魔王の勇者育成計画
どうも、最近慢性頭痛に悩まされている魔族ドマージュです。
頭痛の原因は魔族の理解の範疇を逸脱した上司(猿人)細川主任。
現在、細川主任の命令でヤジンニの遺体を魔王領へと運んでいます。
ただ、この遺体はなんと表現すればいんでしょうか?
焼死体であり凍死であり感電死でもあり圧死も原因で斬殺や殴打も死因なんです。
ヤンジニの死因を表現するなら、細川主任の魔法と直接攻撃のフルコース。
右手にはヘルフレア改、左手には絶対零度、右足には地獄の轟雷、左足にグラビティ、腹にはでかい穴が開いてるし首は落とされている。
敵ながら同情してしまいます。
魔力耐性の強い魔族は細川主任にとって格好の実験台。
ちなみにヤジンニの部下は主任のホーミングマジックボール(ボールはボールでもバランスボールサイズ)で全滅しました。
そして私の仕事はヤジンニに変わって五将軍になり、魔王軍の進攻を遅らせる事。
かなりの無茶振りです。
まあ、ヤジンニの遺体を見たら魔王軍もドン引きして遅らせると思いますけど。
(この仕事が終われば育児休暇をくれるみたいだし、頑張りますか)
私の奥さん(犬人)は体が余り、強くありません。
何でも、主任は創竜様に育児休暇の事を直談判してくれたそうです。
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ドマージュの活躍で、魔王軍の進攻を遅くする事が出来た。
(確か、犬神様からもらったアムリタがあったよな。出産祝いはあれにしとくか)
「豪、事務所から荷物が届いたわよ。記憶改竄のマジックアイテムなんて何に使うの?」
「今回の奴等は日本に帰してやりたいんだよ。日本人って、鳥をしめる所を見ただけで鶏肉が食えなくなる位死に慣れなてないだろ?戦争後遺症でPTSDになる可能性が高いからな」
実際、異世界から帰って来た日本人でPTSDになった人も少なくない。
「あの子達、まだ高校生だもんね」
「ましてや異世界で魔法を使って戦って来たなんて言ってみろ。下手したら閉鎖病棟に連れて行かれてもおかしくないんだぞ」
異世界の話なんて、知らない奴が聞けば痛いだけなんだし。
「神様以上に気を使ってるんだね。ここの神様は合格なの?」
「及第点ってとこだな。送還を忘れていたのはマイナスだけど、後は平均点だよ」
ミカイゴスは、まだましな方だと思う。
「あれで及第点?魔族の人を好き勝手に弄っておいて」
「神様なんてよっぽど独善的な奴かゲーム感覚の奴じゃなきゃ気が狂っちまうんだよ。誰かの味方って事は誰かの敵だろ」
全ての生き物に耳を傾けていたら、1日でストレスで潰れちまう。
「そっか…それであの子達はどうやって強くするの?あんたが全員倒すのは駄目なんでしょ」
「それが一番手っ取り早いんだけどな。気が進まねえけど生き物を殺す事と半端な正義感を捨てさせる事から始めるよ。それと基礎体力の向上と武器の扱いにも慣れてもらわなきゃな」
魔王領に飛行機や車で攻め込む訳にはいないから、体力の向上は必須。
武器も慣れない奴が振るうと手に豆を作ったり、筋肉痛を起こしてしまう。
「生き物を殺す事はなんとなく分かるけど、正義感を捨てさせるのはなんで?」
「勇者になりゃ嫌でも二者択一の場面に遭遇しちまう。半端な正義感で選択を間違えたら軍が崩壊しちまうんだよ。勇者に必要なのは、自己満足の正義感より冷徹に見極めれる判断力。欲を言えば正義感を演出出来る強かさを持たせたい」
冷徹過ぎる勇者には誰も着いて来なくなるし…ちなみに俺は魔王より怖い勇者とか言われた事がある。
「正義感か、難しいね」
「正義感なんて結局は自分の価値観だからな。追い込まれたり慣れてくると自分の都合が良い様に線引きしちまうんだよ」
勇者や騎士も、端から見たら反吐が出る位に独善的的な奴等なんだし。
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勇者達(予定)は、体力を着けながら魔力耐性も着けなきゃいけない。
その為には…
「良いか。目の前のターゲットを壊したら扉が開く。攻撃方法は剣でも槍でも魔法でも良い。次いでに、この中は魔力が満ちていて耐性が着くようにしてある…死にたくなきゃ頑張れ」
勇者達と騎士団を連れて来たのは派遣員修行場初心者用。
お子様でも安心の安全設定。
時空魔法を使う事で一度に五百人まで利用可能(団体割引券あり)。
「あの細川さん、水や食糧はどうすれば良いんすか?」
龍神が心配そうに聞いてくる。
「この施設の凄い所は魔王領の動植物を完全再現してる所にある。しかもゴブリンやオークの料理法も分かる様にしてるんだ。飢えたくなきゃ何でも食え!!特別サービスとしてどんな泥水水も濾過する魔法を教えてやる」
「ゴ、ゴブリンを食べるんですか?」
白鳥がドン引きしている。
「中にいるのは俺が魔力で作り出した魔物だ。ただし味も食感も完全再現してある。お前には名言を授けてやる”揚げれば大抵の物は食えるだ”油はオークを倒せばラードを手に入る」
ただし、かなり獣臭いが。
「お風呂やベッドはどうするのよ」
揚羽さんが切れている。
「蚊も覗きもないから何とかしろ。夜襲設定もしてないから地べたでも安心して寝れる…詳しくはサバイバル教本を渡すから安心しろ」
「必殺技は身に付けれるんですか?」
恋野さんがヤル気満々で質問してきた。
「必殺技は基礎を高めた結果だ。基礎を高めれば自然と身に付く…では、行ってこい」
決まった、正に鬼教官。
「はい、それじゃ豪は溜めてる書類を片付ける」
鬼教官も鬼秘書には勝てず。