〜反省会〜
結局、ゴブリンたちは村常駐の戦士に追い払ってもらった。
場所は変わって集会所。ここでは、冒険者同士で情報を交換したり、パーティを組んで冒険に行ったりしている。その一角、4人席の3人で陣取りしているのが、先ほどの少年少女たちである。
「何であんな依頼受けたのよっ!死ぬかと思ったじゃない!」軽装の少女、リリエラは、手に持ったステッキで目の前の少年を指し示そうとしている。
「いや、誰でもいけるって言われたからさぁ…」袋を背負っていた少年、クーは、その袋を机の上に置くことで盾とし、少女のステッキを避けようとしている。
「まあ、その『誰でも』っていうのに私達が含まれてるかっていう話ですけどねぇ」ローブの少女、ライは、その光景を眺めつつ、手持ちのカードの整理をしている。
「そうよ!普通のパーティとは違うの!あんた達、自分のジョブをもう一度言ってみなさいよ!」
「罠師」
「占術師ですよぉ」
「そして私が奇術師!これでどうやってゴブリン倒せっていうのよっ!」
「一応トラバサミは仕掛けたけど、誰も踏んでくれなかったんだよ」
「当たり前じゃない!あんな隠されてない見え見えの罠、どんなバカでも踏まないわっ!」
「私も占ってみたんですけど、今回の依頼は失敗するって出てましたぁ」
「じゃあ言いなさいよっ!おかげで命からがらよっ!」
クーとライは顔を見合わせる。そして、
「何か、今日のリリエラは厳しいなー」
「私達だって頑張ったんだから、もうちょっと労ってくれてもいいと思うんですけどねぇ」
「あぁぁぁぁぁぁぁぁっ!『私達』って何っ!そこで結託しないでっ!」
「大体、リリエラこそ今日何したっていうんだよ。逃げ帰っただけじゃねぇか」
リリエラは言葉に詰まった。たしかにそのとおりであったからだ。しかし彼女は諦めない。
「うっ…私は、そうよ!私は花を出したわ!」
「「……」」
「あら、見てなかったの?私のステッキから花が発射され、驚きと恐怖に歪むゴブリンの顔を!」
「むしろ喜んでただろ」
「なんなら出た花持ち帰ってましたからねぇ、ゴブリン達」
リリエラはしばらく黙り込んだ。ライは飽きたのか席を立ち、集会所に張り出された依頼を物色し始めた。
リリエラはようやく口を開いた。
「…私達って、本当にポンコツなのね」
「今更言うことか?」
とある目的を持ってパーティを組んだ3人ではあるが、パーティ結成後、1つの依頼も達成できないでいた。冒険者にとって依頼とは、経験を積む機会というだけでなく、生活費を稼ぐ手段でもあり、依頼が達成できないということは、冒険者としてお金が稼げていないということである。そのため、冒険者として生活する以上、依頼をこなさないことはとても難しい。事実、このパーティは今、金銭不足に悩まされていた。
「リリエラ、クー、こんなものを見つけたんですけどぉ」
依頼を物色していたライが、1枚の紙を手に話しかける。
「報酬が少なすぎて誰もやらないから残ってたと思うのですが、今の私達には丁度いいんじゃないですかねぇ?」
「へぇ、簡単なのか?」クーは依頼内容を確認する。
「どんなのかしら!」リリエラもそれを覗き込んだ。
「ええ、とても簡単です。この世で一番かもしれないですねぇ」
「「これは…」」
クーとリリエラはその依頼内容に言葉を失った。
「これを受けるのか…?」
「むしろこの上ない適任だと思うんですよぉ、私達」
「…ええ、確かにそうね。でも、流石にふざけてないかしら?」
「さっき、なんかの間違いかと思って受付に確認とったんですけど、全くこのとおりでしたぁ。」
3人の間に沈黙が流れる
「さあ、受けましょう…」ライが口を開く。
「ああ、受けるか…」クーしぶしぶも続く。
「もう、受けるしかないか…」リリエラも諦めたように続く。
「「「庭先のスライムをどうにかして(1体)」」」