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魔王とゴルゴーンと天狗

 ボールことタマちゃんの話では、天狗の田中堅太が手下を連れてくるのはおよそ四十分後。

 手下の数は約三百人、そしてこっちでまともに戦えるのは豪一人だけ。

 普通なら逃げるか仲間を集めるんだろうけど、うちの魔王は野球部よろしく荒れ地にトンボを掛けていた。


「豪、何してんの?」


「見りゃ分かるだろ。トンボをかけて地面をならしてんだよ」

 豪は何を当たり前の事を聞いているんだって感じで返してきた。 


「なんで今トンボをかけてるか聞いてんの。四十分したら天狗が手下を連れてくるんでしょ」


「だからだよ。そいつらの対応をする為に魔方陣を作ってんだって。外で召喚をする時は、地面をきちんとならしてから召喚するのが礼儀なんだぞ。家に人を招く時に掃除するのと一緒だよ。それと来て頂くんだから挨拶を忘れるなよ」

 流石はビジネス魔王、気遣いが細かい。


「それで誰を喚ぶの?ドラゴンを喚んで火で焼き払ってもらうとか」


「召喚の時に喚ぶって言い方は失礼に当たるんだぜ。お招きするって言うのがマナーなんだぞ。お招きするのはゴルゴーンの井中ステンノさんだ」

 なんか色々と聞きたい事が増えてしまった。


「ゴルゴーンなのに井中って… 」

 確か、ゴルゴーンってギリシャ神話に出てくるんじゃなかったっけ。


「ああ、大蟇(おおひき)蛙の井中さんと結婚したんだよ。天婦羅井中の海老天は絶品なんだぜ。何しろ油が違うからな」

 ゴルゴーンと蛙が夫婦って、絶対にかかあ天下になると思う。


「ゴルゴーンって見た人を石に変えるんだよね。大丈夫?それにゴルゴーンは倒されたんじゃないの?」


「ちゃんと制御出来るから大丈夫だよ。それと殺されたのは妹のメデューサさんの方。昔の話だけどステンノさんの前では言うなよ」

 倒されたじゃなく、殺されたか…。


「分かった。でも、三百人位なら豪一人でなんとかなるんじゃないの?」


「倒す事は簡単さ。でも怪我をさせずに無力化させるのはキツいんだよ」

 いや、三百人を倒すのが簡単って。


「あれ?倒しちゃ駄目なの?」


「田中堅太だけじゃなく魔王子の手下の多くはガキなんだぜ。俺はこれからこの地も治めなきゃ駄目なんだよ。でも、子供を殺したら親御さんが素直に従ってくれなくなるだろ?むしろ、世の中の厳しさを心の奥底に刻ませた方がスムーズにいくんだよ」

 途中まではまともな事を言ってたのに、心の奥底に刻むってなによ。

 地面をならした終えた豪は地面に杭を刺すと、ロープを結び付けて円を描いた。

 そして円の中に文字を書いていく。 


「完成したの?」


「魔方陣はな、次はステンノさんに連絡を入れる…あっ、井中さんですか?細川です。この間の宴会は無理を言ってすいませんでした。お陰で鯛神様はご機嫌に帰って頂く事が出来ました…ええ、本日は奥様にお願いをしたくて…わざわざすいません…あっ、ステンノさん、細川です。またアルバイトをお願いしたくて…ええ、三十分後にお願いします」

 携帯に頭を下げても意味はないと思うんだけど。

 電話を終えたと思ったら、豪は違う所に電話を掛けだした。


「ああ、俺だ。井中さんにバイトをお願いしたから支払いを頼む。それと業者からもらったジュースの詰め合わせがあったろ、それも渡しておいてくれ…ああ、鯛神様が海老天を一柱で百本近く食べて店に迷惑を掛けたから、そのお詫びだ。頼むぞ」

 哀しくなる程、サラリーマンだね。


 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 土煙をあげながら暴走馬車が迫ってくる。


(馬車で蛇行すんなよな…おー、無理に難しい漢字を使ってんな)

 ちなみに春香と猫娘二人は数珠に隠れてもらった。

 そしてタマちゃんはと言うと


「あの、そろそろ頭に血がのぼって来たんてすけど」

 大事な虎質だから、逆さまにして木からぶら下げている。


「だったら腹筋の鍛練を兼ねて頭を持ち上げろ。何なら頭の下で火を焚いてやろうか?」

 懐かしの盃を持たせる鍛練もありかもしれない。


「だ、大丈夫です。俺にお構い無く…でもセンター・ケーン様は強いんですよ、大丈夫ですか?」


「oh!!ユーがマイブラザーをいじめたんだな。俺がオクトパス殴りにしてやるぜー」

 俺に絡んで来たのは金髪の天狗…オクトパス殴りはタコ殴りって言いたかったんだろう。


「面倒臭いのが来たな…ステンノさんお願いします」

 魔方陣に魔力を流すと、光の奔流が生まれる。


「あらあら、細川さんお久しぶりねー。聞いたわよ、彼女が出来たんだって。良かったわねー、おばちゃんも安心だよ。スキュラさんなんて涙を流して喜んだんだからお店に彼女を連れて行きなさいよ」

 現れるなりマシンガントークをしてきたのはメタ…ふくよか体型のゴルゴーン井中ステンノさん。

 本人曰く天婦羅の試食の結果だそうだ…昔は美人だったらしいが今じゃ蛇の髪の毛がツチノコの髪の毛となっている。


「ええ、あそこの餓鬼どもを片付けてくれたら挨拶をさせますよ」


「あらあら、若いわねー。まだ子供なのに大人ぶっちゃって…」

「豚ババアうるせえんだよ」

「ああん!!このクソ餓鬼、誰に言ってんだよ。石にしてやるから反省しな」

 流石はステンノさん、表皮だけを石化してくれた。

 後は、呼吸困難になる前に田中を倒せば良いだけだ。

 後、井中の旦那さんに奥さんを怒らせた時のアトバイスを聞いておこう。



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