませんが…」


 幾つかマッサージを商っている女性は見受けられたが、柚葉は人物の見た目と直感、シートや身なりの綺麗さで内心で平均点を付けて選んでいた。


「この辺、マッサージする人増えてきたね」

「えっと、そうですね。大分、中央に近い位置だからでしょうか?」

「女性が圧倒的に多いけど、男の子とかおじさん、お爺さんもいるね」

「ダメですよユズハ様!ユータ様に怒られます!せめて女性にしてください!」

「あ、うん…。分かってるから…」


 二人が興味有り気に視線を向けると、何回かあちらも視線を返して値段を提示してきた。数ヶ所、柚葉のお眼鏡に掛かった露店で内容と値段の確認をする。


「50から100ルベルが相場のようですね…」

「安いなぁ。日本円だと500円から千円くらいの価値だよ」

「これだけ多くの同業種がいれば安くなると思いますよ…」

「あー、千恵さんが体一つで出来るって言ってたよね…。商売としては始めやすそうだね」

「そうですね。技術の低さは値段を下げる事で埋めているみたいです」


「あ、あの…」そんな二人に同年代の少女が声を掛けた。

「はい?」と柚葉が答える。

「マッサージをご希望ですか?」

「えっと、まぁ…」

「な、なら、私達にやらせては頂けないでしょうか?」


 その言葉を聞いて改めて二人はそちらに視線を向ける。他の露店に比べて大き目のシートには声を掛けた少女の他にもう一人少女がちょこんと座っており、こちらを見ていた。二人の少女の身なりはあまり良いとは言えなかったが、それでも客商売として最低限の身嗜みは整えられている。


 柚葉は全体の清潔感も確認する。同世代の少女だけあり全体的に小奇麗にした感じがし、シートの上には三角形の大き目のタープが日よけとして張られているのもポイントが高かった。

 タープの頂点の部分を支柱に結び、底角の2箇所を木製のペグのような物で固定されている。マッサージを受けている間、タープが多少は視線を遮る役目をしてくれるだろうし、日が直接当たらないのも柚葉としては悪くないと思えた。


「そちらの方は目が?」とエルメシアは確認する。


 それを聞いて、声を掛けた方の少女は視線を落とす「あ…、えっと、はい、レフィリアは目が見えません」そう言ったが視線を上げた「でも、目が見えなくてもマッサージは私よりずっと上手いんですよ!」


「ロゼ、私は大丈夫だから」とレフィリアは友達に声を掛ける。

「う、うん」


「えっと、こういったの私達初めてなんだけど、どういった感じにするのかな?」と柚葉は聞いた。

「そうですね。短時間をご希望でしたら肩から腰に掛けて、または気になる部分を重点的に半ラフリン行います」とレフィリアが説明する。

「半ラフリン?って何?」と柚葉はエルメシアに聞いた。

「えっと、日の傾きを表す単位です。1ラフリンの半分ですが…」とエルメシアも説明に困ってしまう。


「あ、あの…、こちらを使います」とロゼと呼ばれた少女が1本の釘が刺さった板を見せる。

「あー、日時計なのかな?」と柚葉は見ながら判断する。


 ロゼは板を置くと釘の影に合わせて三角に切られた板を置いた。


「半ラフリンだと、影がココからココまで移動する間になります」

「なるほどなるほど…、長いのだとどれ位?」

「1ラフリンですね。足から始まり、腰、肩、腕、頭部まで全身を行います」とレフィリアが答える。

「おー」


「料金ですが短時間でしたら50ルブル、全身なら90ルブルで行わせて頂きますが…」とロゼが控えめに口にする。

「全身の方が、ちょっとお得だね!どうするエルさん!」

「え?私はいいですよ」


「「「え!」」」とそれを聞くと三人が驚く。


「エルさん、やらないの?」

「はい…」


 一方、ロゼとレフィリアの方も困った表情を浮べる。


「あ、あの…、でしたら、お一人様を私とレフィリアの二人で100ルベルで行わせて頂けないでしょうか?」


「え!私一人を二人で!?」と柚葉の表情が引きつった「そんな、お姫様プレイはちょっと…」


「そ、そうですか…」とロゼが落ち込む。

「エルさんお願い!待ってても暇でしょ?一緒に受けようよ!」


「はぁ…、分かりました…。そちらの二人もこちらが二人組みと言う事で声を掛けたようですし…」エルメシアは目を閉じて仕方ないとばかりに頷く。

「ありがとうエルさん!」

「「ありがとうございます!」」と二人も続く。


「じゃあ、全身でお願いします」と柚葉は日本製の靴を脱ぎながらシートに上がる。


「はい!」とロゼは元気よく答えると下に敷かれていたシートの半分をペロッとめくる「お荷物を全部外したら、こちらの穴に入れてください」と地面に開いた穴の中の麻袋を示す。


「え?荷物そこに入れるの?」と柚葉が驚く。

「はい、マッサージ中に物を盗む人も多いので…」

「あー」


 柚葉とエルメシアはラフな格好になると荷物を麻袋に入れる。二人が荷物を入れるのを確認するとロゼはその上に板を置きシートを戻した。


「今準備しますね」とロゼはレフィリアに毛布の束を渡す。


 レフィリアは慣れた様子で厚手の毛布を縦に敷くと、その上に縦長の皮のマットを敷いた。ロゼの方も同様に用意をして行く。


「そのまま寝たら背中痛いんじゃないかって心配したけど、大丈夫そうだね!」

「そうですね」


「それでは、仰向きに寝て下さい」とレフィリアが声を掛ける。


「エルさん、どっちの人にやってもらう?私はどっちでもいいけど…」


「え?私も構いませんけど…」とエルメシアはチラリとレフィリアに視線を向ける「では、私は彼女を…」


「うん、わかった」


 柚葉は少しわくわくした表情で敷かれたマットの上に身を倒す。


「少しお待ちください」とロゼは柚葉に言うと、レフィリアの横に行き彼女の手をエルメシアの膝の辺りに誘導した「森人のお客様だけど、大丈夫?」


「うん、ありがとう」レフィリアは見えない目でエルメシアの方を向くと改めて声を掛ける「お客様、それでは始めさせて頂きます」


「ええ、お願いします」とエルメシアは多少緊張した面持ちで答える。

「もし、痛かったり不快な部分があったらすぐ仰ってください」

「分かりました」


「足の方から始めますが、アラハの香油を使わせて頂きますが、大丈夫でしょうか?」

「それは…、使わないといけないのですか?」

「足は他の部分と違い、力の掛け具合が違いますので、摩擦で皮膚を傷める場合がございます。香油が苦手でしたら、ハッタ粉で行うことも可能です。そのどちらもお嫌でしたら、そのまま行うことも出来ますが、多少力加減は緩くなります」

「なら、構わず香油で行ってください」

「畏まりました」


「お客様も香油で大丈夫でしょうか?」とロゼは柚葉に尋ねる。

「それって後で拭いてもらえます?」

「はい、足が終わった段階で、お拭きしますよ」

「香油ってどんな匂いなんですか?」

「えっと、こちらですね」とロゼは土焼きの小さな瓶を柚葉の顔の近くに寄せる。

「あ、いい香り!」

「これ、私たちで作ってるんですよ。バマチ菜の油にアラハの花で香り付けするんです」

「へー、じゃあ私も香油でお願いします」

「はい!」


 足のマッサージが始まると柚葉は日本で受ける足つぼマッサージもこんな感じに行うのかな?と思ったが、ある程度揉みほぐされると、土踏まずに合う石が当てられ、幅広の紐で結ばれると、柚葉の足の親指を持って内側にググッと押し込んだ。


「ひゃ!」

「あ、痛かったですか?」

「う、ううん、そんな痛くなかったけど、足の指がバキッって鳴ったからちょっと驚いただけ…」

「あー」とロゼは笑った。


 その後、うとうとしていた柚葉は何度か目が覚めてしまう程度の刺激があったが、基本的に程よい加減で行われた。


「お客様、マットの上に座って頂けますか?」とレフィリアはエルメシアの体を起こす。

「えっと、普通に座ればよいのですか?」

「足を組んで座って頂ければ大丈夫です」

「分かりました」


 エルメシアは指示通り座ると、レフィリアはエルメシアの右腕を背に回して右手で押さえ、左手の平で左のわき腹をググッと押し込んだ。そうする事でエルメシアの上半身が右側に強く傾けられる。


「息を出来るだけ吐いてもらえますか?」


 エルメシアは指示通りすると、レフィリアは今度は左腕を同様に押さえ、右のわき腹を押すとエルメシアの体の数箇所がパキッと鳴った。その音を聞くとエルメシアは目を丸くする。


「エルさんの体、凄い鳴ったね!」

「は、はい、驚きました…」


 しばらく行為が続き、最後に頭部を指圧されて終えると、柚葉とエルメシアは脱力した感じに座って寛いだ。


「えっと、お時間の確認をお願いします」とロゼが置いてある日時計に視線を向ける。

「あ、うん、ちょっと長めにやってくれたんだね。ありがとう」


「いえ…」とロゼはシートの下から柚葉達の荷物を取り出す。


 レフィリアは慣れた様子で毛布やマットを畳んで行く。エルメシアはそんな様子を見ていた。


 柚葉はロゼと話しながら装備を整えていくと立ち上がった。


「ありがとう、じゃあお代を…」と柚葉は自分の財布を取り出す。


 だが、エルメシアは立ち上がると、先にレフィリアの手に貨幣を握らせる。レフィリアは持たされた貨幣を指の感触で確かめると驚いた。


「え?あの…、銀貨ですか?えっと、お釣りのご用意が…」とレフィリアは慌てる。

「いえ、それは対価として渡しました」

「…え!でも多すぎます…」


 エルメシアは自分の衣服を2度3度パンパンと叩いてから、レフィリアを正面から見つめた。


「正直に言うと、私はあまり他人に体を触られるのを好みませんし、貴女方の技術を、それ程期待してはいませんでした。ですが受けてみて、これは思った以上に素晴らしいものだと思えました」

「あ、はい、ありがとうございます」

「毎回、これ程払う訳には行きませんが、今回は貴女の技術料として受け取ってください。また来ますので…」


 それを聞くとロゼもレフィリアもポカンとエルメシアに視線を向けた。


「じゃあ、はい!」と柚葉はロゼに銀貨を渡す「私も初めだったけど、すごく気持ちよかったよ!また来るね!」


「え?私も?えっと…」ロゼは銀貨と柚葉を交互に見ると「あ、はい!天気がいい日はいつもこの辺りに居ますので、またお越しください!」嬉しそうに銀貨を握り笑顔を柚葉に向けた。


「エルさん、帰ろー」

「はい、ユズハ様」


「あの…、ありがとうございました!」とロゼが頭を下げる。

「あ、ありがとうございます」レフィリアも続く。


「うん、またね」と柚葉はエルメシアを伴って歩き始めた。


 しばらく二人は他の露店に目を向けて歩いていたが、エルメシアは少し申し訳無さそうに柚葉に視線を向けた。


「すいません。私が余計な事をしたばかりに、余計な出費をさせてしまって…」

「ん?別にいいんじゃない?あのお金はエルさんが稼いだお金だし、エルさんはそうしたかったんでしょ?」

「はい…、そうですね」


「実際、私も気持ちよかったし、あの娘達上手だったもんね。そう考えると、最初言われた値段はかなり安いなぁって私も思ってたから、本来の見合った金額をあげられたんじゃないかな?」

「そうですね…」

「優も言ってたけど、エルさんはもっと人の世界を知りたくて、出て来たんでしょ?」

「はい」

「じゃあ今日は、人の世界のいい部分が一つ知れて良かったね」

「はい、そうですね」

「また来ようね。エルさん」





#6


「んー、久しぶりの闘技会だねー」と柚葉は控え室の椅子に座って周囲をキョロキョロとした。


 チートベルベルグの冒険者の登録証を発行されてから、柚葉、エルメシアの三人を中心に活動し、たまに文乃と優太が加わり依頼を何度かこなしていた。その間にファルケンの冒険者組合のヒルデから次回の闘技会の開催を聞き、申し込んだ三人はこの日を迎えていた。


「わらわの初陣だと思うと、気も逸るな!」

「そうだろうけど、チーちゃんの場合、加減してもらわないと相手がヤバイから…」


「今回はユズハ様が後方に控えるのですか?」

「うん、前回は私の好きにやらせて貰ったから、エルさんも好きに攻めてくれていいよ」

「はい…、ありがとうございます」


 ファルケンの冒険者組合の控え室には、今回はナポリタンの他に3組のモルドが控えていた。その中には、前回も一緒だったモルド、サバリアのメンバーも居た。柚葉がキョロキョロとしていると、魔法使いの様相をした少女がペコリと柚葉に頭を下げる。


「こんにちは!こないだも一緒でしたよね?」と柚葉は笑顔を向けた。

「はい!ナポリタンさんは大勝利でしたね!」

「ええ、今日も勝ちますよ!」

「うちはあの時は負けましたけど、前回は勝てたので今回は2勝目を目指します!」

「おー、じゃあ一緒に2勝目あげられるといいですね」

「そうですね!」


 そんな会話をしているとファルケンの冒険者組合の闘技会担当職員のクロールが入室してきた。


「皆様、先の組合の方が終わった様ですので、私達も武器の選択に向かいまーす」


「んー、今日はどの武器にしようかなぁ…」と柚葉は立ち上がりながらチートベルベルグの方を向く「チーちゃんはどんな武器にするの?」


「重めの武器が好みなのだが、基本的に木製の武器ばかりだったか?」

「そうだね。でもチーちゃんが重い武器使ったら、圧殺しちゃうんじゃ…」

「ユズハとの訓練で、その辺の加減は十分学んでおる」とチートベルベルグはムッとする。


 闘技会用の武器庫へ着くと、エルメシアは前回同様に弓と矢を選んでいた。


「エルさんは、また弓?」

「はい、私では近接戦闘は、少し厳しいので…」


「ユズハユズハ!こんな物があったぞ!」とチートベルベルグは自分の身長ほどもある棍棒を持ってきた。


「それ、チーちゃんが3回ホームラン打ったら終わるヤツじゃん…」

「む、威力が有り過ぎるか?」

「うん、有り過ぎると思うよ」

「柄の長い槍のような武器はどうですか?」

「あー、それならそれ程勢いが付かないし、手加減しやすいかもね。最悪、折れるだろうし…」

「そうするか…」


「私はどうしようかなぁ…。後方だから盾と木剣、弓にしようかな」

「そうですね。それで良いのではないですか?」

「まぁ、それの出番は無いがな!」チートベルベルグはニヤリとする。



 一方、観客席の方では優太、文乃、クーナが仲良く座って、闘技会の開始を待っていた。


「おっきーですねー、ゆーたん」とクーナは闘技会の木製のベンチに腰掛けながらキョロキョロとした。

「うん」


「クーちゃんは王都に来た事があるの?」

「あるです!昔、お爺ちゃんと来たです!」

「あ、お爺ちゃんは魔法使いだったんだっけ?」

「そうです!お爺ちゃん、魔法の学校に用事ある言ってて、クーと二人で来たです」

「へー、楽しかった?」と優太も興味有り気に聞く。


「楽しかったですー」とクーナは嬉しそうに笑った「森から出た所から馬車に乗せて貰って、街に来たです!」


「あー、森から出た所の道なら8キロ位だから、馬車もすぐ見つかるよね」

「ああ、確か優君、モルドハウスは王都まで10キロくらい離れてるって言ってたよね?」

「うん、今度、モルドハウスから森を出た所までの道を作ろうかと思ってるの」

「えっと、道いるかな?道があると、知らない人とか来ちゃわない?」

「んー、でも道無いと、僕達の秘密を知らない人が普通に来れないから…。もし、知らない人が来ても正面からしか入れないし、乱暴な事されたら『無敵だよ砲台』あるから大丈夫だよ」


「そうだよね…。もし依頼とかで尋ねてくる人がいた場合は、正規の道が必要になるんだね」

「うん」


「そう言えば、魔法の学校ってあるんだ」と文乃はクーナの言葉を思い出す。

「あるです!あそこです」


 クーナは立ち上がって南の方を指差すと、優太と文乃もそちらに視線を向けた。そこには茶色い背の高い建物が目に入った。


「結構大きい建物だね」と優太にはそれ以上の大きな建物は王城くらいに思えた。

「おっきかったです!お爺ちゃん、そこでお友達と難しい話して、終わったら寝る事の出来るお店行ったり、美味しいご飯食べたです」

「へー」と嬉しそうに話すクーナを見て文乃も笑顔が零れる。


「お爺ちゃん、クーにキレイな服とか甘いのとか買ってくれたです!それで、寝る事の出来るお店行って、次の日にいっぱいいろんなの買って、おうちに帰ったです!」

「そうなんだ。楽しかったんだね!」と文乃は優しくクーナの頭を撫でた。


「あ、いたいた」と千恵の声がした。

「あ!チエちゃんです!」


「赤ずきんちゃん、遠くからでもすぐ分かったよ!」と千恵はフードを被ったクーナの頭をグリグリと撫で回す「あ、ココちゃんもお揃いのフード被ってる!」


「ふみのん、作ってくれたです!」言いながらクーナはぬいぐるみを大事そうに頬擦りした。


「千恵さん、朝、家を通らせて頂いたんですけど、居ませんでしたね」と文乃が声を掛ける。

「いや、居たけど、チーちゃんに飲まされて爆睡してた…」

「ああ、そう言えば、遅くまで飲んでたみたいですね…」


 二人が会話をしている間、優太は千恵の後ろに立つ猫系の獣人の少女に目を向けた。


「あ、ごめんモルターシャ」と千恵は三人に仲間を紹介する「紹介するね!うちのモルド、アルディバの魔術士モルターシャ、魔術士だけどちょっとした回復魔法も使えるんだよ」


「あ、凄いですね!」と文乃はペコリとお辞儀をする「私はモルド、ナポリタンの文乃と言います」


「はじめまして、清猫族のモルターシャと申します。なんか、凄いモルドが闘技会に参加するから儲けさせてあげるって、お呼ばれしました」とモルターシャは笑った。

「あはは…」と文乃は苦笑いを浮べる。


「僕たちもナポリタンに賭けたよ!」と優太は賭け札を見せた。

「私も金貨4枚いったからね!」と千恵も負けじと賭け札を出す。


「チエちゃんは出ないです?」とクーナは聞いた。

「ん?痛いの嫌だから私は出ないけど、私とモルターシャ以外のメンバーは出てるよ」

「え?そうなんですか?」と文乃は驚く。

「うん、今うちは86位で今日も午後の最初の方で出るね」

「え!千恵ちゃんのところランキング入ってるの?すごいね!」と優太も驚く。

「いやぁ勝ったり負けたりだから、あんまり凄くないかも…」


「まぁ私としては大きな怪我をしなければいいんですけど…、次の依頼に響きますし…」モルターシャは、はーっとため息を吐いた。


「モルターシャさんは、魔法は何処で?」

「私はマジーシャ・ガガレットですね」

「えっと…」

「そこから見える茶色い建物、マジーシャ魔法学校」と文乃の困った表情を見て、千恵が助け舟を出す。

「あー」

「と言っても、あまりお金が無かったので4年生の短期でしたけど…」

「え?そんな短い期間のコースもあるんですか?」


 こちらの世界の1年が105日なので420日で卒業できる事に文乃は驚いた。


「ええ、基本的な知識と使い方を教わって終わってしまいますね。ですけど、必要な魔法は魔術師の組合から別途買えますし、使用料さえ払えば卒業後も書庫の利用は可能ですから、入っていて損は無いですよ」

「へー」


「うちはモルターシャで持ってるようなもんだからね…。かなり幅広くいろんな魔法が使えて、回復魔術も使えるからね」

「ちょ!そんな事無いですよ!チエさんの方が凄いですからね!斥候、開錠、接戦、弓術、魔法となんでもこなすじゃないですか!」

「いや、斥候と開錠とかはスキルの恩恵だし、接戦は足止め程度でしょ?弓はまぁそこそこ自信あるけど、魔法は本当に簡単なのだけだし…」

「そう言いますけど…、千恵さんは使い勝手のいい固有攻撃魔法を持ってますし…」

「あれはたまたま会得したもので、でも決定打に成るものじゃないからね…」

「まぁいいです…。でもうちの残りは力自慢三人ですから、チエさんの存在は本当に助かってるんですよ!」

「それは、まぁお互い様だね」


「仲良しだね」と優太は笑った。

「うん」文乃も仲の良さそうな二人を見て微笑んだ。


「ゆーたん!始まったです」とクーナは会場の方に視線を向ける。


 クーナの言葉にみんな会場に目を向けた。試合場にはランキング外の二つのモルドが対峙しており、審判の合図と共に激しい攻防を繰り広げた。


「あ、次もう、柚姉ちゃん達の試合みたいだよ」

「賭けが始められる時に、もう対戦の組み合わせ出てたよ。そうでないと賭けが成立しないしね…」と千恵が教える。


「これ、どうやったら勝ちです?」とクーナは優太に聞いた。


 優太は簡単に説明すると、その間に現在の試合は片方のモルドの壷が割られて決着してしまった。


「お、チーちゃん達出てきたね!」と千恵は声を上げる。

「チーちゃん大丈夫かなぁ」と文乃は心配そうな表情を浮べた。

「えー?大丈夫でしょー?負ける要素が無いし!」

「あ、いや、やり過ぎないか…」

「ああ、そっちね…」


 試合場で柚葉、エルメシア、チートベルベルグの三人は対戦相手のモルド、バグラッドの三名と向かい合っていた。審判による自陣決めで、位置換えを希望したバグラッドは柚葉達を観察するように眺めている。


「それでは、双方、開始線まで下がれ!」


 審判のその言葉で双方下がっていくが、バグラッドのメンバーは一人は壷手前、もう一人は一番前の仲間より少し下がり気味のポジションを取った。


 一方、ナポリタンは柚葉が壷の手前まで下がった以外、エルメシアとチートベルベルグが開始線ギリギリの位置に立つ。


「下がらんのか?」とチートベルベルグはエルメシアに聞いた。

「この位置で十分ですよ」

「そうか、好きにしろ」

「はい、そうします」


「それでは、試合開始!」と審判の声が響く。


 それと同時にチートベルベルグは楽しそうに対面のバグラッドの前衛を待ち構えたが、そんな事はお構い無しにエルメシアは弓に矢を番え、次々と放っていった。


「な…」とチートベルベルグは声を上げてエルメシアに視線を向ける。


 エルメシアの手は速射、連射と言える速さで、三名のバグラッドのメンバーを狙い撃ち、しかも地に落ちた矢は前回同様、妖精魔法でスルスルと矢筒に回収されて行く。

 先が削られているとは言え、銅製の鏃は当たれば動きを止めるには十分の威力と痛みが伴った。


「くそっ!いてっ!」と前衛のバグラッドのメンバーは次々と襲い来る矢に体をくの字に曲げて避けようとする。


「落ちた矢はへし折れ!きりがねぇぞ!」と後方の男は長方形のタワーシールドで半身を隠して指示を出すが「いてっ!」エルメシアは上下の揺さぶりを掛けて、開いた足に矢を当てていく。


「ちょ!待たぬかエルメシア!わらわの初陣なのだぞ!」とチートベルベルグは三人まとめて無力化するエルメシアに文句を言う。

「そうですね…。私の事は構わず、どうぞ好きに暴れてください」


「わー、エルさんすご…、あの距離なら恰好の的なのね…」と柚葉は剣と盾をダラリと下げたまま見つめた。


「ゆ、柚!」とチートベルベルグは頬を膨らませて、抗議の視線を柚葉に向ける。

「…え?いやだって、止めろとは言えないし…」


「おらー!」と声が響くとバグラッドの前衛が痛みに耐えながら強引にチートベルベルグに詰め寄り、木製の大剣を叩きつける「相手に近寄りゃいいんだよ!」


 チートベルベルグは右手に持つ木製の槍で、その攻撃を簡単になす。


「いいだろう、来い!」とチートベルベルグはニヤリとした。


 エルメシアはチラリとそちらに視線を向けると、チートベルベルグに対峙している男は除外する事にした。その分、後方に居る二人には攻撃が集中し、特に中間距離に居る男は悲惨だった。


 男の頭部に矢が放たれると、それはどうにか右腕で払い除けたが、がら空きの下半身に矢が2本命中し、痛みで咄嗟とっさに両手が伸びると右肩に矢が命中した。顔に近い位置に当てられた為、必死で両手で顔面を覆いながら背を向ける。この時には、すでに武器を手放し、うずくまって身を守るだけになっていた。

 最後方の男は盾を構えたまま、仲間を助けようと前進したが、エルメシアは5射に1射は盾を構えた男に上下に撃ち分けて牽制し足を止めさせる。


 そして蹲った男は最後にわき腹に2度当てられ、あまりの痛みにけ反り、首元の鈴の付いた首輪がヒラリと舞った。それをエルメシアはパキャと音を立てて華麗に矢を命中させる。


 チートベルベルグと対峙する男は、一時的に動きを止めて、そちらに視線を向けた。エルメシアは対象が一人になると、盾を持った男の頭部、下半身、後方の敵陣の壷に向けて矢を放って行く。対象の男は自陣の壷に対しての攻撃は盾でどうにか受けていたが、自身への攻撃は全ては守りきれずジリジリと後退しながら耐えるだけになっていた。


 この時点で誰がどう見ても勝敗は決していた。


「ちょ!待たんかエルメシア!わらわの初陣…」


「くそが!」とチートベルベルグに目の前の男は我武者羅に大剣を叩き付けてくる。


 チートベルベルグは男の攻撃を2度3度と槍で受けると、エルメシアと盾の男、相手陣内の壷、目の前の男に視線を向け、最後にはイライラが頂点に達した。


「あー、もう!煩わしいわ!」


 叫ぶようにそう言うとチートベルベルグは槍を手離し、右手で男の大剣をパシリと受け止めるとバキャと握り潰した。あまりの出来事に男は目を丸くしたが、チートベルベルグは構わず男の服を掴み、持ち上げるとそのまま相手陣内に投げつけた。

 投げられた男はクルクルと手裏剣のように回転しながら飛んでいき、盾を持った男に命中したが、それでも勢いは止まらず、後方の壷を巻き込むと闘技場の壁にぶつかってやっと止まった。


 観客はチートベルベルグの出鱈目な怪力に言葉を失い、静まり返っていた。


 エルメシアは黙ってそれを見ると、くるりとチートベルベルグの方を向き「お疲れ様ですベル」とだけ言い、嬉しそうに柚葉の元に向かった。


 チートベルベルグはその言葉を聞くと、プクッと頬を膨らませてエルメシアの後姿を睨み付けた。




「チーちゃん凄かったです!人が横にクルクル回って飛んだです!」


 試合が終わり、観客席にいる優太達と合流した柚葉達だったが、チートベルベルグは不機嫌だった。もっとも大興奮のクーナだけは嬉しそうに話しかけていた。


「あんなものは、わらわの本来の戦い方ではない…」


「まぁまぁ…、でもチーちゃんの凄さは伝わったと思うよ…」と柚葉は慰めた。

「うん!チーちゃん、凄かったよ!」と優太もフォローする。


「エルさんも凄かったです!矢がいっぱいだったです!」


 一瞬溜飲の下がったチートベルベルグだったが、クーナの言葉を聞いてまた不機嫌になった。


「えーっと、チエさんの言うとおり本当にお強いんですね」とモルターシャはその様子を見ながら言葉を選んだ。

「そうでしょー!おかげで儲かったー!」と千恵は嬉しそうにニヤリとした。


「チーちゃん、エルさんにはエルさんの戦い方があるんだし、それをどうこう言っても仕方が無いでしょ?」文乃は多少同情気味に語った「最初にその辺を話し合わなかったんだし…」


「まぁそうだな…」

「すいませんフミノ様…。私の所為で…」


「ほらほら、しょ気てないで美味しいものでも食べながら、観戦しよ!今日は私がおごっちゃうよ!」

「やったです!チエちゃんありがとです!」


 千恵はモルターシャと共に優太とクーナを連れて、会場の飲食物の販売エリアに向かった。残ったメンバーはしばらく黙って試合を観戦したが、まだランク外の試合なので、そう目に止まる程の展開は無い。


「下位の試合だとは解っておるが、大したヤツはおらぬな…」

「まぁねぇ…。でもチーちゃんを倒した勇者ってこの国の人でしょ?上位の人は、それに近いくらい強いかもしれないよ」柚葉はチラリとチートベルベルグに視線を向ける。

「ふむ…、確かにそう考えれば楽しめるな」


「でも、勇者って冒険者もやってたのかな?」と文乃は二人の会話を聞いて口にする。

「どうでしょうか?あとでチエさんに聞いてみましょう。ただ、勇者もいきなり勇者として扱われたのではなく、何かしらの実績を積み、実力を示したのだとは思いますが…」


「え?そうなの?勇者って神託とか、異世界から召喚されて認定されてるのかと思ってた…」

「え?それで実力が分かるのですか?」

「あー、そうだよね…?じゃあ、活躍してから勇者になるのかな?」


「それならユータはすぐに勇者だな!奴等は四人でわらわを打倒したが、ユータは一人でわらわを打ち負かしたからな!」


「いや、あのねチーちゃん…」柚葉は呆れ気味に言う「何か勘違いしてると思うけど、優は本当に強くないからね!」


「うん、優君の強さはひみつ道具にあるし…」と文乃も同意する。

「別に何も問題はなかろう!勇者たちも数々の魔法道具を使用していたし、道具は人が使うものだからな」


「そうだけど…、んー」と柚葉は顎に手を当てて考え込んだが「いやまぁそう考えたら、優は強いのかなぁ」と口にする。


「ユズハ様が仰りたいのは腕力とか気持ち的な部分ではないですか?ユータ様はお優しいですし…」エルメシアも試合から柚葉に視線を変えて聞いた。


「いや、エルさん、確かに優君は優しいし腕力も無いけど、気持ち的な部分で言うなら、結構強いんだよね」と文乃は訂正した。

「そうなのですか?」

「普段は私達…、と言うか周りに流されやすい部分もあるんだけど、大事な部分での決断は男性らしい部分もあるんだよね」

「うん、私もそう思う。私もお姉ちゃんもモンスターとか人を傷付ける事は難しいと思うけど、優は自分の中でそれが必要な行為として理解したなら、やると思う」


「ほう」とチートベルベルグは楽しそうに目を細めた。


「…小さい時、優を連れて遊びに出たんだけど、帰りに私、転んで足に怪我しちゃったんだよね。結構血が出てたから私、泣いちゃって、ヤバイ、優も泣くかな?って内心思ったんだけど、優は泣かなかったんだよね」

「へー」とエルメシアも興味深く聞いた。


「それどころか、優しく近くの公園まで手を引いてくれて、ベンチに私を座らせるとハンカチを濡らして傷口の周り拭いてくれて、「待っててね!」って走って家まで帰って優のお母さんの明子さん呼んで来てくれたんだよね」柚葉は懐かしむ様に語った「あの時気付いたんだけど、優は必要な場面では、ちゃんと男の子で、決断してるんだって…」


「うん、ただ、私が思うのはむやみに決断してる訳じゃなくて、その場面場面で、自分の出来る最善手をちゃんと選択してるんだよね。今の柚の話の場面だと、怪我をした場所で明子さんを呼びに行くんじゃ無くて、公園のベンチまで柚を連れて行って、呼びに行くとか…」


 エルメシアとチートベルベルグも文乃の話を話を聞いて、それぞれ優太の行動を思い返した。


「私を里に帰して頂いた時も、ユータ様は自分で決断していましたね」


「わらわを引き止める時も、ユータは意を決していたな!」とチートベルベルグは数日前の事を思い出すように目を閉じた「小さい身で魔王であるわらわに対峙するのは恐ろしいだろうに凛として立ち、思い返しても胸を焦がすほどの求愛であった!」


「いや、それは違う」と柚葉は真顔で言った。

「うん、勘違いだから…」と文乃は呆れ気味に言う。

「ふざけるのは、その怪力だけにしてくださいね」とエルメシアは辛辣に言い放った。


 その数日後、文乃と柚葉の言葉通り出来事が起きた。





#7


「ここから街道までの道を敷くんだよね?前にも言ってたけど…」


 柚葉はモルドハウスの前から、おそらく街道があるであろう方向に視線を向けた。それに釣られてチートベルベルグもそちらを向く。


「うん、道も何も無い所にポツンとモルドハウスだけあったら変でしょ?」

「いや、もうこんな所に建ててる時点で変だけど…」


「クーも行きたいです!」


 そう言ったクーナはシーナの小脇に抱えられて、不機嫌そうな表情を浮べて足をパタパタさせた。


「ダメです!お手伝いしなさい!」とシーナが嗜める。


「一応、危ない事があるかもしれないから、クーちゃんはお留守番してた方がいいよ」

「うん、その為に柚姉ちゃんとチーちゃんに来て貰うんだし」と優太も言う。

「行きたいです…」とクーナは文乃を見て、眉を八の字にした。

「クーちゃん、私とちゃんとお留守番出来るなら、美味しいアイスクリームあげるよ」

「アイスです!お留守番できるです!」


「ふむ、僅かながら道があるように見えるが…」チートベルベルグはそちらの方を向いて言う。

「それは多分、ルベルタリオス様が昔使っていた道だと思います」とシーナがクーナを降ろしながら答える。

「お爺ちゃんです!」それに対してクーナが嬉しそう言う。


「クーのお爺ちゃん、そんなに通ってないんじゃないの?」と優太が聞いた。

「そうですね。ですが、もともと私達が住んでいた家はシコウ山の鉱夫が使っていたもので、それをルベルタリオス様が買い上げて住んでいたと聞いています。ですから、昔は荷馬車が通れるほどの道があったそうです」

「へー、じゃあ、そっち方面に作ってく?」と柚葉は優太に聞いた。


 優太はほとんど見えない道に視線を向ける。


「うーん、もうほとんど道は無くなちゃってるし、最短距離で街道まで作ろうかな?」

「まぁその方が合理的だよね」と文乃は頷いた。


「森の中ですし、私も行きますか?」とエルメシアは心配そうに言う。

「いや、街道までの距離を確認するだけだから、私とチーちゃんだけで十分だよ」


「じゃあ、行こ」と優太は柚葉とチートベルベルグを促す。


 三人は柚葉を先頭に東に進路を取り森に入っていく。柚葉は鉈で進路上邪魔な草や枝を切り落とし、チートベルベルグは優太の横で周囲を警戒する。


「この近辺は、たいした魔物はおらんようだな…」

「そうだねぇ…。全然、気配ないし…。でも街道沿いは、それなりにゴブリンとか魔物出るってギルドで聞いたけど」

「クーのお爺ちゃんが、モンスターが来ないように魔法の道具埋めたって言ってたけど、この辺までは効果ないよね?」

「無いだろうな。それにそれもまぁ、どの程度の魔物に効果があるか、分からんが…」


 柚葉とチートベルベルグは、定期的に交代して道を切り開き、優太は方角を確認していく。


「チーちゃん、魔族領ってあの山、えっとシコウ山の向こう側なの?」と柚葉は聞いた。

「そうだな…」

「え?そんな近いの?」と優太か驚く。


 山を隔てて自分のいる国と魔族のいる国が隣接していると思うと、優太は少し恐ろしくなった。


「言葉にすると近く感じるが、シコウ山は裾野まで入れるとこの国より広大だぞ」

「あー、ここから見てもかなり高さがある山だよね」柚葉もシコウ山に視線を向ける。


「それにあそこは霊山として、どの国にも属しておらぬし、高所には竜が住まうから、並の実力では越境する事も難しいだろう」チートベルベルグはそう言い一度目を閉じた「まぁだが、勇者はあの山を越えて我が城に踏み込んだようだがな…」


「山を抜けるトンネルとか洞窟とか無いの?」と優太は聞いた。

「あるとは聞いている…。もっとももっと北寄りの魔族領とこの国の領地に近い戦火が激しい場所らしいが、かなり広大な地下迷宮があるらしい。幾つかの入り口の発見の報告を受けたが、通路として抜けられるかは別だな…」


「へー、お宝とかあるかな?」と柚葉が目を輝かせる。


「あるかもな…。古代ラタトマの神殿跡があったと報告で聞いたな。ラタトマの信者は大地を追われ、一部のドワーフの力を借りて、地下に移ったと聞いている。わらわはあそこがその場所だと推測しているが、現在は魔物の巣窟になっておるそうだ。ラタトマはシンボルに金を使っておるから、上手く探索すれば財を得られるかもしれん」


「おー!冒険できそう!いつか、みんなで探索に行きたいねぇー!」

「ふふ、そうだな!それも楽しいかもしれぬ」


「あ、開けた場所に出たね」優太は空が見上げられる程度の広さの場所を見渡した。

「ここに、休憩所みたいなの作れば?」と柚葉は提案する。

「うん、いいかも!」

「そんなもの必要なのか?」とチートベルベルグは不思議そうに聞いた。

「急に雨が降ってきたりしたら、休めるポイントになるでしょ?」と優太は答える。

「ああ、まぁわらわ達以外が使用するとなると、そういった場所も必要かもしれぬな」


「あ、でも道はどうするの?街道からいきなり綺麗に舗装された道が見えたら、知らない人がゾロゾロ来ちゃうって、前に話してたよね?」

「えっとね。街道から最初の100mは普通の土の道にして、そこからはアスファルトの馬車がすれ違えるくらいの道にする」

「歩道は?」

「付けるよ」

「わらわが王の時にユ-タが居たら、どれだけ助かっただろうか…」



「おいおい!マジかよ!ホントに居やがった!全く信じてなかったが、あの占い師のババァの言葉を信じて正解だったな!」


 突然、前方から若い男が現れたと思うと、ニヤニヤと笑いながらそう言った。


「…おい、わらわ達を探していたようだが、それはこの三人の中の誰の事を言っている?」

「もちろん、お前だよ!魔王チートベルベルグ!」


 その瞬間、チートベルベルグは一気に間合いを詰めて、手に持っていた鉈で男の下半身を吹き飛ばした。実際には鉈で太ももの辺りを切っただけだったのだが、彼女の圧倒的な腕力に因って振られた一撃は切断部分周辺ごと消し飛ばしてしまった。

 

 それにより、男は後方に吹き飛び、残された2本の脚部は周辺にクルクルと舞ってバサバサと落ちる。


「うわー、エグい…」と柚葉は顔をしかめる。

「うん…」と言ったが、優太は視線を外さず男を見ていた。


「うぎゃあ!いってー、クソが!俺の足を飛ばしやがって、ふざけんな!あー!」男はバタバタとのた打ち回りながら、両手で下半身の傷口を押さえた。


「わらわを狙う割りに、全くたいした事無い奴だな…」チートベルベルグは肩で鉈をトントンとしながら冷ややかな視線で男を見つめた。


「てっめー、ふざけんなよ!いってー、あー!クソ!ぜってー、ぶっ殺してやる!」どんどん痛覚が戻り始めた男は、痛みに涙を浮べながらチートベルベルグを睨み付けた。


「面白いやってみろ!だが、お前はもうここで終わるがな!」


「なんか変だ…」優太はチートベルベルグと男のやり取りを見ながら言った。

「え?何が?」

「なんであの人、下半身があんな状態なのにチーちゃんに強気なの?」

「あー、確かに…」

「僕なら痛くて、助けてごめんなさいって言うと思うし、あの状態でチーちゃんに攻撃的な事言うなんて、絶対何かあるよ!」優太は言いながら『四次元ポッケ』に手を入れて様子を見る。


「ちっくしょう…。クソが!」男はズルズルと後方の木まで体を寄せると寄りかかって自分の体を見た「あー、もうこの体はダメだな…」


(この体はダメ?)優太はその言葉の可能性から次々と対応するひみつ道具を選びなおす。


「ヤメだヤメだ!もういいよ。まぁ俺も初回から殺れるとは思ってなかったしな…。今回は勝ちを譲ってやるよ」と男はニヤニヤしながらチートベルベルグに言った。


「次があるような言い方だな…。わらわが逃がすと思うか!」


(初回、この体…)優太は何かに気付いたように顔を上げた「…一番めんどくさいヤツだ」


「…え?何かしらのスキル?」柚葉も気付いたように呟く。

「うん、多分、魂系だと思う」


 日本に居た頃から数多くのネコえもんのひみつ道具を調べてきた優太は、同等の力を有するであろうスキルに関しても理解力があり関心があった。


「次か…、あるとも言えるし無いとも言えるな…」男は言いながら目を閉じた。

「…何?」チートベルベルグは目を細めた。

「安心しろよ。この世界のお前たちは安全だ。ああ、この世界はな!」と男は目を開くと嬉しそうに笑った。

「この世界?」


「そうだ。俺のスキルは『セーブ&ロード』、と言ってもお前には分かんねーだろうな」と男は後ろの優太と柚葉に目を向ける「お前たち二人は日本人か?お前達ならわかんだろ?」


「ゲームのセーブとロードだよね?」と優太は柚葉より先に答えた。

「ああ、そうそう」

「それって、何個もセーブできるの?」


「あ?」男は幾つかの段階を超えた優太の言葉に違和感を覚えた「現実はゲームじゃねぇからな、残念ながらセーブできるポイントは1つだけだが、おれはロードと唱えるか死ぬかすると、自分が設定したセーブのポイントに戻る事が出来る」


「なに?」その言葉を聞いてチートベルベルグの表情が強張った。

「じゃあ何度もやり直せるって事?」と柚葉は聞いた。


「ああ、俺は何回負けても、死んでも、過去に戻ってやり直し、お前たちを狙う事が出来る!」

「ふん、何度やろうと、お前程度にはわらわが負けるとは思えんがな?」


「そうか?俺はそうは思わないね!今回はこのタイミングで出会ったが、過去に戻った俺には経験がある。次回は、そこの後ろのガキ二人を人質に取ってお前を無力化する事も出来るし、お前が勇者どもにやられた直後を狙えば、俺にだってチャンスはあるはずだ」


 その言葉を聞くと流石にチートベルベルグの表情が曇った。


「ねぇ、僕たちもスキル持ちだけど、お兄さんのスキルは少し違うね?」

「あん?ああ、お前らは転生者だろ?おれは召喚者だからな。西ベリビアの王家に召喚された三人のうちの一人だ。召喚者は召喚時にランダムに強力なスキルを一つ得られるんだよ」

「召喚されるのと転生するのだと違うんだね…」

「まぁこんな事を話したところで、この時間軸のお前達と会うのは最後だけどな!」

「こっちって、召喚されても来れるんだ…」と柚葉は驚く。


「ああ、クソ、目が霞んできやがった…。情報収集もここまでか、じゃあな!俺は過去に戻る」


 すぐに優太はチートベルベルグの腕を掴むと『タンマ時計』を押した。瞬間、時が止まり、その状況を見て、チートベルベルグはキョロキョロとした。


「これは…」

「チーちゃん、来て!」

「来てとは?優太、これは?」

「これは、今僕が時間を止めた状態だよ」

「そ、そうか…」


「チーちゃん、あの人のスキルの意味は分かった?」

「ああ、だが、流石にアレはどうしようもないぞ。わらわのスキルは直接的にわらわに降り掛かるのならば発動するが、個人を中心に発動するなら効果は無い」

「大丈夫!あらゆる時間に関する能力なら、ネコえもんのひみつ道具は無敵だから!」

「そ、そうなのか?」


「うん!」と優太は言うとチートベルベルグを見つめた「チーちゃん、僕はチーちゃんの事は大好きだし、例えこの時間軸のチーちゃんが大丈夫でも、別の時間軸、平行世界、多元世界、過去、あらゆる世界のチーちゃんとか文お姉ちゃんや柚姉ちゃんがあんな人に負けるなんて絶対に嫌だ!」


 優太の強い言葉を聞くとチートベルベルグは目を見開いた。そして嬉しそうに微笑んだ。


「ああ、優太!わらわもだ!」とチートベルベルグは優しく優太の頭を撫でた「だがどうするのだ?あヤツに死は無いぞ」


「まず最初の部分で話すと『セーブ&ロード』は結局、魂だけを過去の体に戻して知識を蓄えて、最善の行動を起こす為のスキルって言うのは解る?」

「ああ」


「魂回帰は人をポイントにしたり、物、場所をポイントにして、自分が死んだりすると戻れる能力はよく聞くけど、この人の『セーブ&ロード』は自分で好きな場所にポイントを決められて、死ななくても自分のタイミングでポイントに戻れる部分は使い勝手がいいみたいだね」

「そうだな…」

「まぁ複数セーブが出来たら、もっと面倒くさかったけど、この能力なら大丈夫!」

「そうなのか?」

「うん、まずはあの人のセーブポイントを探そう!『トリセツスキャナー』で情報を読んでもいいんだけど、今回は『お化けサーチ』で魂を追跡するね!」

「そんな事が出来るのか!」

「うん、じゃあ、時間を動かすよ!」


 再び『タンマ時計』を押すと、優太はチートベルベルグの手を引いて下がった。


「じゃあな!ロード!」と男は叫んだ。


「柚姉ちゃん、ここで待ってて!僕、チーちゃんとあの人を倒してくる!」

「え?う、うん、って倒せるの?」


 優太は『四次元ポッケ』から花形のネコみちゃん巨大な『タイムマシン』を取り出した。


「こ、これは…」とチートベルベルグはその巨大なタイムマシンを見て目を丸くする。


「えっと、この虫でいいかな?」と優太は地球では見た事無いバッタの様な虫を捕まえた。

「ユータ、急がなくていいのか?」

「大丈夫、『お化けサーチ』は起動してるし、魂が抜けたら分かるから!実際、本人には一瞬で魂が過去に戻ったと思えるかもしれないけど、本当は体から魂が抜けて時空間を遡って体に戻ってるんだよ」優太は、マイクの様な装置の付いた道具を男の死体の方に向けたまま言う。


「そうなのか?」

「うん、物だろうが人だろうが魂だろうが、時間軸に干渉して行き来する為には、必ず時空間を通る事になるよ」

「必ずなのか?」

「そう、時間軸に存在している時点で、時間に捕らわれた存在だからね。もし、それに捕らわれない存在が居たとしても、時間軸に縛られてる僕たちには干渉できないよ。した時点で時間軸に捕らわれた存在になるからね」

「なるほど…」


「あ、反応があった!チーちゃん乗って乗って!」と優太はチートベルベルグをすでに時空間に浮かんでいるタイムマシンに押し込んだ。

「分かったから、押すで無いわ!」

「じゃあ、柚姉ちゃん行ってくるね!」


「あ、うん、でもこんな所で死体と残されるのも、なんか微妙なんだけど…」


「こ、これは不思議な空間だな…」

「うん、ここからは『時間センサー』で追跡しよう!これは時空間で無くした物を探す道具なんだけど、時空間のような超空間では何かが移動しただけで、何かしらの波動が生まれるのね!この道具はそれをキャッチして探し出してくれるの!」

「それは魂であっても可能なのか?」

「うん、時空間内では質量とかあまり関係ないから!」


 優太は勝手が分かってるかのようにタイムマシンを操作すると、男の魂の追跡を始めた。


「何も見えぬが追えているのか?」

「大丈夫だけど、『お化けサーチ』の反応が無くなったから、魂は過去の体に戻ったみたいだよ。でも『時間センサー』で追跡は出来てるし、ネコみちゃんのタイムマシンの方が高性能だから!」

「ふむ、戻った時点でヤツは、復讐を開始するのではないのか?」


「そうだけど大丈夫!」と優太はタイムマシンの計器の数字を眺めた「えっと、地球時間で8日と13時間43分21秒前戻ったみたいだね」


「そこが、ヤツのセーブポイントなのか?」

「うん」

「なら行くか!」

「いや、僕たちはもうちょっと過去に戻ろう」

「何故だ?」

「あの人の過去を改変する為だよ」

「む?」


 言いながら優太はさらに過去にタイムマシンを戻すと、そこでチートベルベルグに説明した。


「この時空間を抜けると、あの人がセーブする2分前の時間に出るよ」

「この時間でヤツを殺すのか?」

「ううん、それはダメだよ。それをしてもあの人は1つ前にしたセーブポイントに戻るだけだから」

「確かにそうだな…」

「僕たちが狙うのは、セーブした瞬間だよ」

「ああ、なるほどな!」

「チーちゃん、『石ころころ帽子』を渡すから、被ってから時空間を抜けて、それで僕が『Go』と言ったら、あの人を殺して」

「了解したユータ!」


 チートベルベルグが了承すると、優太は『石ころころ帽子』を手渡し、同様に自分も被った。そして二人で時空間を抜けると、そこは何処かの宿屋の一室だった。


 時空間は二人が抜けると一時的に閉じ、チートベルベルグはすぐに周囲の状況を確認した。目的の男はベッドですでに体を横たえて目を閉じてはいたが、寝てはいないようだ。


 優太とチートベルベルグお互い挟み込むようにベッドの両脇に立つと準備をした。優太は先ほど捕まえた虫と棒状のひみつ道具を取り出し、チートベルベルグは漆黒の巨大な斧を取り出すが、『石ころころ帽子』により、男は認識する事すら出来ない。


「ふふ、よし、次に狙うのは魔王チートベルベルグだ!」この時点で次点のセーブポイント前の男はそう言うとニヤリと笑った「セーブ!」


 その言葉を聞いた瞬間、優太は『トリカエバー』を男と手に持った虫に押し付け、魂の入れ替えを行った。


「チーちゃん、Go!」と優太は声を上げる。


 優太の合図を聞くとチートベルベルグは巨大な斧を男に叩きつけた。斧は男をぐちゃぐちゃにしてベッドに沈め、シーツとベッドと肉片で出来た一つのオブジェにしてしまった。


「やったな優太!これでヤツは何度蘇えろうと、蘇った瞬間に死ぬ運命にある!」

「ううん、まだ生きてるよチーちゃん」

「なに?」


「ここに」と優太は一匹の虫を見せた「セーブした瞬間、虫とこの人の魂を入れ替えたの」


「む?何故、そんな事を?」

「魂を殺すためかな?」

「ほう…」とチートベルベルグは口角を吊り上げて笑みを浮かべた。


「さてと…」と優太は虫を摘んで自分の顔の前に寄せ「僕の事が分かるかな?虫が人の言葉を解るか分からないし、この時点で僕達の記憶があるかは分からないけど、挑んだ相手が悪かったね」と言った。


「キチキチ」と虫は何か言いたげに顎口を動かす。


 それが虫による言葉なのか、ただの体音なのかは解らないが優太は続けた。


「それで、どうするの?ここでセーブしてみる。その場合はロードしても一生、虫のままの生活だよね?それとも、ロードしてやり直してみる?ロードして約1秒後に魂が入れ替えられて、その何秒後にはチーちゃんによって体をあんな風に壊されるけど…」と優太は虫を無残な死体の方に向ける。


「なるほどな…」とチートベルベルグは意味を理解して笑う。


「もちろん何十、何百、何千とやれば、ロードした瞬間、魂の入れ替えを回避出来る可能性もあるし、その後のチーちゃんの攻撃をかわして、この場から脱げ出せる可能性もあるかもしれないけど…」続ける優太は冷ややかな声で言った「僕には『タイムマシン』があるし『取り寄せハンドバッグ』『どこでも扉』もあるから、何度でもやり直して、これよりもっと難しい状況に落とす事もできるし、捕まえる事もできるから、絶対に逃がさない自信があるよ」


「終わったな」チートベルベルグは勝利を確信した。


「殺さないから、この先は自分で選んでいいよ」優太はそう言うと優しく床に虫を降ろした。

「殺さなくていいのか?」とチートベルベルグは聞いた。

「殺しても、すぐに過去に戻って体を入れ替えられて虫になったら、チーちゃんに体を壊されるのを見る事になるだけだし、虫になってセーブするなら、その先は虫になって生きていくからチーちゃんを狙うなんて無理だしね」


「永遠に殺されるか、虫としての新たな生き方を探すか選ばせてやるのか…。なかなかに残酷だなユータ」

「僕、人殺しとかしたくないし…」

「そうか、そうだな。なら帰るか!」

「うん」


 優太はタイムマシンで設定した時空間のポイントを開いた。


「先に行くぞ」とチートベルベルグは時空間の入り口を抜け、先にタイムマシンに乗り込む。


 優太も続いて、時空間のタイムマシンの入り口に手を掛けたが、一度振り返った。


「あのね…。ネコえもんって過去を変えるお話なんだよ。知ってた?」

■あとがき


お久しぶりです!約1年ぶりの投稿になりました。まぁいろいろとありましたが、活動報告の方にも愚痴ぽく書いているので、こちらには書きません…。


さて、今回は前回加わった新メンバーを中心とした話ですね。基本的に、その物語の世界観を描きたい人なので、マッサージの話なども入れています。あとは2回目の闘技会、モルドハウスでまったりする話などを中心としていますね。

戦闘系の話しですが、基本的に広範囲魔法をバーンとかビームみたいなの撃ち合いとか、キンキンキンキン倒したみたいな表現はあんまりしたくないので、読んだ方がその場面は想像しやすい表現で、『できるだけ』戦闘シーンを描かないで進行させたいと思っています。


ただ、描いた時は、読んだ方がちょっとカッコいいかもとか、面白いとか、なるほどとか思っていただけるといいなと思って描いています。


次回は、今回の最後の話の続きからとなっています。名前の出てこなかったあの男の結末はまだ終わっていません。あの部分はいろいろな意見が有ると思います。今回の部分だけだと、優太性格変わった?と捉える部分もあると思いますが、次回を読むとやっぱ優太だ!みたいな感じに纏めています。


他に次回は、日常的な部分を少し大目と物語の基本的な部分が動いたり、この物語のラストに関わる話が入る予定です。


感想、誤字報告ありがとうございます!


それでは投稿された際には、またよろしくお願いします!


それでは、また!

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― 新着の感想 ―
[良い点] 優太… 恐ろしい子! [気になる点] 能力を説明しないと使えない誓約でも付けてんのかと思うほどに、敵に対してペラペラ喋るまくるところ
[良い点] 楽しみに待ってた! [気になる点] 話忘れてしまってたのでまた全部読み直してしまった。 優太の口調以外は文章も読みやすいのでストレスはなく、やはり楽しい。 優太もキャラとしての口調なので、…
[一言] クソつまんない
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