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出会いと再会

 結論が出ないで長引くだけの会議って欠伸を誤魔化すのが大変ですよね…どうも、嫁が元気一杯、次いでに眠気も一杯な幸せ魔族ドマージュです。

 ただ今、魔王城では結論の出ない会議の真っ最中。

 ちなみに議題は”ガイエに突然現れた信じられない化け物への対策”です。

 信じられない化け物とは、私の上司の細川主任の事。

 そりゃそうです、ツヤイルワ五将軍のうち三人が主任により返り討ちにされたんですから。


「その者は本当に猿人なのか?猿人は最弱種族なんだぞ」

 ツヤイヨツ将軍が出席者に念を押しました。


「はっ。ノツイガナもそう申しておりますし、斥候にも確認させました」

 ちなみにノツイガナは極度の猿人恐怖症になり、髭を生やした猿人の写真を見るだけで半狂乱になるそうです。


「信じられん…猿人にここまでやられるとは」

 まあ、私も初めて主任と会った時は自分の目を疑いましたね。

 最弱種族の猿人が、 ベルゼバブをフルボッコにしていたんですから。


――――――――――――――― 


 私が生まれた世界は魔族と神族が長きに渡って戦いを繰り広げていました。

 大地は荒れ果て力弱き者は虐げられる。

 私の故郷ベルゼバブ領ブンブンシティも悲惨な状態でしたね。

 若い男は兵役、子供と老人は農業、若い女性は子供を産む事を義務付けられていました。

 私の母や姉妹、幼馴染みも領主館に連れて行かれましたよ。

 当然、私も当然魔王軍の属しており領主であるベルゼバブの配下でした。 

 配下と言っても下から数えた方が早い様な下っ端。

 ベルゼバブ、強力な蠅の魔物で魔王軍のNo.2、人型に変じると見目の良い青年に変わります。

 服装に凝る魔族でその日も、黒いタキーシードに白いシャツ、裏地が赤い黒マントと言うキザったらしい格好をしていました。

 

「神族の町に私の可愛い蠅を放ちました。今頃、蠅達は食糧を食い尽くしているでしょう…これを逃さず一機に攻め落としましょう」

 ベルゼバブのつかいまを使った陥落作戦。

 無数の蠅を町に送り込み食糧を食い尽くし病気を蔓延させる…蠅を送られた町の惨状は筆舌に尽くし難い物でした。

 敵である私に猿人の子供がお腹が空いたと泣いて縋るんです。

 痩せ細り枯れ木の様になった指で私の足を必死に掴むんですよ。


(また、あんな悪夢みたいな町に行かなきゃいけないのか…)

 惨憺たる気持ちで落ち込んでいると 何者かがドアを蹴破って侵入してきました。

 入って来たのは一人の猿人、普通の猿人なら一人でベルゼバブの城に近く付く事すら不可能。

 ましてや猿人がベルゼバブに喧嘩を売るなんて狂気の沙汰でしかありません。


「おい、町に蠅を寄越したのはお前か?」

 猿人は低く野太い声でベルゼバブに詰め寄って行きます。


「これだから猿人は野蛮で嫌なんですよ。私の美しいタキーシードが汚れたではありませんか」

 ベルゼバブは、猿人を小馬鹿にした様に、そう言うとタキーシードに着いた埃をはたき落としました。


「そりゃ悪かったっな。もう一度聞く…お前が蠅を寄越したのか?」 

 猿人はベルゼバブに怯える所かドンドン近付いていきます。


「ええ、私の可愛い蠅達を気に入ってもらブグェー」

 次の瞬間、私達の視線から一瞬でベルゼバブが消えました。

 みんな、何があったのか理解できずに唖然としたのを覚えています。


「貴様、美しい私を足蹴にする等許さるべぇー」

 足蹴が駄目と言われたからなのか、猿人の男はベルゼバブの顔を思いっきりぶん殴りました。

 ベルゼバブが錐揉み回転しながら吹っ飛んでいきます。


「てめぇん所の蠅が俺様特性の濃厚チーズケーキを食ったんだよ。試作品で味見をしてなかったんだぞ!!どう責任を取ってくれるんだ?」


「ケーキだと?男の癖にくだら…ん?」

 辺りの空気が一気に重苦しい物に変わり、男の体から魔力が湯気の様に立ち上り始める。


(魔力が倍増した?彼奴は何者なんだ?)


 ベルゼバブの顔が見る見る青ざめ体をガタガタと震わせ始めました。

 いえ、ベルゼバブだけではなく、そこにいる全ての魔族がたった一人の男に怯えたんです。


「おい、こらパティシエ様の前でケーキをくだらないだと!?良い度胸してるじゃねえか?」

 言うと同時に男はベルゼバブにラリアットを喰らわせました。


「グェッフオ、ゲッホ…つ、作って返せば良いんだろ!!」

 次の瞬間、男の魔力がさらに倍増。


「ほう?端正込めて作った俺のケーキを素人が再現するだと…俺も舐められたもんだなっ」

 言うまでもなく、その猿人の男こそ細川主任です。

 そこからはモザイクなしでは見られない惨状になりました。


「なんだ?謝りもせずおねんねか!?おらっ」

 うずくまっているベルゼバブを踏みつけるほそかわしゅにん


「いや、返事が出来ないだけかと…」

 誰かがおっかなびっくり忠告しました。


「あっ!?何百人もの人を飢え死にさせた癖にか?」

 良く考えれば理不尽な話である、ベルゼバブをボコボコにしたののは細川主任なんですから。

 一方のベルゼバブは意識が朦朧としているらしくぐったりしています。

 本来ならベルゼバブを助ける為に、細川主任と戦わなくてはいけないんですが恐怖の余り体が動きませんでした。

 あの時の自分に言いたいです…ナイス判断ですと。


「猿人が調子に乗ってんじゃねえぞ!!」

 痺れを切らしたのかアイアンゴーレムが主任に突っ込んで行ったんですよね。


「じゃかぁしいわぁ!!なんで俺がリア充の為に剣を作らないと駄目なんだよ!!市民の救済より姫を助ける事を優先するくそ勇者だぞっ」

 普通、ゴーレムを倒すときは術者を殺すかNの文字を削り取るんですが…。


「ひでえ、粉砕だ…」

 主任の場合は文字通り粉々に砕いたんですよ。

 後から聞いた話ですが、この時の依頼は鍛冶をする事だったそうです。

 しかも、相手はハーレム勇者だったので、主任のストレスは溜まりまっくていたとの事。


「喋れないなら書面にしなきゃな」

 主任はベルゼバブの頭を掴むと壁に向かって行きました。

 そしつベルゼバブの顔を壁に押し付けながら謝罪文を書いていきます。

 最後にベルゼバブの顔印を押して終了。

 余りの衝撃に誰も何も言えませんでした。


――――――――――――――


 会議を終わらせたのはシタビヨの一言でした。


「儂が持てる力の全てを使い異世界の魔族を喚ぶとしよう」

 そして現れたのは三人の魔族…そな中に奴がいました。

 私の仇、ベルゼバブが。

川の向こうの人気投票をしています。

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