〜スライムを倒そう 前編〜
スライム。体の多くが水分で構成された、ゲル状のモンスターである。にも関わらず、なぜか知能があり、初級魔法程度なら使える個体もいるというのは有名な話である。
基本的にはおだやかな性格で、危害を与えたりしなけれは襲ってくることもないため見かけても放っておくことが殆どだが、主食が土壌の栄養だということ、そのために近くで育てていた作物が枯れること、食事中は気が立っており近づくと襲われることがあるため、畑などに出たときには討伐される場合がある。
戦闘能力としては低く、魔法を使える個体であっても屈強な村人なら倒せてしまえるため、依頼が出ることは少なく、依頼が出たとしても相場は3銅貨ぐらいである。炊き麦と豆のスープのセットが2銅貨と考えると少ないというほどではないように見えるが、ゴブリン討伐の相場が15銅貨なので、破格に少ないといえるだろう。
一方で道中。彼らはスライムトークに花を咲かせていた。と言っても、
「スライムかぁ。強くはないけど気持ちわ「スライム
ですかぁ。畑とかでたまに見ますよぉ。可愛いです
よねぇ」
「ん?スライムってそんなに可愛「何か、妙にドロドロした感じが可愛いのよねぇ。見かけるとつい触っちゃうの」
「いや、あんな気持ち悪いのわざわざ触「あぁ、分かります。ブニブニでひんやりしてて癖になっちゃいますよねぇ」
「あれはずっと触ってられるわね」
「長く触ってるとかぶれるじゃねぇか」
「………」
「………」
「………」
「…スライムって可愛いですよねぇ」
「ねー」
「誰か話を聞いてくれ」
盛り上がっているのは女性陣だけだったが。
「というわけで、着きましたねぇ」
依頼の紙を手に道を進んでいたライが1つの家の前で歩みを止めた。
「まあ、普通の家だな」
「てっきり成績が振るわない冒険者を救済する目的で
依頼したお金持ちとかかと思ったのだけれど、そう
いうわけでもなさそうね。相場を知らないだけかし
ら?」
「このご時世に依頼の相場を知らないことがあるか?
街を歩けばポスターだっていくらでもあるのに」
「相場の2倍ですしねぇ。もしかしたら何か理由があ
るのかもしれませんねぇ」
「理由か…。強い魔法を覚えているとかか?」
「スライムの知能の限界で覚えられる魔法は限られて
るんじゃなかったかしら?何かの本で読んだわよ」
「ほら、何か規格外の知能みたいなのでさ」
「そんなことが起こり得るかしら?やっぱりただ相場
を知らないだけじゃない?…もしくは急を要すると
か」
「なるほど、それはありそうだな。早く倒してもらう
ために報酬を高くして目を引こうということか」
「でも、そう考えると急ぐ理由が気になるわね?」
「確かにな。……ライはどう思う?」
「まあ、聞いてみれはいいんじゃないですかねぇ?相
場を知らないだけだったら教えてあげればいいです
し」
「まあ、それが一番早いか」
「それもそうね。とりあえず中に入りましょうか」
そんな会話をしながら、一同は家の中へと入っていった。