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幕間魔王のプロポーズ

前回のクリスマス幕間から一年が経ちました。

 クリスマス、イエス・キリストが生まれた事を祝う日。

 しかし、何故か我が祖国日本では恋人の日と呼ばれ、シングルベルから始まりクリボッチなんて酷い言葉が作られてしまう。

 ちなみに去年は美少女(自分達で言うのはきつくないんだろうか)戦士キュートハーブの敵役をしていた。

 しかし、今年の俺は違う!!

 春香と再会して久しぶりにクリスマスに有休を使ったのだ。

 怖いものは何もないと言いたいが、突発の依頼だけが怖い。

 何しろ、今日俺は春香にプロポーズをするのだ。

 イブにプロポーズなんて柄じゃないが、切っ掛けには使える。

 指輪もバッチリ、プロポーズの言葉も考えたし、婚姻届も準備した。

 保証人は創竜のオジキにお願いしてい

る。

 ずっと俺の隣にいろ、イルミネーションを見ながら春香にプロポーズするんだ。

 これで断られた笑えないよな。


 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄


「それで何の御用ですか?」

 クリスマスイブ当日、俺は事務所にいた…正確には呼び出されたのだ。

 俺の向かいには金髪碧眼の女性がいる、優しげな雰囲気と人間離れした美貌…そう彼女は女神だ。


「いや、今年も細川主任に敵役をお願いしたんですけど」

 俺を呼び出したのはキュートハーブの世界の女神。

 イブに事件を起こす計画を建てていたが、悪役を手配していなかったらしい。

 そして、俺ならイブに予定はないと思って緊急依頼をしてきたそうだ。


「残念ながら俺は休みです、有休中です。たまには自分の世界の人間を悪役にしたらどうですか?」


「うちの子達は優しい子ばっかりで悪役を任せても今一盛り上がらないんですよ。怖いと言うより微笑ましい感じになりますし」

 女神にすれば魔物も悪役も自分の世界に生まれた子供、忌み嫌われる悪役を押し付けたくないのが人情ならぬ神情なんだろう。

 それを解決するのが俺達派遣員なんだし。


「お断りします、今日は大切な用事がありますので」


「そこを何とかお願い出来ませんか?二代目キュートハーブはイブに進化する計画なんですよ」

 イブに進化って年末のスペシャル番組じゃないんだから。


「お断りします、何で事前に依頼を出してくれないんですか?」

 俺としては押し問答をしている時間があるのなら、クリスマスケーキを作りたい。


「行ってあげれば良いじゃん。準備は私がしておくから」

 女神に助け船を出したのは春香。

 当然、春香は俺のサプライズ計画を知らない。


「いや、こういうのは一度事例を作ると恒常化するんだ。どうせ、またイブにいちゃついている恋人達の邪魔をさせられて、餓鬼にモテない男にクリスマスは縁がないのよとか言われなきゃ駄目何だろ?」

 あの時はクリスマスなのに春香の写真に愚痴っていたんだぞ。


「別にモテない男扱いされても良いでしょ、それとも私以外の女が欲しいの?」


「分かったよ、行くよ。ったく、今回だけだからな」

 そのうち俺への依頼は春香が窓口になるかも知れない。

 

「はい、いってらっしゃい。美味しいクリスマス料理を作って待ってるからね」

 よっし、きちんと仕事をして最高のクリスマスにしよう。


 結果、キュートハーブのキュートジャスミンをきちんと覚醒させて俺は倒された。

 今回の決め台詞は

「あんたみたいに暑苦しいのがいたら、雪が溶けて折角のホワイトクリスマスが台無しになるの!!恋する乙女の味方キュートハーブが成敗してあげる」

 うん、決め台詞を言ってる間、隙有りまくりです。

 この世界の奴等は、恋を着けりゃ何でも正当化されると思ってんじゃないか?


 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄


「ただいまー」

 ドアを開けると部屋の中が真っ暗で返事が返って来なかった。

 胸が早鐘の様に打ち初め、全身から冷や汗が流れだす。

 あの時の光景がフラッシュバックとなり甦ってくる。

 防犯の為に、鍵はきちんと掛けておけと言ってるし、強力な結界も張っている…だが絶対ではない。

 怖い、声を出すのが闇に目を凝らすのが怖い。

 もし、また春香を失ったら俺は…。


「メリークリスマス!!豪、お疲れさま」

 俺の精神状態とは真逆の明るい声と共にクラッカーの音が鳴り響いた。

 そして明かりが着くと、そこにはミニスカサンタに扮した春香がいた。

 ただ夢中で春香にすがりつく。


「お願いです。ずっと俺の側にいて下さい。貴女がいてくれないと俺は前にすら歩けません」

 情けなさも恥も外聞もない。

 ただ涙が止めどめなく溢れていく。


「あちゃー、不覚にもときめいちゃたじゃない。俺に着いてこいとか言われて着いていってやるみたいな流れだと思ったんだけどな…私の方こそ、側に居させて。もう私を離さないで」

 春香は俺の指輪をはめてくれた。

 次の日、青山さんと俺はやっと夫婦になれた。

 

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