君恋し
この話は「君愛し」「君想う」「君想い」と少し話が繋がっています。
先に「君愛し」「君想う」「君想い」を読むことをお勧めしますが、
これだけ読んでも大丈夫です。
それはいつもの帰り道。
長谷川と並んで帰っていた。
「もうすぐで卒業だね」
「そうだな」
話題は一ケ月先の卒業式の事。
と言っても俺たちは志望校が一緒だし
どちらかが落ちなければまた三年間一緒だ。
まさか志望校が同じだと思っていなかった俺は
長谷川から志望校を聞いた時、心底驚いた。
「なんか卒業する実感ないな」
「そうだね」
また三年間一緒なんだと思うと
なんだか不思議な感じがした。
いつだったか
俺は長谷川の事を好きになっていた。
きっかけは元カノ。
付き合っていたときに
「私と長谷川さん。陽生が本当に見ているのはどっちなの?」
と聞いてきた。
その時。
俺は咄嗟に答えが出なかった。
普通ならば即答で「彼女」と答えるだろう。
でも迷ってしまったんだ。
俺が本当に好きなのは
「彼女」か、「長谷川」か。
馬鹿だなって本当に思う。
だけどその時、気づいてしまった。
俺が本当に好きだったのは「長谷川」だった。
それからというもの
俺は長谷川の仕草・言葉全てに心が乱されて
なのに長谷川が傍にいないと心に穴があいたような気持ちになった。
今までに幾度も恋をしてきたのに
まるで今までのは恋ではなかったというように
初めての感情ばかりで戸惑いを隠せなかった。
それでもこの感情が長谷川に気づかれてしまっては
もう長谷川の傍にいられなくなると思った俺は
この気持ちを打ち明ける事が出来なかった。
そんな時だった
友達からある情報を聞いたのは。
「おい佐竹。長谷川さん隣のクラスの奴に告白されたらしいぞ」
それを聞いた時、このままでは自分の気持ちを伝えられないまま
他の誰かに長谷川の傍を取られるという危機感に陥った。
自分の気持ちを伝えられないまま後悔するくらいなら
伝えて失恋してしまう方がずっといいと思った。
だから俺は決心する。
「なぁ、長谷川」
「なあに?」
急に真剣な顔つきになった俺に対して
長谷川は少し怪訝な顔をした。
もう少しでいつもの帰り道。
俺は今日、告白します。
「俺、お前の事好きだ」
数秒後、長谷川は
照れたようにはにかんで「私も」と言った。
やっと完結です。
しばらく執筆してませんでしたが
これから地道に執筆していきたいと思います。