〜スライムを倒そう? 後編〜
庭に着くと、そこには情報通り一匹スライムがいた。
「本当に一匹…よね」
「本当に一匹…だな」
「本当に一匹…ですねぇ」
裏切られることを若干期待していた三人は若干残念な気持ちになっていた。そんな時、依頼主と思われる人が家から出てきた。
「あ、こんにちは。俺達はここのクエストを受けた者です」
「あら、あなた達がそうなの?」
「はい、依頼はこのスライム一体でいいんですか?」
「そうなの。ただのスライムなら倒せばいいんだけど、この子はなんだか気味が悪くて」
「気味が悪い、ですかぁ?」
三人で丁寧に話を進める。こなせなくても依頼自体ははいつも受けているため、ここの手際だけは良いのである。
「なんだか、人の言葉を喋っているのよ」
「人の言葉?スライムが、ですか?」
スライムは知性的に見て人の言葉は話せないはずである。
「武器を向けると『え、やめてくんない?』って聞こえるのよ」
「それは不思議ですねぇ」
「まあ、とりあえず近付いてみれば何か分かるんじゃないか?」
「それもそうね。では、行きましょうか」
三人でスライムを囲いながらジリジリと距離を詰めていく……すると。
「三人で囲まれたわー。どうしよっかなー」
「「「しゃ、喋った……」」」
「……ん?ああそうか、オレが珍しいのか。といってもオレは突然変異?かなんかで喋れるほどの知能を手に入れただけのただのスライムだけどな!」
「聞き間違え…じゃないよな?」
「ええ、ちゃんと聞こえているわ」
「はっきり喋ってますねぇ」
「ああ、喋ってるよ。で、オレを倒すつもりなのか?それなら抵抗するぞ?」
「喋るスライムとは確かに気味が悪いが……まあ、庭をどかない以上、俺達はお前を倒すしか「かわいい!ねえ、クー!この子飼いたい!」……まあ、そうなるか」
「いいですねぇ、喋るスライム。とても可愛い」
「お、オレ意外と人気じゃん!うーん、分かったぜ。
お前たちがエサをくれるならここをどいて飼われてやってもいいぜ?」
「クー、いいよね?飼おうよ、ね?というか、飼うわよ!」
「…………分かったよ」
この状態のリリエラに抵抗するのは時間の無駄であるというのは、クーが最近悟ったことだ。仕方なくバッグから非常食を取り出し、スライムに渡す。
「ヘヘ、ありがとよ。そして、これからも頼むぜ?」
交渉成立。喋るスライムは仲間になった。