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魔王と痩せ我慢

久しぶりの更新です

 流石はゴルゴーン三姉妹の長女ステンノさん、一瞬で石像の林を作っちまった。


「ちょと!!豪、何がどうなったの?」

 数珠に入っている春香が慌てている…確かに初見だとちょっとキツい光景かも知れない。


「見りゃ分かるだろ?石化…正確には表皮が石灰化したんだよ。昔、デートで行った箱根の美術館を思い出すだろ」

 最も、どいつも一瞬で石化した所為で薄笑いや驚きの表情を浮かべたまま固まって美術館ってより、聖書に出てくるソドムやゴモラの方が近いけど。


「…そんな昔の事を覚えているんだ。じゃなく石化させてどうするか聞きたいの」


「言ったろ?誰も殺さずに餓鬼共の心を折らなきゃいけないって。一旦、連絡を切るぞ」

 そして忘れる訳がない。

 寂しい時には春香との思い出で乗り切っていたんだから。

 勇者一向に罵られている時も季節イベントでボッチの時も春香との思い出で乗り切ってきたんだから…さて、ここからが本番だ。


「それじゃ、餓鬼共の耳と口の石化を解除」

 口の石化を解除しなきゃ息が出来なくて死んじまうし、耳の石化を解除しないと心を折る事が出来ない。


「あのホソカワさん、みんなはどうなったんですか?」

 虎人のタマは恐怖の所為か、ブルブルと震えていた。


「体を石にしたんだよ。直ぐには死なないから安心しろ。まっ、ぶん殴れば砕けちまうけどな」


「嫌だなー、石を殴って砕ける訳ないじゃないですか」

 近場にあった岩をぶん殴って砕いてみせると、タマが涙目になっている。


「お望みなら砕いた岩を使って的当てをしても良いんだぜ?うまくいけば何人も巻き込んで倒す事が出来るからな」

 異世界でドミノ倒しに挑戦…脅しが効きすぎたのかタマは白眼を剥いて気絶した。


「あらあら、可哀想に。ホソカワさん、余り苛めちゃ駄目じゃないか」

 ステンノさんが腕を組ながら溜め息をついている。


「もう少し、根性があると思ったんですけどね。それじゃ、仕上げにいきます。田中堅太の石化を解除、そして残り奴は目の石化を解除」

 基本ヤンキーは見栄っ張り、手下の視線があれば田中堅太が逃げる事はないだろう。 


「HEY、そこのDEKAいの。俺の石化を解除した事をbackseaさせてやるぜ」

 田中堅太はポケットから櫛を取り出して髪をすくと、その櫛で俺を指してきた。

 それとback(後ろ)sea(海)=後悔させてやるって事なんだろうか?

 

「あー、後悔は英語でregretだぞ。でも、大丈夫だ。天狗の顔が赤くなっても誰も気づかねーから」


「黙れっ、僕は格好悪くないもん」

 興奮してるのか素の言葉で叫んだ田中は大振りな構えで殴りかかってきた。

 避けるのは簡単だが、ここはあえて殴られても平気な顔をしてみせる…いわゆる痩せ我慢である。

 そして何度も俺を殴る、田中。

(効かないと思ったら止めろよ!!お前の手が痛まない様に硬化を使ってないんだし…鳩尾をグーパンで殴るんじゃねぇ!!)


「なんだ!?もう終わりか?蚊でも、もう少し強く殴れるぞ」

(これ以上は止めろよ。痣になったら春香に叱られるんだからな)

 俺の願いも虚しく田中はさらに殴る蹴る。


「なんなんだよー、倒れろよ。パパに言うからなっ」

 息を切らしながら殴り続ける田中。

(無臭の湿布まだあったよな…春香の奴、枚数をチェックしてねよな)


「さて、こっから俺がやらせてもらうぜ」

 田中の腹を殴って意識を刈り取る。

 気絶したのを確認して、顔の皮膚だけを切り裂いていく。

 この時には武器を使うと脅し効果が半減するし、深く傷を着けて痕を残すと統治に響くから注意をしなくてはいけない。

 拳で表皮だけを薄く切くのがコツだ。

 気絶した田中の頭を片手で持ち上げながら、石化している餓鬼共を睨みつける。


「さて、次は誰の番だ?言っておくが俺は武器を使ってないし魔術も使ってないんだからな…助かりたきゃこれからは真面目に勉強や親の手伝いをすると誓え!!それだけが石化を解く方法だ」

 俺が石化を解除すると餓鬼共は蜘蛛の子を散らす様に姿を消した。

 ちなみに田中は回復法術を掛けた後に実家に転送…親御さん宛の手紙と洗濯代を内ポケットに入れておく。


「相変わらずホソカワさんは細かい所まで気を使うんだね。ご苦労様」


「ステンノさんの石化があったから上手くいったんですよ。あっ、今春香を出しますね」

 数珠から春香を出した瞬間、思いっきり頭を叩かれた。


「このお馬鹿!!ネズ美ちゃんと弘美ちゃんが大泣きして宥めるのが大変だったんだからね…初めまして井中ステンノ様ですよね、私は青山春香と言います。忙しい中わざわざお越しいただきありがとうございます」

 春香はステンノさんに頭を下げながら俺の耳を引っ張り始める。


「春香、耳が千切れる!!痛いって」


「あれを見て何とも思わないの?もう少し一般的な感覚を持たないと駄目だからねっ」

 春香の指差す先では、ネズ美さんと弘美さんが気絶しているタマを抱き締めて泣いていた。


「一般的な感覚ってなんだよ。俺はサラリーマン、哀しき中間管理職だぞ。平均値大好きな日本人だっ」


「何の平均値よ!!湿布を張るから早くお腹を出して…今日の晩御飯はお粥と梅干しだからねっ」

 そう言いながら春香は殴られた痕に湿布を張ってくれる。

 なんでもジャックに聞いて事前に準備をしていたそうだ。

 一人で張ると痛みが染みる湿布も春香に張ってもらうと、妙に心地いい。

 多分…いや、絶対に俺は一生春香に頭が上がらないと思う。 

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