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明日の果て  作者: 河野 る宇
◆第3章~感情
17/22

*存在

 デイの助手を続けて半年が経っていた。

 英語はなんとかマスターしたが、デイトリアは英語以外の言語の翻訳も手がけていて、それらに至っては背表紙だけを覚えるのがやっとだ。

「他のは覚えなくていいの?」

「覚えてもらってもかまわんが、日本ではあまり日常で耳にしない言語だろう」

「え、まあ……」

「私は助かるが、今後お前の役に立つかどうかだ」

「え?」

 剛は、デイトリアが自分の事を考えて言葉を教えていた事を知った。

 ジェティスとのつながりから切れた後の事まで考えてくれていたとは、さすがに驚いた。

「デイは言葉覚えたのって、やっぱり魔法とか?」

 照れながら問いかけると、デイトリアが怪訝な表情を浮かべていた。

「え、なに?」

「表層意識から相手の考えを読み取る事は可能だが、言語を覚えるのは自力だ」

「え、そうなの!?」

「書き記されているものから、書いた者の感情は読み取れても、書かれているものを理解するには言語を知らなければならない」

「それは魔法では無理なのか、そか」

 驚きつつも、仕事を始めたデイトリアにコーヒーを煎れる。

 キッチンまで行かなくても、書斎にはコーヒーメーカーなどが置いてある。

 デイトリアには、これといったこだわりは無いようなので剛はその時で気分でブラックや砂糖、クリープ入りを作る。

 試しに、紅茶やミックスジュースなんかも出してみたが、別段それに怒ったりもしない。

 どういう嗜好なんだろうか?

 どうやら、嗜好品というものも無ければ、嫌いなものも無いらしい。

 黙々と仕事をこなすデイトリアの近くで剛は英語の本を読む。なんとかマスターしたレベルであるため、勉強をかかす事は出来ない。

「マクバードはこんな本も読んでたりするのかな」

「ん?」

 剛の読んでいる本はマザーグースだ。

「マクバードの神殿には無限図書がある」

 あらゆる書物が置かれている無限に続く空間には、新しい書物が今でも増え続けているだろう。

 新しい書物が増えるのをいつも心待ちにし、同じ書物を何度も読み返す。

「その本はマクバードの好きなものの1つだ」

「そう、なんだ」

 同じ本を何度も読み続けて、きっと中身だって覚えているんだろう。

 新しい本を待って、それもまた何度も読み返すに違いない。

「俺、小説家になろうかな」

「! ほう」

「だって、そうすれば新しい本が増えるだろ?」

 そうすれば、マクバードは新しい本を手に出来る。

「良い考えだな、そうしてくれると有り難い」

「あ、マクバードは日本語わかるの?」

「当然だ」

 彼らアペイロン神族は、全ての空間や宇宙に通じているため、地球だけでなく他の惑星とも行き来しているそうだ。

「でも俺たちと変わらないじゃないか、デイは地球に住んでるから解るけど。みんな人間だったじゃん」

「偶然と言いたいが、この形態が安定している」

「へえ、んじゃデイが他の星に行くこともあるの?」

「私は元々、地球生まれでな。あまり他の星に行く事は考えていない」

「え!? デイって地球生まれの神様なの?」

「遠い昔の話だ」

 少し寂しげな笑顔で剛に笑いかけた。

 軽く説明されたが、頭が混乱しそうだった。

 つまりは、ずっと昔は人間で、剛と同じ時代を生きていた。力を手にして、マクバードと出会い、それから数百年ほど闇の世界にいて神になって数十年後に地球に──って時系列は無視していいのは解ってても考えてしまう。

 考えると訳が解らなくなりそうなので、すっぱりと諦める事にした。

「あ! ごめん、仕事中なのに」

 手の止まっているデイトリアを見て剛は慌てて謝った。

「かまわんよ」

 そう言って仕事を再開する。

 人間が、こんな凄い神族の仲間入り出来るのかと剛は感心したが、誰でも仲間に入れる訳では無いのだろう。

 きっと、デイトリアは特別だったのだと思った。

 神族の仲間入りだけじゃなく、絶対神の次の位になったんだから──

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