繰り返す後悔
残酷な表現があります
アルマ、お兄ちゃんのハートはとても傷ついています。
折角、暗殺者から母親を助けたと言うのに、その子供から主犯扱いされました。
しかも
「大気のマナと火のマナよ。混じり合い火の球となれ!!ファイヤーボール」
(問答無用でファイヤーボール?アルマ、お兄ちゃんは顔が怖いってだけで差別されています。でも)
「坊主、夜中に火遊びをしたらオネショをしちまうぞ。それにこんな火の球は俺には効かねえよ」
「嘘だろ?俺のファイヤーボールを素手で握り潰しやがった?」
種を明かせば手に魔力をまとわせて握り潰しただけなんだけど。
「魔法を放つ時は相手の射程距離外から放つべし、それに魔力の練り方が甘い。発動のタイミングも悪い。魔法を放ったら直ぐに場所移動をする!!それが基本だぞ、坊主」
「俺は坊主じゃねえ!!よく見ろ、女だ!!オヤジだから目が悪いんじゃねえか?」
ぐっ、こいつにアルマの爪の垢を飲ませてやりたい。
「リチェル、止めない。その人はグレイス子爵のご子息よ。それに二度もお母さんを助けてくれた命の恩人なの」
「お袋、何言ってんだよ。グレイス子爵の息子はまだ11才なんだぜ、それなら俺と1才しか年が違わない計算だ。こいつはどう見てもお袋より年上じゃん」
うん、確かに実年齢からしたら君の倍以上の年なんだよね。
「確かにそう見えるけど、この方に命を助けてもらったのは確かなのよ」
リチェルの母親で、元暗殺者の女性はリーゼと言う名前だった。
俺の暗殺に失敗した時には既にリチェルを身ごもっていたとの事。
「なんで今更リーゼさんを襲ってきたんですか?」
組織の裏切り者を処分するにしては今回の襲撃は大掛かり過ぎる。
「おそらくは魔法の才があるリチェルを組織に引き込む為だと思います。この子は誰にも習わってないのに魔法を使えましたから」
才能と言うやつなのか、それとも勇者補正ってやつなんだろうか。
俺が魔法を使いこなせる様になるまでに、どれだけの努力を必要とした事か。
「それで基礎が出来てなかったのか。…組織は有名なのか?」
「ダークウルフはグラスランドでも有数の暗殺組織です。ゴー様が倒した者もそうですが殆どが賞金首となっています」
ダークウルフ、名前は厨二チックだが金さえ払えば赤子でも平気で殺す暗殺者集団。
しかも最近の連中は狩りの様に追い詰めながら殺すのを楽しみにしている最悪の組織らしい。
「ダークウルフの本部はどこにあるんですか?」
本部には大量の賞金首がいる筈、つまり俺の名前を一気に有名にするチャンスなんだ。
「教えられません。命の恩人をましてや貴方はまだ11才の子供なんですよ」
まあ、そりゃ当然の判断だよね。
それなら暗殺者の死体にサーチを掛ける。
「本部は首都グラスシティにある建物…今いる暗殺者は30人。まっ、1時間もあれば全滅出来るな」
久しぶりに大人の姿に戻って暴れてやるか。
「ゴー様はリーディング魔法も使えるんですか?」
リーディング魔法は死体に残っている残留意識を読み取る魔法だ。
主に司法機関で使われており、賞金首の特定や犯罪歴の確認に使われている。
「さてね。俺も命を狙われた恩返しをしておかないと枕を高くして寝れないからな」
最もサーチとは違い生きてる人間には効かないし、他者の犯罪を証明する事は出来ない。
つまりダークウルフの奴らの死体を司法組織に提出すれば賞金首としての確認はしてもらえるが、俺の暗殺を依頼した親父は逮捕される事はない。
それより数時間後の事。
ダークウルフの隠れ家は恐怖に包まれていた。
最初こそは1人で攻めてきた馬鹿な男と思っていたが
「な、なんだコイツは?ナイフが刺さらねえ」
「素手で鉄の鎧を貫きやがった。化け物だ」
「隠れても無駄だ。木箱の中に1人…お前は恋人の目の前で女を犯してから2人とも殺したな」
木箱に隠れた暗殺者が木箱ごと叩き潰される。
「ドアの陰にも1人…お前は逃げ惑う人を後ろから弓で射殺したな」
次の暗殺者はドアごと蹴り飛ばされた。
「逃げても無駄だぜ。屋敷には結界魔法を掛けてある、脱出は不可能だ。今度はお前等が狩られる側だ…お前ガキをいたぶりながら殺したな?」
サーチを掛けた瞬間に見えたのは幼い兄の前で笑いながら妹を殺している男の姿。
「ひいっ!!あれは依頼だったから仕方なかったんだよ」
「そうか依頼なら仕方ないな。残念ながら俺も依頼なんだよ…シャイン早く騎士団なり警備隊を呼んで来い」
後に天使シャインは言う、あの時のゴー様を見たら悪魔でも裸足で逃げるだろうと、そしてその後のゴー様を見たら全ての天使は正義について考え直すだろうと。
――――――――――
依頼だ仕事だと言っても、俺もダークウルフの連中と同じ人殺し。
平和の為と言って人を殺し、勇者を奮い立たせる為に城を攻め滅ぼす。
俺達が殺めた人達は創竜の親父により幸せな来世が約束されている。
だが俺を恨んでいる人達は色んな次元に大勢いる。
そして今回の依頼で俺は俺を慕う少女達に消えないトラウマを残さなければいけない。
――――――――――
僕の名前はアルマ・グレイス。
僕には何年も会えていない大切な人がいる。
「アルマ聞きましたか?昨日、ダークウルフが全滅させられたそうなんですよ」
学校の授業前の時間に親友のアンジェが興奮しながら話し掛けてきた。
アンジェは腰まである長い緑の髪の美少女。
普段は人殺しの話は聞くのも嫌がる優しい娘なんだけど今日は違うみたい。
「今朝は剣の鍛錬をしていたから分からないんだ。ごめんね」
「そうですかー。なら親友のアルマにも特別に教えてあげます。ダークウルフを倒した方は私達と同じ11才の少年だそうです。名前はゴー・セクシリア。ゴーさんが帰って来たんですよ」
お、お兄ちゃまが帰って来てくれた!!
僕の所に(ここが大事)
「お兄ちゃま!!やっぱり僕の所に帰って来てくれたんだー」
「違いますよ。大切な幼馴染みの私の所に戻ってきたんです」
アンジェは親友であると同時にお兄ちゃまライバルでもあるんだよね。
「違うの!!お兄ちゃまは可愛い妹の所に帰って来たの!!アンジェ、僕はお腹が痛いから早退するね」
お兄ちゃまより大切な授業なんてある訳がないんだから!!
アルマの剣を、あの剣にしたらまずいでしょうか?
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