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サキュバスの女王はJC?

 三十数年生きてきて、始めて知った…カマキリ人ってやつれるとナナフシみたくなるんだと。

 執務室にやって来た部下(せきね)を見て、気まずさからか額から冷や汗が滴り落ちる。


「豪さ…ん、サインを…お願いします…」

 サキュバスのお梅さんに搾り取られたらしく、幽鬼の様に痩せこけてしまったカマキリ人の関根が書類を手渡してきた。


「おう、ご苦労様」

(確か、カマキリ人の社会は女性上位社会で、男のカマキリ人はパートナーに尽くす事に無上喜びを感じるって話だよな)


 流石に進化の過程で交尾後の捕食行動は無くなったらしいが、本能に基づいた性質らしい。


「せ、関根さん大丈夫ですか?」

 春香が心配そうに声を掛けた。


「ええ、頑張る目標が増えましたので」

 そう言って嬉しそうに微笑む関根だが、その笑みはどこか痛々しい。


「あー、色々無理をするんじゃねえぞ。ほらっ、これを持っていけ」

 俺は大きめの紙袋を関根に手渡す。


「これは…赤ヒュドラじゃないですか。ありがとうございます」

 赤ヒュドラ、知り合いの神様に頼まれて俺が作った精力増強ドリンク。

 作り方はヒュドラを瓶に封じ込めたら、そこに焼酎を投入。

 エキスが十分に出たら加熱してアルコールを飛ばし、そこにマンドラゴラとかホークビー(鷹蜂)のロイヤルゼリーを加えた物。

 関根がよろよろとおぼつかない足取りで、退室したのを見計らい春香に声を掛ける。 


「春香、お梅さんに精気(めし)の食い過ぎは体に良くないって言ってくれないか?」

 体は体でも関根の体だけど。


「分かった。それとお梅ちゃんから聞いたサキュバス族の現状を報告書にまとめておいたから。はいっ、これ」

 ちなみにお梅さんは未だに関根以外の男が苦手らしく、俺はまともな会話が出来ていない。


「原因はやっぱり獅子人族か…真逆の部族が隣の合ってるから仕方ねえか」

 サキュバスは女性のみで構成される完全な母系社会。

 サキュバスは相手が人型なら種族問わずに子供を成す事が出来て、生まれ来る子供もサキュバス(じょせい)のみ。

 サキュバスは年頃になると、色々な人族の社会に溶け込み子種を得る。

 対する獅子人族は亭主関白が当たり前の男性社会。

 力のある雄がハーレムを築く。

 性格は好戦的で他種族にも、よく戦を仕掛ける。

 そして女性を拐っていく。


「そっ、それでサキュバス族は二十年くらい前に領地に結界を張って鎖国状態にしたんだって。でも、その所為で異性を話や本でしか知らないお梅ちゃんみたいに純情な子が殆んどなんだって。本当、獅子人の男って最悪」

 ちなみにお梅さんの父親は偶々領地に迷い混んだ商人との事。

 

「あー、誤解があるみたいだから言っておくけど。ハーレムを持てるのは、獅子人でも一握りの野郎だけだぞ。大抵は成人になると、群れから離れて女を得れないまま孤独死するらしいぜ。うまく結婚出来ても強い奴に奪われるらしいからな」

 ちょっと前まで似た様な立場だったから、同情を禁じ得ない。


「何それ!?馬鹿じゃないの?」


「だから獅子人は個体は強くても領地をでかく出来ないらしいぜ。腕っぷしが強いのと戦が上手いのは別話だし、狩りか主体だから兵糧の感覚もないみたいだからな」

 ちなみに、今隣り合っていたのはアンデッドしかいないブラッド伯爵領と鎖国したサキュバス領だから、何年も他国に攻め込んでないらしい。


「それでこの後はどうするの?」


「当面は復興作業を優先させる。それとお梅さんに頼んで、サキュバスのサリア女王と面会をするつもりだ。ジャック達には別件で動いてもらうから、これは俺と骨丈さんが中心になって動く」

 誤解されたくないし、獅子人に盗られたくないから春香にも同行してもらう。


「別件って?」


「ジャック達には、この世界のどこに穢れ者がいるかを、サイス達には光の神ルークスを探してもらう」

 出来たら穢れ者は厳重に封印して置きたい。

 何しろ、美の世界なんて訳が分からない価値観を創られたから、穢れ者がとんでもなく強くなっていそうだし。


「ふーん、そう言えば関根さんとお梅ちゃんに子供が産まれたら、どんな子になるの?」


「そりゃ、カマキリ人の血をひいたサキュバス!?」

 関根、再びすまん。

 お前の娘は、超肉食系になるかも知れない。



―――――――――――――――


 気まずい、非常に気まずい。

 サキュバスの国の住民は、当然女性ばかり。

 しかも、サキュバスは種の特性上容姿が老けにくいと来てる。

 ごついおっさんが女子高に来た様な感じで、アゥエーイ感が半端じゃない。


「ねっ、ねっ、あの赤い髪の騎士良くない?」

「僕は黒髪の魔族が細マッチョで好みかな」

「私はローブを着たおじ様が渋くて素敵ですわ」

 そして、俺が連れて来た独身派遣員の連中は熱い視線を集めている。

 そう、連れて来た連中は…。


「プッ…、豪は見事なまでに、サキュバスさん達のお眼鏡に叶わないみたいだね」

 俺の隣を歩く春香が、からかう様に話し掛けてきた。


「サキュバスは魔力に敏感ですから、ホソカワ主任の規格外の魔力に恐れをなしてるんですよ」

 骨丈さん、ナイスフォロー。

 そう、俺の強過ぎる魔力がいけないんだ。


「ねっ、先頭を歩いてるリッチとゴツいのならどっち?」

「えー、それ究極の選択なんですけどー」

「私はリッチのおじ様かな?優しそうだし」

「あー、あのゴツいのブラッド伯爵をボコボコにした奴だよ。物凄くヤバい奴らしいよ」

「私も聞いた!!ブラッド伯爵の首を聖剣で斬り落とした上に溶岩に投げ捨てたんでしょ?」

 俺は、今泣いても許されると思う。


「なーに、へこんでのよ。まだ男を見る目がないガキの言葉なんて聞き流しなさい」

 春香はそう言うと、俺と腕を組んでくれた。


「その…ありがとよ。今日、仕事が終わったらどっかに飯でも食いに行くか?」


「一々、私に気を使わないの。それに晩御飯の材料は、もう切っちゃってるんだよ」

  

「ああ、あれがサキュバスの城だな…マジかよ」


「あはは…なんかメルヘンチックと言うか乙女なお城だね」

 春香が苦笑いするのも、当然でサキュバスの城は色とりどりの花に囲まれたピンク色の城。


「日曜の朝のアニメに出て来そうだな。防御目的より信仰対象として建てられたんだな」


「ご、豪。なんか凄い人が来たよ…」

 春香の言う通り、露出度の高い服を着た金髪の女性が体をくねらせながら歩いてくる。

 顔の造りも体の造り正にサキュバスの女王と呼ぶのに相応しい美しさだ。


「あー、あれがサリア女王だな。サキュバスは魅了の魔術を効果を上げる為に、オーバーアクションに成りがちらしいぜ」

 魅了を無効化出来る俺達からすれば何かの体操してる様にしか見えない。


「サリア女王様ですね。女王様、自らのお出迎えとは恐悦至極に存じます。私はブラッド伯爵に代わり隣領を治める事になったゴー・セクシリアと言う猿人でこざいます。以後、お見知り置きを。隣にいるのは私の婚約者のハルカ・バレルです」

 王族に失礼の無い様に重々しく頭を下げる。

 ここで気を付けなくていけないのが視線。

 相手から目を逸らすのは失礼だし、視線を下げると誤解されてしまう。

 だから、視線はサリア女王の頭に固定。


(ちょっと、話が違うじゃん。あの動きをすれば、どんな男もメロメロになるんじゃなかったの?こんな恥ずかしい服を着てるのに馬鹿みたいじゃない)

(ちょっと、待ってください。良いんですよ、今月のポップサキュバスに書いてたんですよ)

 サリア女王は俺の反応が芳しくなかったのを気にして、従者と相談をし始めた。


(ちょとポップサキュバスは可愛い系御用達でしょ。私は大人だからサキュバス自身にしってって言ったじゃない)

 中学生雑誌から、いきなり主婦雑誌かよ。


「サリア様失礼します、獅子人が攻め込んで来ました。軍を率いるのはレオネアと思われます」


「えー、マジ最悪。めんどうくさいー」

 俺も色々面倒臭いから、さっさと獅子人族を倒しちまおう。


「半分は俺に着いて来い。残り半分は骨丈さんとここを守れ!!それじゃ、発情期のどら猫をぶん殴りに行くぞ!」

 やっぱり、こっちの方が性に合う。

今の子の言葉遣いが分からないからサリア女王の口調に不安があります。

今の女の子はこの小説を見てないかは良いかも知れませんが

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