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明日の果て  作者: 河野 る宇
◆第1章~空と炎の瞳
6/22

*その正体

「責任取れよ」

「なんだ唐突に」

 路地裏の一角、剛は見知らぬ男たちに絡まれているジェティスに壁に発した。

「なんだおまえ。こいつの知りあいか?」

 おそらく、これから殺されるであろう男が剛にも絡んでくる。

「そいつのせいで彼女にふられたんだ」

「チッ、女くらいで」

 別の男が舌打ちする。どうせこいつも殺される予定の奴だ。

「こいつら殺すんだろう? 早くやれよ」

「俺たちを殺す? ふざけてんのか、アァ?」

 眉間にしわを寄せてすごみを見せているようだが、ジェティスに効果は無い。5人いても、きっとジェティスには敵わない。

「機嫌が悪いのはわかったがな、人を殺める場面を見たいのか?」

「見たい訳ないだろ、そっちの仕事を早く済ませろって言ってんだ」

 俺の態度に、ジェティスは眉を吊り上げ少しの怒りを見せた。

「愚かだ。そのような人間にため口を吐かれる覚えはない」

 低く発すると次の瞬間、2対の翼が現れた──

「うわぁ!? なんだこいつ!?」

 皆それぞれに叫び声を上げ、漆黒の翼を凝視する。

 ジェティスが翼をひと羽ばたきさせたかと思うと風が舞い、男達は地面につっぷした。そして静かに死体を見下ろし、死んだ事を確認すると剛を睨み付けた。

「これで満足か」

「う……」

 吸い込まれるような黒い翼から視線を離せず、剛は恐怖で体を震わせた。

「そんなに知りたいか、ならば教えてやるよ。我が名はジェティス。黒の闇天使ジェティスだ」

「天使だって?」

 黒々とした風貌はどう見たって死に神じゃないか。

「俺は裁きの天使だ。絶対神マクバード様の配下であり、計り事の神デイトリアの(しもべ)、俺に与えられた名は自由を司る黒の闇天使ジェティス」

「な、なんだよ」

 なんでいきなり全部暴露するんだよ。

「知りたかったんだろう? だから教えてやったんだ」

「なんでおまえが怒ってんだよ。俺が先に怒ってたんだぞっ!」

「人が死ぬ瞬間を平然と眺めていられる事は、俺の望んだ事じゃない」

「なんだよ、おまえは平気なくせに」

「お前がそう思っているからそう見えるだけだ。それに俺は人間じゃない」

「なに勝手なこと言っ──」

「何をしている」

 突然、背後から聞き覚えのない声がして剛は振り返る。

「!」

 そこにいたのは、背中までの美しい黒髪をなびかせた赤い瞳の女性だった。

 手入れしているようには見えないが、艶やかな髪に整った顔立ち、吊り気味の目尻は文句のない美人だ。

「デイトリア様」

 ジェティスは翼を仕舞い、軽く会釈した。

「えっ!? こいつが? いや、この人が……」

 女は際立きわだった存在感を放ち、剛を威圧するように視線を合わせる。

 見つめられた剛は、いてもたまらず目を逸らした。何もかもを見透かされる感じがしたからだ。

 その女は剛をしばらく見つめたあと、ジェティスに向き直り、少し厳しい口調で発する。

「何故、話した、馬鹿な事を。おまえらしくもない」

「すみません。処で、どうして女性型なんです? いつも男性型なのに」

「気分転換に替えてみたんだが、やはりダメだな。仕事もろくすっぽできん。女になった途端にこれだ」

「それでいつも男性型なんですね。ストーカーはいますか?」

「ん、こないだいたなぁ」

 2人は剛の存在など忘れたように、そっちのけで盛りあがっている。

「どうしましょう」

 呆けた剛に気付いたジェティスが、女性に意見を求めた。

「おまえの波長にしっかりと乗っとるな」

 どうしたものかと思案している。剛はそれをじっと待つしかなかった。

「名前は」

佐藤さとう つよしと言うらしいです」と、ジェティス。

「仕事は何をしている」

「え? えーと、サラリーマン」

「ずいぶんと幅の広い答え方だな。英語は」

「え? ちょ、ちょっとは……」

 なんでこんなこと聞くんだろう?

「ドイツ語は」

「無理に決まってんだろ」

「ふむ」

 なんだか思案している様子、彼女は剛をどうする気なのだろうか。

「今の仕事を辞めてくれんかね」

「は? いきなりなに言ってんの」

「では記憶を消すのはどうだ」

「いや、言ってる意味がわかんないんですけど」

「このままにしておく事は出来んのでな。方法としては命を奪うか、記憶を消すか、私の助手になるか」

「はあ……」

 どうでもいいけど、見た目すごい美人なのに、この男口調はなんとかならないのか。

「早く決めろ」

 狭い路地裏で剛の今後が決められようとしていた。

「決めろって言われても、突然すぎて無理です」

「では記憶を消す」

「嫌なんですけど」

 どうやら、選択肢は1つしか無いようだ──

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