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明日の果て  作者: 河野 る宇
◆第3章~感情
16/22

*躊躇い

 それから、壁の修復を終えて剛は再びマクバートの会話を楽しんでいた。

 その様子は剛には魔法のようにも見えたが、少し違うと説明されたけれど半分くらいで解らなくなってきた。

「分子構造の入れ替え?」

「原子の組み替えとも言うかな、無機物であればそれが可能なのだ。もちろん有機物にも出来ん事はないが、あまり気持ちの良いものではなかろう」

「うん」

「魔法と科学は得てして通じている部分もある。組み替えを成す部分は科学と言えるかもしれんが、それを行う動作は魔法だろう」

「ああ、そうか。人間だと機械とか要る」

 剛の言葉にマクバードは、小さく笑みを浮かべた。

「あのさ」

「なんだね?」

 言いにくそうにしていた剛だが、意を決して口を開く。

「さっき、あいつらがマクバードのこと籠の鳥って言ってたけど」

 敬称は必要ないと言われ剛も初めの頃は躊躇いがちに呼んでいたが、今では慣れたものだ。

「事情を知らぬ者は多いのでな、そう見えるのだろう」

 柔らかに微笑んでそう答えるが、その瞳には愁いが薄く映し出されている。

 仕方がないとつぶやきつつも、それを納得している訳じゃないんだろう。ここでただ眺めているだけなんて、つまらないことくらい解る。

「こんな殺風景な場所じゃなくてさ、もっと明るい場所にいればいいのに」

「それでも長居は出来ないのだ。この場所が私に安定をもたらしているのは、私がそのために創った世界だからなのだよ」

「えっ、じゃあもっと色々置けばいいじゃん」

「それも難しくてな。私のエネルギーに耐えうるものでなければ、すぐに崩壊してしまうのだ」

 初めはそれで木などを創っていたが、それはただの偽物だ。見た目を飾っても、本物ではない。

「そか。人間とかみたいに、見た目や色だけで安心する訳じゃないんだ。だから時々抜け出してるんだね」

「危険な事だとは解っているのだ。止めてくれるアレックには感謝している」

 マクバードの側近、闇の王アレキサンダーという神は、デイトリアが来る前は第2の地位にいたそうだ。

 しかし、デイトリアが神になった事で第3の地位に落ちた。

 アレキサンダー本人はそれにさしたる抗議もなく、「それが当然だ」と言い放った。

 彼らは地位に対して、固執することは無いらしい。

 剛は、マクバードがどうして子供っぽく接するのか解った気がした──彼はそれを自覚している訳でも狙っている訳でもなく、ただ接する事の喜びを知っているだけなんだ。

 一番強い神なのに、その強さがマクバードの邪魔をしている。

 デイトリアは剛に「深入りはするな」と忠告していた。

 初めは意味がわからなかったが、こうして接しているうちにそれが理解出来た。

「そろそろ戻る」

 修理から戻ってきたデイトリアが剛を一瞥して発する。

「えっ!? もう?」

「うむ、そうか。とても楽しかった」

「でも……」

 剛は、微笑んで見送るマクバードを見つめた。

「なあ、デイ。もうちょっといたいんだけど」

「だめだ」

 デイトリアは剛に向き直り、険しい目を向ける。

「いつまでもいられない事は解っているはずだ」

「解ってるよ! 解ってるけど……」

 そのあとの言葉が、喉に詰まって出てこない。

「こうなるだろうと予想はしていた。悪いのは私だ」

 苦い表情を浮かべるデイトリアを見つめ、剛は顔を伏せた。

 それは、以前にも人間を合わせた事があるということだと剛はすぐに理解した。その人たちはどうしたのか、それが気になった──

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