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緑の魔法少女  作者:
1/4

1.始まりは突然に

パソコンを借りて昔のUSBを整理してたら発見したので投稿してみます。

「GRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRR!!!!!」


「なにこれええええええええええええええええ!!!」


「ぽにゅーーーーーーーーーーー!!!」


地面のアスファルトをひっぺ剥しながらどこぞの古代遺跡にある岩転がしトラップの如く転がってくる巨大な“何か”と、その前を全力ダッシュで逃げている私と見た目が肥った猫のぬいぐるみみたいな怪生物X。


この日、私は何かを間違えたらしい。


早起きしたからって家を出るのを今日に限って10分早くしてしまった事か。


早く出たからといって学校への通り道をいつもと違う道を通った事か。


はたまたぬいぐるみの落し物と思って怪生物Xを拾ってしまった事か。


一つでも違えば朝からこんな目にはあって無かっただろうに。


ああ神様、本当に居るならその顔にちょっとドロップキックさせて下さい。


でなければ朝起きたあの時間に戻して下さい。


そうすれば学校を休んででもこの怪生物Xと出会わない様にしますので。


ああ、なんか頭の中に色んな風景が見えてきた。


小学生の頃に行った海とか旅行とか学校で友達と遊んでる光景とかが。


これってガチものの走馬灯?


今朝のあれとかも見えて……











~回想/約20分前~




「なにこれゴミ?落し物?」


今日はなんか早く家を出たからいつもは通らないとこから学校へ向い、近道としてまだ人気のない運動公園に駐車場を突っ切っていたら、道の真ん中に何か落ちてた。


幼稚園生が一抱えするのは少し苦労しそうな高さ30cm前後、横幅も20cmぐらいはあるぬいぐるみ。


猫の尻尾と耳が見えるあたり、猫をデフォルメしたぬいぐるみなんだろうな。


このまま放っといたら車に轢かれて悲惨な事になるなと思ってひょいと持ち上げて見たら、ポニュっとした触感と生暖かいこの温度。


……これってもしかして


「ぷにゅ~」


「うわっ!?」


「ぶにぃ!?」


「あっ!ヤバッ……」


上げられた鳴き声に驚いて思わずぬいぐるみっぽい何かを地面に叩き付けてしまったのを自覚して、血が引いていくのが感覚で分かる。


アスファルトに顔から思いっきり叩き付けられて無事な生物が何匹いるだろうか。


しかもこのサイズの生き物が人間に叩き付けられたらまずアウト。


本当の猫なら軽々と体制を整えて着地してくれただろうに、この謎生物は顔から逝ったのを考えれば希望的観測を期待する程楽観的じゃなくて……


よく喧嘩で『殺す』とか言っちゃったりするけど、実際に生き物をどうこうする度胸なんて私には無かったようで、足が込み上げてくる罪悪感と恐怖に震えてくる。


けどこのままにしておく訳にもいかないとも思って、おそるおそる自分が叩き付けた謎生物を掴もうと手を伸ばしたら……


「うにゅ~」


「ひっ!?」


むくりとその謎生物が起き上がり反射的に手を引っ込めた。


「にゅ~。痛いぷぃ」


前足?で額を抑えながら喋る謎生物。


初めて顔を見るけど、やはり本物の猫みたいなリアル造形じゃなくてデフォルメされた猫っぽい顔をしてる。


それがこうして動いてるんだから、わたしの頭が爆発寸前になっても仕方ないと思う。


「みゅい?君がプニュを落としたみゅ?」


「えっ?や、手が、滑ってね……」


「にゅ~、手が滑ったなら仕方ないみゅ。プニュもよくコップを落としたりするみょ」


「そ、そうなんだ……」


仕方ないんだ……や、別にいいけどさ。


にしてもこの謎生物、やたら流暢に日本語を喋るけど、その変な語尾はなんなの?


会話してて少しイラッ☆とくるんだけど。


「にゅ?君から強いマカを感じるみゅる」


「マカ?」


「そうみゅ。これを持ってみて欲しいみょ」


「コレは、ダイヤモンドカットのエメラルド?」


謎生物が取り出したのはおもちゃにしてはクオリティが高すぎる緑の輝きを持つ宝石。


そのキレイさについ受け取ってから、『あれ?これって何かのフラグじゃない?』って思った時には遅かった。


「きゃっ!?」


私が手に持った瞬間に緑の宝石が突然強い光を放ち、私は反射的に空いてる腕を目を覆った。


この光は数秒で収まった。


私は『何するんのよ!?』と怒鳴ろうとしたけど、その声は出なかった。


まず、目に入ったのはフリフリのフリルが付いた緑と白を基調とした長袖。


いつの間にこんな腕がとも思ったけど、ここには私と謎生物以外はいないわけで、しかもこの腕が私の意思で動いて私の肩まで繋がってる訳で……


さっき殺したと思った謎生物を触るよりもおそるおそる、自分の『今』の姿を確認する。


なんということでしょう。


さっきまで着ていた筈の制服が跡形も無く、全体的に長袖部分と同じように緑と白を基調として各所にフリル増し増しにつけられて、所々にワンポイントアクセントとでも言いたいのか葉っぱのアクセサリーが付いている。


しかも服の生地が素人でも分かるレベルで上品質なのがより一層憎たらしい。


全身像は分からないけど、これはぱっとした印象で言うなら本気を入れまくった『魔法少女のコスプレ』、コレに尽きる。


小学生までならセーフかもしれないけど、中学2年が着ると見た人みんなが生暖かい視線を送ってきそうだ。


「~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~!?!?!?!?!?」


それを認識すると、ドッと汗が噴き出て顔が一気に熱くなり少しでも服を隠そうと両手で自分の身体を抱いてしゃがみ込んだ。


「な、なななななななななな?」


「やっぱりだみゅー!君が伝説の魔法使いの一人、《聖樹の守護者リーフデュー》だったみゅ!やっと会えたみゅー!!」


私がこんな目にあっている横で何やら謎生物が喜んで跳ね回っている。


というか、そうか確信犯か。


よし、殺そう。


アスファルトに叩き付けても平気だったなら今度はそのイラッとする言葉を吐く口を縫いとめて水に沈めてやろう。


と我ながら物騒な事を本気で考えゆらっと立ち上がり怪生物Xに手を伸ばそうとした時、


「ハーッハハハハハハハハ!!!探索ご苦労、聖ハピネル王国の緑聖獣よ!!」


「みゅみゅ!?その声は……!!」


突然後方斜め上辺りから高笑いと一緒に振ってきた声に怪生物Xが反応して、私も反射的に振り向いてしまった。


「うわぁ……」


そこにはポールに取り付けられてる時計の上に立つ真っ白なタキシードにシルクハットにマント、そして銀色に輝く目元を隠す仮面という服装の、変態が居た。


正にリアル2Pカラータキシ○ド仮面。


見なきゃよかったとか考えた時、今の自分も同類扱いされる様な服装だって事に気付いて再び顔が真っ赤になるのが分かる。


「フフッ、お嬢さん……いやリーフデューよ。如何にこのワタシが美しいとはいえ惚れてくれるな。ワタシと貴女は悲しいが敵同士なのだ」


「ヤ、天地が引っくり返ってもありえないけど」


どうやらあの変態は私が恥かしさで顔を赤くしたのを勘違いしたらしい。


幸運ながら私の好みとは全く違うので余計な心配はしないで欲しい。


「やっぱりダラーク帝国第二将軍《閃光のカミュイ》!何でお前がここに居るみょ!」


「フッ、決まっているだろう。ダラーク王国に楯突く貴様等聖ハピネル王国の希望とやらを根こそぎ始末してやるためだ。だがワタシには伝説の魔法使いの転生体を探し出す方法が無いのでな、貴様等が探し出し変身する魔力が放たれるのを待っていたのだ。そのお陰で労もかけず一人目を見つけ出す事が出来た」


「みゅー、迂闊だったみょ……」


「ワタシの美学には反する事だが、陛下のご命令だ。復活したばかりでマカが扱えぬうちに始末を付けさせて貰おう。出でよ《極悪魔ゴロゴーン》!!」


「GRRRRR!」


「え……何この展開?」


カミュイとかいう変態が高らかに声を張り上げると、地面に紫色に光るこれ見よがしに魔法陣な魔法陣から大岩見たいな丸い猿?なのが出てきた。


なんというか、荒ぶる神を喰らうゲームの猿エネミーにポ○モンのゴ○ーンをフュージョンさせた感じなの。


てかコレ、めちゃヤバい展開だよね?


私は無関係なのに!!


「卑怯だみょ!まだリーフデューは戦えないみゅに!」


「残念ながら陛下はこれを戦いとは見なしてはおられない。ただ帝国に仇成すであろう害虫を駆除する為の作業であるとお考えなのだ。ワタシとしては敵であっても麗しき女性に対してこの様な手段を用いるのは心苦しいのだが、陛下のお言葉は絶対。サヨナラだ、目覚めたばかりの若葉よ。さぁ転がり潰すのだゴロゴーン!!」


「GRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRR!!!!!」


「なにこれええええええええええええええええ!!!」


「ぽにゅーーーーーーーーーーー!!!」







~回想終了~



ハッ!走馬灯が一周した!


どうせなら夢でしたとかならいいのに、現実は無情に未だに岩猿に追い回されて怪生物Xと並走して全力疾走してる。


初詣に入れた賽銭を返して神様!!


「ちょっと!あれどうにか出来ないの!?」


「無理みゅ!こっちの世界だとプニュ達、聖獣の力は使えないんだみぃ!」


「~~~~~~ッ!なら私は変身したんだから必殺技とかそんなのはないの!?伝説の魔法使いとか言ってたでしょ!」


「それらには全部マカを使うんだみょ!でも今のリーフデューはマカを操る方法を知らないから使えないみょ!」


「完璧に詰んでるじゃない!ていうかそのリーフデューとか言うのはヤメて!恥ずかしくて轢かれる前に死にそうになる!!」


こう言ってる内にも岩猿との差は確実に縮まって私と怪生物Xを潰そうと転がってくる。


ああ、もう無理だ。


諦念が私の心を覆って走る足が鈍ったその時、



「RAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!!!!!!!!!!!」



岩猿が赤い紅い炎に包まれた。




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