四十八話 一月二十七日
一月二十七日
燃えていた。女の死体が燃えていた。若者は呆然としてその光景に釘付けになっていた。地引はそれを見て、これでいいのだ、と自分に言い聞かせていた。
山頂付近に設けられた焚き火のスペースは、今や死体を焼くために使われていた。
風は強く、火は大きく上がっていた。薪がぱちぱちとはぜて、肉の焼ける臭いが地引の嗅覚を刺激した。
極寒だったが、雪は積もっていなかった。日中の日差しで、すべて溶けてしまったようだ。そのせいかあたりはどこか寂しさを含んでいるように感じた。
「どうして?」
若者はぽつりと一言言った。地引はそれに答える。
「こうするべきなんだ。こうするのが、彼女にとっての幸せなんだ」
若者はゆっくりと地引に向くと、彼を燃えるように睨んだ。
「私は悩んだよ。このようなことは初めてだったからな。君はあの子を殺したんだろう?」
若者は口をぱくぱくと動かした。声が上手く出ないらしい。
「君は私が憎いだろう。だが、君は私に復讐することは多分出来ない。私は守られている。政財界に知り合いが多いものでね。君には申し訳ないが、この子のことは忘れるんだ」
若者は何も言わない。あまりのことに、絶句しているのだろう。
しばらくすると、若者は黙ったまま、そこを去っていった。その後姿は悲しみに満ちていた。地引は「これでいいのだ」と呟いた。




