-プロローグ-
小学校に入る前、私は両目を失ってしまった。
誕生日で、プレゼントを買いに行っていた時の出来事だった。
なにが起きたのかさっぱりわからないまま真っ暗な世界が広がり、気が付けば消毒のにおいがする部屋にいた、おそらく病院だろうか。
私は怖くて話をすることが出来なくなってしまっていた。
ただ落ち着く声、手の暖かさがそこにはあった。
『大丈夫だよアリス。僕が助けるからね』
そう言うと優しくて暖かい手が私の頭を撫でた。
声からして青年だろうか。。
お父さんでも病院の先生でもない、その人は毎日のように訪れ、大丈夫だよアリスと言っては何処かに消えてしまうのだ。
声がでなくなってしまった私はいつも心の中で、【貴方は誰なの?】と問うが当然の如く返事は返ってこない。
それから数日後、私は手術をし目を取り戻した。
その目はとても綺麗な青い目をしていた。
鏡の前の私をじっと見つめていると、まるでもう一人の私が私をみている感じがしたのをハッキリと覚えている。
手術を受けて何週間たったのだろう。
声も出るようになり普段の生活に戻っていった
異変が起きたのは小学校の帰りだ。
目が酷く熱い、まるで炎に包まれている様に
母は直ぐに私を連れ病院に向かった。
先生に見てもらったがその時には熱さもなくなり検査にも異常は見当たらなかったため家に帰った、だが。
鏡の前の私の瞳は綺麗なガラスのような赤い瞳に変わっていたのだ。
私は気にもせず、寧ろその目はお気に入りになっていた。
父も母も私の目を見なくなってしまったが、目をなくした事故や燃えるような熱さの記憶さえも無くなってしまうほどの年月がたち、私も明日で18歳になる。
鏡に映る赤い目には違和感はなくなり、鏡を見るといつも思い出すのが大丈夫だよアリスと言うあの声。
いったいあの声の持ち主は誰だったのだろうか。