3.改めて、自己紹介
「ちょ、まずは互いの能力の話にしようぜ!なっ!!」
そう慌てたように琢磨くんは叫んだ。それを首肯する3人に苦笑し、凛との話をやめる。いいじゃん、聞いたって呆れるだけだぜ?
『じゃ。僕からだと長いから凛からね』
僕から話を振られた凛は顎に手を当てて、少し考える。
「……それもそうか。
アンタたちも知っての通り、私の魔術は宝石魔術よ。宝石を用いて色々な魔術が使えるわ。回復も攻撃もできる万能型だけど、コスパが悪いのが欠点ね。
ああ、あと、アンタに打ったガンドとか肉体強化もちょっとはできるわ。武器は銃よ。あんまり使わないけれど」
そういってスカートの下から、太腿に着けていたホルスターを出す。白銀の銃身が、使い込まれていないことを示してる。……ガンドあるからか。
追加すると、宝石魔術は自身の魔力を宝石に付与する工程が必要だ。それを呪文(凛は基本ドイツ語系)で発動させる。
僕の持つ石は、RPG世界の石なので魔力付加が要らないから、かなり喜ばれるんだよね。宝石に付与できる魔力は、純度が高いほど多くなるので、屑石が使えないから困ってるらしいし。(だから宝石魔術の家は貴族階級に多い)
更に、この世界にも魔術協会があるそうなので(雪岡は日本のトップらしい)、凛の父さんにまた根回ししないと、保護と言う名目の、ホルマリン漬けになるかもなぁ。早いとこ挨拶に行かないとね。
「じゃ、次は俺たちかな」
凛の説明のあと、詳しい説明はいらないらしいので、双子が口を開いた。
……どうやら、僕に伝えれる(もしくは僕の能力を知る)のが主体らしい。作戦練りやすくするためだろう。
「俺らは烏天狗。基本的に神道系の呪術ばっかり使ってる」
「烏使って情報集めたり、飛んだりもできるけどね」
神道だけなのかな?中国系の道士なのだろうか。天狗はもともと、修験道師が真に落ちたのが大本ってよく言われてるんだけど。
『陰陽道は?』
「使えなくはねーけど、やっぱ神道の方が相性いいみてーだな。つか、使えんのか悠莉は?」
『まあ、陰陽師って名乗れるくらいかな』
「……つまりは水準高いんだ」『まあ、"見立て"の呪術も使うけど』
これでも平安の安倍に生まれたことあるし、高於の神に認められてもいるのだ。
"見立て"とは、例えば、………そうだなぁ、キリストの聖歌のKYLIEで、日本の神仏に祈りを捧げて力を借りる、って言えば早いかな。宗教は関係なく、神様の力を借りれちゃう奥の手だ。
「そうなんだ?
あ、あと、武器は二人とも刀とか錫杖が多いんだけど、一応銃も使えるよ」
二人によると羽はやっぱり黒いらしい。(たまにアルビノもいるらしいけど)
呪術関連に強いから、2Chみたいなホラー系を担当するのが多いんだとか。今回のように、魔獣(?)関連は凜と組む以外にはしないんだって。
弓じゃなくて銃なところは現代ですね。弓もできるらしいけど。
僕からは特に疑問もないので、零夜に目を向けた。僕の意図を汲み取った零夜は、琢磨くんとアイコンタクトをとった。
「次は俺達か。吸血鬼だな」
「ま、零夜クンとは違って俺は真祖じゃないけどー?」
零夜は真祖なんだっけ。
……おそらく一般的に言われている吸血鬼の弱点はほとんど気かにだろうしなぁ。たぶん、聖水で清めた銀で攻撃を受けると、怪我の治りが遅くなるくらいだろう。たっくんもだいぶ偉そうな立場なんだけどね。だって零夜の従弟らしいし。
「だが、貴族階級のトップ、公爵家だろう」
「たいして偉くないって。……雑用だし、うち」
公爵って、琢磨くんもかなり血統いいと思うけど……。卑下するってことはなんかあったんだ?
……いくら待っても吸血鬼は特に説明がないってことは、身体強化とかがメインなのね。王道だな。ニンニクとか日光には弱くないけど。
「その通りだ。血を貰えばより力は強くなるがな。
……心も読めるがお前は殊更読みにくいな」
「凛もそうなんだ。魔術師だからか?」
「基本は読まないからな。坑魔力が高いんだろう」
イケメン二人の会話はやっぱ目の保養ですね(呆
今さらっと心読んだし。閉心術、常時発動しないと駄目なのか?面倒な……。
「アンタの嘘発見器の方が、まだ分かりやすいわね」
『感がいいだけだって』
「やっぱ雪白ちゃん、猫又もあるんじゃ…」
凛が笑い半分で言うと、ユズがこちらをちらっと見る。だけどさ、
『それはユズでしょ』
「そうですよー。
私は猫又で、猫を使った情報集めが得意なの。で、感覚が鋭いから実質嘘ついてる人の見分けもできるの」
嘘ついたら、心拍数とか発汗とか目が泳ぐとか、色々あるもんね。一瞬のそれを、見ることができるってことか。
僕は超直感だから違うんだけど、言わなくていいか。
で、全員の話が終わって僕の抱いた疑問点はこれだけ。凛が呆れそうだけど。
『皆、動物になれたりもするの?』
「アンタねェ……」
だって気になるんだもん!!召喚師として。モフモフしたのは特に!!
「ああ。俺らなら烏だな」
「私も猫なら子猫からライオンサイズまで行ける」
「俺達なら蝙蝠、狼あたりが妥当だな」
出来るみたいです。吸血鬼は狼も可能なんだ……。
うちの召喚獣の毛並みも最高なんだけど(召喚士もやったことあるからね)、リル(フェンリルウルフ♀)とどっちが気持ちいいんだろ?今度、モフモフさせて貰おう。
そう心に決めると凛の突っ込みが入る。
「もういいでしょ、次アンタよ」
『え〜。量、半端なくあるんだけど…………』
「使う能力を大まかに言えばいいでしょ!!」
凛の方針で行くとしよう。多すぎるからな。
いちいち数え上げて言うの面倒臭い。ぶっちゃけ、4ケタの寿命は伊達じゃない。まあ、各世界では30代半ばで死ぬことが多いから、広く浅くって感じだけど。
『じゃ、分りやすいのから。……さっき見たのからがいいかな。
“電子回路の保管庫”(エレクトリック・ストック)っていう力なんだけど、見た目ノートパソコンで、いつでもどこでも物を出し入れできる能力なんだよね。
あと、錬金術に召喚術、投影魔術、精霊魔法に幻術。
身体強化もできるし、直感が異様に良いわ、瞬間移動能力者かつ、陰陽術も使える万能型。
武器は、刀とか弓とか槍、銃に体術……他にもだいたいは使えるかな』
これでも、半分にも満たないけど。
前衛・後衛どっちもできるって、パーティー組みやすいんだよね。遊撃手にもなれるし。
「雪白ちゃんって、どんだけちゃんぽんなの!?」
「………節操なしって言えばいいのか、記憶力がいいのか……」
アッくんとユズは頭を抱えた。人生(たまに違うけど)長いからね。知識は大量だ。
………てか、凛、説明が途中まででもため息吐くなよ。付き合いの長い君にまで呆れられると、傷つくんだかんな。
「改めて聞くと、本当にチートね」
『拝金しゅ「なに?」ぎしゃに、言われたくないんだけど(ボソッ』
武器は投影魔術で贋作で済ませたり、“電子回路の保管庫”((エレクトリック・ストック)から取り出したりと色々だけど、自分に合う武器しか使いたくないんだ。因みに、弓は外したことないもん。動体視力もかなり発達してるし、空間把握に長けたホークアイもあるし。
……一応ここで補足をば。
投影魔術とは書いて字の通り、僕が見たことある武器を、魔法で生み出せる。燃費悪いって倦厭されてるけど、僕のは、僕が消すまで消えないし、英霊の武器もいくらかスペック下がるけどできる。一回作れば言われるほど魔力消費しないし。便利なのは確かだが、そのせいで魔術協会に追われているんだが。
精霊魔術はそのまんま、精霊の力を借りるものだ。僕の契約してるのは六大精霊のエリート。それぞれ、風姫、黒王、炎王、水姫、光姫、闇皇と言う。
皆、いつでも側にいてくれる有り難い存在だ。今は自室にに人形姿で置かれてるけど、僕が召喚すればすぐ来てくれるんだよね。
こんなものかな。