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小さな君と小さな小さな僕ら  作者: 水瀬誠人
3/5

1度目の年末2

疲れ切って椅子に座って夢中になって話しこけていたら時計の針が年が変わってから1時間経ったことを主張していた。

「もう、年が変わってしもうたんか。」

「だから、さっきから携帯の通知がうるさかったんか。」

そう言われてみれば、俺の携帯もうるさかったが、気がつけばこの夜と同じで静まっていた。

「この時間にこれ以上騒いだら迷惑になりますし、どこか屋内にでも行きましょうか。」

「そうはいうても椿どっかあてはあるんか?」

「いや、ここ一帯知らないですしあのホールくらいしか思い浮かびませんね。」

「それなら、私の家はどう?」

「俺達はいいけど、親御さん達がいくらなんでもダメでしょ?」

「任せて、説得してみるわ!」

さすがに家はと思いやんわりと断ったつもりだったのだが、どうやら逆効果みたいだ。困った俺は皆に助けを求めたが、まぁいいんじゃないですかと言いたげな椿の顔を見て、折れることにした。

「じゃあ、柚葉案内は任せた。」

「うん、任して和くん!でもすぐ近くなんだけどね。」

公園から出て五分ほど歩いた所に柚葉の家はあった。その道には枯木が並び続けていた、桜が植えられてあるらしく、花見によく使われるがいかんせん狭いので、場所取りは熾烈らしい。ここで花見をいつかしたいなと言った時に柚葉の顔が曇った気がしたのは気のせいなんだろう。柚葉の笑顔は曇りなんかない快晴なのだから。

「ちょっとまっててね、お母さんと相談してくる。」

そう言い残した柚葉が俺達に姿を見せたのはほんの3分も経ってないくらいだった。

「お母さんが、いつまでもいてくれてもいいってさ、ほら和くん速く速く。」

「さすがに、いつまでもはいれないけどね。お邪魔します。」

「柚葉ちゃんありがとね、おじゃっしー。」

「えっと、お邪魔します。」

二階建ての一軒家で2階が寝室らしく、1回の和室で友達と過ごしているらしい。和室は文也の家にもあって俺達がいつも過ごしている場所だから、初めて行く家なのに、妙な安心感があった。

「なんか、文也の家の和室に空気が似てるね。」

「それは僕も思いましたよ。」

「あら、大きなお客さまね。」

「あ、すいませんお邪魔してます。」

「いえいえ、そんなわざわざ立って挨拶しなくても大丈夫ですよ。柚葉が大事なお友達と珍しく言うので椎名ちゃんかと思っただけですから。」

椎名ちゃんというのは、恐らく柚葉がいつも遊んでいる友達の名前だろう。それにしても柚葉のお母さんにしては、落ち着いた雰囲気の人だが目が赤いのは眠くて目を擦ったからだろうか。

「ごめんね、私ちょっと遊び道具取ってくるよ。」

そう言って出ていった柚葉の姿を見届けたら妙な気まづさが出てくる。

「えーと、貴方達は高校生なんですか?」

「あ、そうです。全員高校1年生です。」

「なるほど。」

そしてまた沈黙、なんか居た堪れない気持ちになってくる。こういう時は文也、お前しかいない!文也の方を見るも新しい場所を知れたのが嬉しいのか、小躍りをしている。こいつに期待してもだめだな。

俺たちの沈黙と重い空気を打ち破ったのは、やはり柚葉だった。

「人生ゲーム持ってきたから皆でやろー!」

人生ゲームをやるのなんて本当に久しぶりだな、最後にしたのは児童館で4人でした時だったかな。あの時は誰が勝ったんだたかな。あれ?4人?あと一人は誰だったかな。いくら思い出そうとしても思い出すことなんて出来なかった。今回の人生ゲームの結果は文也の圧倒的勝利だった。人生ゲームが終わった後は話し込むただただ話し込む。柚葉の知らない懐かしい話を教えてあげたり、俺たちの知らない柚葉の話をしてもらった。気が付けば、時計は6時を示していて俺達は自分達の家に戻る時間へとなっていた。

「柚葉、そろそろ俺達は家に帰るな。」

「じゃあ、来年の今日も会えるかな?」

「今日じゃなくて、来年の昨日だけどね。それでもいいならいいよ。」

文也が無邪気な笑顔を見せる。

「今年の昨日ですよ、それを言うなら。来年に昨日はないですよ。」

「それもそうか。」

文也は大きく笑う。それに釣られて俺達は笑う。もうその顔に帰ると言った時の悲しい顔来年も会えるかと言った時の不安な表情の面影はどこにもなかった。

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