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黒羽教室  作者: ちくわ
第一章 全日本大学
1/3

1話 よろしく、そしてさよなら

「皆さんこの度は入学おめでとうございます」


そんな声が会場に響いた。

ここは全日本大学、日本海上に出来た小さな島にその学校が建てられている。

いわく学校次第で人生をも左右させる。

いわく学校は例年入学率はどの学校よりも高く卒業率はどの学校よりも低い。

この学校については現在の総理大臣、菅野(かんの)正志(まさし)が設立した事から始まる。

数年前から設立された全日本大学は設立当初からも評判が良い。

卒業したものは人生の成功を認められる。

そんな噂も後を立たなかった。

卒業生にはプロスポーツ選手や世界記録を樹立する人材など様々だが、"人生の成功"が本当の意味で認められているのだ。

盛大な拍手の後にこの学校の入学式は終了した。

指定された教室に向かう途中、廊下でケンカをしている生徒を見つけたが、それはスルーした。

一年青クラスと書かれた教室に入り、空いていた窓側の席に座る。

教室内では、読書や音楽を聴いている人など様々だったが、このクラスではもうなん組かのグループが出来ている様子だった。


「それではまず自己紹介から、俺はこのクラスの担任教師である赤井あかいだ。よろしく」


赤井と名乗った教師は慣れたようにスピーチを重ねた。

以外に歳も行ってないせいか女子からの質問が多い。

「次の授業は筆箱だけでいい」と最後に言い残して教室を出ていく。

小休憩、クラスの皆は自分の高校の話やゲームの話などで盛り上がっていると、後ろから声がかかった。


「君は皆と話すのは苦手なタイプよね」


「…まぁ」


見た目からして整った風格をもつその生徒は顔を近づけて耳打ちした。

最初は何を言っていたかわからなかったが、だんだんと意味がわかってくる。


「テスト?」


「ええ、この際あなたには伝えようと思って」


「なぜ俺に」


「なんとなく目の前にいたからよ」


「なんとなく…」


彼女にとっては自分にそんな情報を教えてもメリットはない。

ただ目の前にいたから、それと自分が一人だったから。

彼女の情報からするとこの小休憩が終わった後に抜き打ちのテストがあるらしい。

それも設立した当初からずっと同じ時期に。

まずなんでこいつがそんな情報をもっているのか怪しいが…

キーンコーンカーンコーンッ

チャイムが鳴って教室にはさっきまでの騒いだ様子は無く、静けさが訪れた。

そんな静寂が続く事数分、担任の赤井が入って来た。


「突然だが今から抜き打ちテストを開始する」


「「「「え?」」」」


全員が同じタイミングで疑問を抱えた。

本当にテストが開始するのかよ。

後ろにいる彼女はとっとと準備を初めているが、彼女の言うとうり一時間目がテストとなった。

しかたないな。

切り替えてテストに集中する事50分。

チャイムの音と共にテストは終了した。

内容はそんなには難しくなかった。

二学期の高校の期末テストの内容とほぼ同じであったからだ。

このテストになんの意味があるんだ。

まぁ疑問に思ってるのは俺だけじゃなくて皆もだから次の時間に意地でも質問するやついるだろーな。

次の時間は総合学習。

教科書やノートの配分、これからの事などを話し合う時間だ。

次はチャイムが鳴るより先に赤井が入って来ると、両手にはなにやら壮絶な量のプリント類が積み重ねられていた。


「よし、ちょっと早いが始めるぞ」


少し早く始まった総合学習。

先生が一言目を呟こうとした瞬間に一人の生徒が手を上げた。


「先生、先程のテストはどういうことですか?」


「そうだそうだ、抜き打ちなんて聞いてなかったぞ」


生徒は一斉に不満をぶつけていると、赤井は生徒に背を向けてチョークを握った。

書いていった文字を目で追っていく生徒達。

やがて、全て書き終えると

チョークを置いてこちらを振り向いた。


「さっきのテストはお前らにどれぐらいの知能があるかを測ったが…やはり今年はーーーー」


生徒は目を大きく開けて次の言葉が聞き間違えかと錯覚してしまった。


「ーーーーーバカばっかりだな」


なにかの聞き間違えだろうか。

そんな言葉が頭の中を旋回する。

赤井は再びチョーク握ると、黒板に書いてあるこのクラス全員の名前。

そこに区切りをつけるかのように一本の線を引いた。


「この線より下は明日からもう学校来る資格は無い」


「なっ、ちょっと待てよ!それはどういう事だ!」


席を立ち上がったその生徒は線よりも下にいる三人の中に自分の名前が入っている事に気がついた。

赤井はそれを上から、まるで醜い子を見るような顔で、


「聞こえなかったのか?退学と言うことだ」


「「「「っ~~~~~~~~」」」」


その場にいた全員が言葉を失った。

そして、自分達はこの学校の恐怖に顔を歪めたのだった。


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