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魔王様一行エクジルへ 魔王の新人教育

 天使のユウキが勢いよく窓から飛び出して行った後も、豪は気不味(きまず)そうに、私の方をチラチラと見ている。

 その原因は多分ユウキだけじゃなく、いつの間にか模様替えされていた執務室だと思う。

 黒光りする大きな木製の机と椅子、さっきまで天使のユウキが座っていた革のソファーとお客様用のテーブル、床には汚れが目立たないベージュの絨毯、木製の大きな書類棚、そして書類棚の上には二体のフィギュアが置かれている。

 あれは確か、私達が子供の頃に流行った超人プロレス漫画に出てきたキャラクター。

 一つは筋肉質で頭から角が生えたフィギュアで、もう片方のフィギュアは顔に隈取りがありカンフーシューズを履いている。


(それなりに稼いでる癖に、内緒で買ったのが気不味いんだな。だけど、豪甘いよ。パソコンに履歴が残ってたいたから、とっくに知ってるんだよね。まぁ、武士の情けで気付かない振りをしてやるか)

 ちなみに豪のパスワードは前の私の誕生日。


「あー、春香。お前も自分の机とか必要な物を選んでくれ」

 豪はそう言うと、一冊のパンフレットを手渡してきた。

 中には写真付きで、色々な事務用品が載っている。


「ドリアード製の机?ホーリーマホガニー使用の椅子?何これ?」


「スチール机とかだと規制が掛かる世界もあるんだよ。ちなみに俺のは椅子と机は世界樹を使ってる」

 そう言えば、豪はジェイムでも同じ机と椅子を使っていたっけ。


「なんで、そんな貴重な物を机にしてんの?」 


「頑丈じゃねえと直ぐに壊れちまうんだよ。ほら、相手に手を出せなくて机を叩いて怒らなきゃいけない時もあるし」

 そう言えば、豪はジェイムの時も女の人には机を叩いて脅かしていた。

 それを見て泣いた同僚に教えて上げたい…魔王(ごう)も、お使い番組を見て泣くんだよって。


「だから机にへこんでいる場所があったのね。それで、あの三人はどうするの?まさか…首?」

 どうみても、あの三人は豪が諸手を上げて迎えるタイプには思えない。


「俺にそんな権限はねえよ。進退を決めれるの創竜のオジキだけなんだぜ。何より魔族や天使は貴重だし。それに情けない事に、創竜カンパニーは万年人手不足なんだよ」

 豪は、両手を大きく広げながら大きな溜め息を漏らす。


「人手不足?結構な人数がいた気がするけど?」

 

「派遣員の仕事に耐えきれずに早期退職したり、現地で家族を作って辞めたりで、長続きする奴が少ないんだよ。出先の神様に気に入られて跡取りになった先輩派遣員もいるしな」


「神様の跡取りって…取引先の社長に気に入られてお婿さんになるんじゃないんだから。まさか…あんたにも声が掛かってるの?」

 私は、思わず豪の腕にしがみついてしまう。

 強いとか稼ぐとかじゃなく、豪は誰にも渡したくない。


「今、言われているのはカマドウマ神とスカラベ神。まっ、こっちが断る前に娘さんに断られてるけどな。向こうにすりゃ、俺は見た事もない生き物なんだし。童話に色んな生き物に求婚される話があったろ?ありゃ、嘘だな」

 確かに、カマドウマやスカラベの女神から見れば豪は魔物。 

 そう言えばカマドウマは別名便所コオロギで、スカラベは別名ふん転がし。

 

「いくら、豪でもふん転がしは無理か…プッ、ごめん、豪が一緒にフンを転がしている姿を想像したら、ついね」


「ったく、あの三人は俺が(ちょく)で教育をする。あのままじゃ、どこにも出せないしな」

 

「本当に出来るの?」

 今までの事を考えると、体に叩き込んで教えそうだ。


「三人供、新人によくいるタイプだからな。魔族は自分より強い奴を知らないだけで、女騎士は自分の正義が絶対だって思い込んでいるんだよ。天使は、王族とかと一緒で他人は自分に頭を下げて当たり前だって思ってんのさ。早い話が、三人供、井の中の蛙だよ」


「へー、ちゃんと考えてるんだね。それで、どうするの?」


「魔族は俺がぶっ飛ばして現実を教えてやる。天使は他種族を馬鹿にしてたから、オーガのカルモにへこまされたら考えを変えるだろ」

…うん、やっぱりそうなるんだ。


「カルモさんって、復興班なんでしょ?大丈夫なの?」


「復興班に所属していても、あの天使よりカルモの方が何倍も強いよ。それにヘコますのは戦いじゃなくても良いしな。何よりカルモは天使に詳しいから最適なんだよ」

 つまり、豪は戦いで魔族を降すと。


「天使に詳しいって、知り合いか友達でもいるの?」


「天使の知り合いなら俺にもいるだろ?カルモの奥さんが天使なんだよ、それもかなり高位の天使なんだぜ。何でも王族の住む地区も貧民街も区別をせずに復興したカルモに惚れたんだよって」

 豪は、カルモさんの結婚の話を本当に嬉しそうにしてくれた。

 結婚指輪に使う宝石を取りにカルモさんと二人でダンジョンに潜って、結婚式のウェディングケーキは豪が気合いを入れて作ったらしい。

 

 結果、魔族は豪と向き合っただけで泣いたし、天使はカルモさんに法術比べで惨敗して逆ギレしたけどカルモさんの奥さんに説法されて態度を改めた。

 そんな時、女騎士が一人でサキュバスと戦いだしたって、報せが執務室に届いた。

感想お待ちしています。

前半の妹と絡む豪と、今の春香と絡む豪ではどっちがお好きですか?

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