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明日の果て  作者: 河野 る宇
◆第1章~空と炎の瞳
10/22

*神様

 俺は何をしてるんだろう──剛はフラフラとマンションを出たはいいが、そのまま街で何をするでもなく、徘徊して気が付けば、もう夜になっているじゃないか。

「帰ったらデイに怒られるな」

 仕事を放り出して来てしまったのだから、怒られても仕方がない。

 もの悲しくて、人のいる場所に来てしまっていたが、そろそろ1人になりたくなってきた。

 公園に来てみれば、恋人たちが妖しい行動を取っている。とてもじゃないが、自分の世界に入っていられる状況じゃない。

 1人になれる場所を探し、足を向けたのは河川敷。いくらカップルがいたとしても、公園ほど多くは無いだろう。

 カップルを避けて土手に腰掛け、深い溜息を吐き出した。

「ハァ……何してんのかな、俺」

「まったくだ」

「うわあ!?」

 突然の声に驚いて変な声が出た。

 後ろからの聞き覚えのない声に顔を上げると、知らない男の顔が目に入ってきた。

「……えと?」

 長い黒髪の、よく見るとどこか見覚えのある顔立ち。

「私が好きなのか」

 いや、男を好きになった覚えは──と言いかけたとき、男のしゃべり方と少しクセのある髪型に思い出す。

「!? デイ!?」

 男のデイが剛の横に腰を落とした。

「うわ、本当に性別変えられるんだ」

 マジマジと眺めた。

 男に変わってはいるが、美人であることは間違いなく、人の目を惹く容姿だ。細腰で上品な動きと、相手を見通す瞳は少しも変わらない。

「でも、なんで男?」

「疲れた」

 妙に納得のいく言葉なので何も返せない。


 川の静かな流れと、夜の音が耳に響く──

「感情を無くしたのは必然的な事だ」

「わかってるよ、神様だもんね。俺が勝手に好きになっちゃったから、デイを困らせちゃって、ごめん」

「謝る事ではない。もし私にその感情が残っていたとすれば、向けるのはきっと1人なのだろう」

「誰か、愛する人がいるってこと?」

 デイトリアの瞳から複雑な色が覗いては隠れる。

 その表情と、ジェティスが言っていた名前が浮かぶ。

「もしかしてそれ、絶対神とか言う人?」

 何も反応が無いように思えるが、剛には気がついた。

 青い瞳が微かに動いたのを見逃さなかった。

「どんな人なの?」

「聡明で慈悲深い」

 短い説明だけど、それだけでその人物がすごいのだとわかる。

 だが、失恋した男はねちっこい。

「じゃあその人に会わせてよ」

 デイトリアは声は上げなかったものの、目を見開いてものすごい驚きようだ。

 そんな言葉が返ってくるとは思ってもみなかったらしい、かなり動揺している。

「何を言っている」

「なんで?」

「その聞き返しはどうかと思うのだが」

「なに、会うくらいもしてくれないケチなの?」

「私を怒らせて約束を取り付ける算段か」

「バレたか。でも会いたい」

 真剣な剛の面持ちに、さすがのデイトリアも少し困惑しているようだ。

 デイトリアもジェティスも、相手の気持ちはちゃんと受け止めてくれる。

「考えさせてくれ」

 そう言って、ゆっくり立ち上がった。

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