3.尋問
「さて、じゃあ尋問の続きとしましょうか」
「ぽにゅ~、酷いぽみゅる!プニュが何したっていうぷにゅ!」
学校が終わると沙耶に今日は真っ直ぐ帰れと言われたのもあって寄り道せずに家まで帰り、怪生物Xを押し入れから出して口の部分のガムテープを剥してあげた。
なのに怪生物Xは口が自由になると同時に文句を言ってくる。
私の善意で生かしてあげてるていうのにまったく、今の立場というものを理解出来てないってのは困りものね。
「アンタがこれを私に持たしたりしたからあんな目に合う破目になったんでしょ。むしろまだ命があるのを感謝して欲しいわ。こっちは動物園なり研究所なりに新種の生き物とか言って売ってもいいんだから」
「ぷ、ぷいっ!?」
まぁ実際にそれするとしたらどうしたらいいかなんて知らないから無理だけど。
アレって直接実物を持ち込んで交渉するのかな?それとも予め何か書類でも提出?
なんにしろ、下手したらマスコミ絡みとかでとんでもない事になりそうだから知ってても廃棄物ルート一直線確定だけど。
「じゃ、続きね。まずはアンタとその関係者とかについて喋って。あの紅い娘と変態の言葉からして他にもいるんでしょ」
「ぷ、ぷにゅ。プミュ達はこっちの世界とは別の世界にある聖ハピネル王国の四方守護獣なんだみょ。プミュ達守護獣は平和に暮らしてた王国に攻めてきたダラーク帝国に対抗するために、伝説の《四色の魔法使い》達の魂を継いでいる人を探してたんだみゅ」
「その伝説の魔法使いってのはそっちの世界の人?だったんでしょ。なのになんでこっちに出張って来るのよ」
「魂はどの世界でも最終的には一つに集められて、そこからまた幾つもの世界へ分配されるんだみゅ。だからプミュ達の世界で亡くなっても、同じ魂がプミュ達の世界に留まる訳じゃないんだみゅる」
「へぇ。で、アンタ達はその再分配された魂をどうやって当たりをつけてこっちに来たわけ?」
「それはプミュが渡した秘石の力みょ。秘石は主も元へ辿りつくために道を示すんだみょ。それにしたがってプミュ達は転生者を探してたんだみゅ。秘石の示す範囲でマカの多い人を探してたみょよ」
「………………」
つまり、あの日いつも通りにしててもいつかは怪生物Xが突如現れて下手すれば衆人環視であのコスプレをさせられた可能性もあったと?
もし家族とか沙耶とかに見られたりしたら……
やっぱりさっさと始末してしまった方がいいかもしれない。
「……まぁいいわ。でもあの石で変身させたれた後、そのマカとかいうのを嗅ぎつけてあの変態がやってきたけど、あの紅い娘の時はそんな事は無かったみたいだけど、その違いは?」
「みゅる……。それは、きっとシャママが結界を張ってから変身させたんだと思うみょ」
「結界ね。そのシャママとかいうのは使えても、アンタは使えないの?」
「みゅ!プミュも当然使えるみょ!」
「なのに使わなかったと。ふざけてるの?」
「にゅにゅ……、こっちに来て一ヶ月以上も探し続けて、やっと見つけたから舞い上がっちゃたんだみょ」
「それの結果があれとか冗談じゃないんだけど」
「みにゅ~……」
「で、結界とやらは何が出来るの?」
「結界の外と中を断絶させるからマカとか声とかが漏れないみょ。それに攻撃されたりしても防げるみゅし、逆に閉じ込めたりも出来るみょ。特別な結界なら怪我とかも早く治せたりするみゅ」
大体漫画とかゲームとかと一緒なわけね。
「結界以外にアンタ達に出来る事ってあるの?」
「うにゅ、この姿だと結界が精一杯みょ。他の三人も同じなはずみょ」
『この姿』でだとね。
合計で四匹で守護獣とか言ってたし、青竜とか朱雀とかそんな感じ?
似合わな過ぎるけど、本当の姿だとやっぱ大きいのかな?
こっちとしては大き過ぎたりしたら取扱いに困るから都合的にはこっちのがマシか。
「アンタとシャママっていうの以外には後二匹がこっちに来てるって感じでいいの?それとも別の世界にでも探しにいってる?」
「全員こっちの世界にいるみゅ。《四色の魔法使い》の因果は強いみゅから同じ世界で固まってるみたいみょ」
あの変態がすぐに来たのもそのせいか。
四人が一固めになってる可能性が高いならこっちの世界だけを見張ってればいいんだし。
……意外と結界の重要性が高そうね。
こうなると結界を張れるという怪生物Xは聞き出した後も暫くは潰せないか?
「アンタのいた国から増援は呼べないの?」
「世界間を移動するにはかなりのマカが必要みゅ。プミュ達以外に出来るのはいないみゅし、ダラーク帝国が攻めてくる間はこっちに呼ぶのは無理みょ」
だからわざわざ異世界を跨いでまでして、どれだけ頼りになるか分からない伝説の魔法使いなんかを探しに来てる時点で予想はしてたけど、余程人材が居ないみたいね。
じゃなきゃ守護獣だとか大層なのを送り込んだりはしないんだろうけど。
「役に立たないわね。にしても、人を戦争の駒に担ぎ出すにしてどうやって了承を取り付ける気だったわけ?まさか無理矢理そっちの世界に拉致するとかは言わないよね?」
「みゅ、ちゃんと話をしてお願いするつもりだったみょ。ダラーク帝国みたいに無理やり戦わせたりはしないみゅ」
「お願いってまさか頭を下げて終わりとかじゃないでしょ。人に命を賭けさせて関係の無い世界の国の為に戦わせようっていうんだから」
「にゅにゅ、プミュじゃこっちの世界の人が満足出来るのは分からないみゅ」
小動物擬きが元気無さ気に俯こうが戦わされようとしてる身としては誤魔化されはしない。
なんでこう女児向けファンタジー的なのは全うな対価無しに人の良心とか罪悪感、正義感とかで動かそうと……
「プミュ自身が出来るとしたら寿命を数十年伸ばしたり老化を遅らせたりとかぐらいみゅ。後は女王にお願いして金とか宝石を渡すぐらいみゅ」
「…………」
これはちょっと予想外な……
や、流石に美容とかで命を懸けるのは無いかなぁと思うし、金とか宝石とかも質や量やらこっちでの換金の手段とかの問題もあるしね?
空手形当然なので心動かされたりはしないよ?うん。
「因みにその金とか宝石はどの程度ぐらい貰えるの?」
「みゅ、少なくてもプミュを閉じ込めてた小部屋一杯は貰えると思うみょ」
「へぇ、そうなんだー」
押し入れ一杯の金と宝石。
交渉次第ではもっと絞れそうだし、逆に多すぎても困るしね。
若さを保ってお金に困らない左団扇な生活にオマケで魔法も使える様になる、か……
「うん、成程ね。まぁ朝の事もプミュくんが故郷の為に我武者羅になって頑張ってた結果だろうし、そこまで一生懸命なら水に流してもいいかな」
「みにゅ!許してくれるみょ?」
「許してもいいけど、戦うのとはまた別だけどね。まぁ誠意を持ってお願いされたら、プミュくんの国も大変そうだしちょっとは手助けしてあげたくはなるかもだけど」
「ホントみゅ!?」
「前提として、こっちの頑張り分の報酬さえあれば、ね。別にそれ程お金が欲しいとかじゃなくて善意のみだとどっちかがおんぶ抱っこ状態になっちゃったりしちゃうからそのセーフティとしてね」
「大丈夫みゅ!女王も恩義はきちんと返すって言ってたみょ!プミュも頼んでみるみょ!」
「そっか、うん。じゃあ手始めに魔法について教えて貰おうかな。あ、勿論結界とかいうのを張ってからね?」