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魔王様一行エクジルへ ハルカとユウキ

 他の新人派遣員と合流する為に、私とリミちゃんは事務所に戻ってきた。

 何でも、サイス君は転生をしているし特別な試験をクリアしているから参加しなくて良いらしい。

「ハルカさん、サイスは大丈夫かな?あいつ、お人好しで抜けてる所があるから俺が側に居てやらないと心配なんだよ」


「大丈夫だよ、ジャックさんと雪さんも一緒なんだから…それに豪もいるし」


「ホソカワ主任がいるから余計に心配なんですよ。ヴァンパアイヤの城に三人で殴り込むなんて信じられないよ」

 どうやらリミちゃんはサイス君が、うちの馬鹿(ごう)の無茶に付き合わされないか心配している様だ。

  

「あはは…途中からヴァンパアイヤが泣いて謝ってたんだよね」


「ジャックさんとユキさんが、ゴーさんの手綱を握れるのはハルカさんしかいないって言ってたし」

 手綱か…豪は聞き分けが良いと思うんだけどな。


「いや、豪は何もしなきゃ人畜無害(じんちくむがい)な奴だよ」


「えー!!神地獄破壊(しんじごくはかい)のホソカワ主任って聞きましたよ」

 ごめん、豪、色々と情報が少ない私にはこれ以上のフォローは無理。


「と、とりあえず集合場所に行こ」


 集合場所のホールには大勢の新人派遣員が集まっていた。

 ホールには猿人、エルフ、ドワーフ、リザードマン等様々な種族が集まっていて中には魔族や天使までいた。


「あー、ハルカ久しぶり。元気してた?」


「マリー、久しぶりー。着いていくがやっとで毎日ヘトヘトだよ」

 私に話し掛けてきたのは明るい茶髪とそばかすが特徴のマリアンヌ・ダリアことマリー。


「私も。毎日毎日、模擬戦や講義ばっかりで疲れちゃったよ。ハルカは戦闘班を希望するの?良いよねー、コネがあると好きな部署に行けて」

 

「希望を出せるだけ良いって。私なんて最初から豪専属の秘書に決められてるんだから。ほらっ、誰か来たよ」


「えー、これから新人派遣員実地研修を始めます。担当は復興班所属のレアーレ・シンチェローがさせていただきます」

 そしてスーツを着たオークがハンドマイクを持ちながら挨拶を始めた。


(あれ?あのオーク、ジェイムにもいたよね?へー、組織の人だったんだ)

 オークの区別なんてつかないから他オークの空似かも知れないけど。


「これから行く世界は MSKSm836、 エクジルの元ブラッド伯爵領です。先発隊として戦闘班からジャック・ウォーレンと雪・ウォーレン、サイス・レギューム、復興班から骨丈(ほねだけ)(いとし)金体(かなだ)源次郎(げんじろう)が行っています」

 先発隊の名前が呼ばれると周りから歓声が上がる。

 特にジャックさんと雪さんの歓声が凄かった。


「ジャックさんとユキさんは凄い人気ですね。まるで芸能人みたい」

 

「私と一緒に講義を受けた子も雪さんのファンって言ってたからね」

 ちなみに、そのマリーは感激で打ち震えている。


「それと今回のリーダーは戦闘班の細川豪主任ですので気を付けて下さい」


「気を付けてって。豪は猛獣じゃないんだから。って、あれ?」

 豪の名前が出た途端、ホールはシンと静まりかえった。


「ハルカには言い難いんだけどさ…講義とかでホソカワ主任の仕事のDVDをよく見るんだよね。特に相手目線で撮られたDVDなんてホラー映画みたいな出来だったからさ」

 逃げても隠れても追ってくる魔王(ごう)…って、私の男はホッケーマスクも着けていないし人喰い鮫でもないんだけど。


「とりあえず、これから詳しい仕事内容を説明します。それから誰の下で働いてみたいか希望をとりますので」


 新人派遣員の主な仕事は農作業とインフラ整備、それから襲撃を掛けてくる魔物や魔族との戦いになるらしい。 


「今回戦う魔族はサキュバスと獅子人になります。男性の方々は見知らぬ女性に話し掛けられたら気を付けて下さい。美人で必要以上に露出をした服を着ていたらサキュバスの可能性がありますので。獅子人は女性獅子人を多く連れた男性獅子人は実力が高いので気を付けて下さい」

 何でも獅子人はライオン同様、強い男が複数の女を囲うハーレムを築くらしい。


「それと男性獅子人を倒すとハーレムの権利が移動する場合もあるので注意して下さい。対処に困ったら一人で解決しようとせずに、先輩派遣員や担当派遣員に連絡を入れて下さいね。それでは先輩派遣員が担当派遣員の名前が書いたプラカードを持って立っていますから希望する所に並んで下さい」

 私はすぐさま豪の所に並んだ。 

 なんとなく、豪が私を呼んでる気がしたのだ。


―――――――――――――


 一方、その頃豪は


「嫌だ、来ないで。それ以上近づいたら大声をだすからね」


「こんのっ自意識過剰天使が…嘘、嘘、だから泣くなよ。もう少ししたら俺の秘書が来るから」


 怯えるユウキを相手にして、春香の帰りを今や遅しと待っていた。


――――――――――――――


 豪のプラカードを持っていたのは作業服を着たオーガ。


「私は復興班のカルモ・モデストです。ホソカワ主任と一緒に皆さんを担当します…今回は十人ですか」

 私の他はみんな屈強と言うか強そうな感じがする。

 特に目立つっているのは、天使と魔族と女性騎士の三人。


「担当?天使の私がオーガに指示されるとは墜ちぶれたものですね」

 ウェイブが掛かった金髪を弄りながら天使が呟く。


「はんっ!!俺に言う事を聞かせたきゃ実力で聞かせるんだな」

 紫の肌をした筋肉質の魔族がうそぶく。


「オーガや魔族と共に正義が成せるものかっ!!それより早くサキュバスと獅子人を倒しに行くぞっ」

 女騎士が高らかに宣言した。

 揃いも揃って癖が強いと言うか、豪の嫌いなタイプなのは確実だけど。


「一つ言っておきます。ホソカワ主任は言葉より先に手が出る時がありますので気を付けて下さいね。では、行きます…転移っ」


――――――――――――――

 

 次の瞬間、私達はブラッド伯爵の城の前にいた。


「皆さんにはこの城を拠点にしてもらいます。それではホソカワ主任に挨拶に行きますから、着いて来て下さい」

 カルモさんの後に着いていくと、執務室と書かれた部屋の前に着く。


「ゴーさん、カルモです。新人派遣員を連れて来ました…」

 カルモさんが声を掛けると、豪がドアの隙間から顔だけを出した。


「おう、御苦労様。カルモ、春香は来てるか?」


「豪、焦ってどうしたの?」

 豪の額には冷や汗が流れている。


「我々を無視して話を進めるなっ」

 天使が豪に喰って掛かろうとすると


「あんっ!!誰だテメェは?天使が調子くれてると羽をむしって羽毛布団の原料にすんぞ…いや、こっちの話だから。春香、頼む。こっちに来てくれ」

 豪に促されて執務室に入ると、一人の少女が涙を浮かべながらソファーに座っている。


(例の地の天使のユウキだ。ちっーと俺と因縁があって、まともに話が出来ないんだよ)


(因縁?何をしたのさ?)

 豪がチラチラと私の方を見てくる。


(…怒らないか?)


(先ずは話をしてみて)


(前に彼奴に試合を挑まれたんだけどよ。創龍のオジキを馬鹿にされて頭に血が上っちまってよ…)

 

(良いから早く話して)


(鎧を砕いたらユウキの胸に手が当たって泣かれたんだよ。わ、わざとじゃねえぞ。女だって知らなかったんだし)

 豪は情けないぐらいに慌てている…ブラッド伯爵と戦った時とはまるっきり別人だ。


(わざとじゃないんでしょ?とりあえず任せて)


「初めまして、細川豪の秘書をしている青山春香です。ユウキ様にはこの地に塩化カリウムの鉱床を作って欲しく来てもらったんです」


「本当にそれだけ?そいつ何もしない?」


「大丈夫ですよ。細川は何かをされない限りは手を出しませんので」

 思わず語尾がきつくなる。


「だって、僕の事をいやらしい目で見ているし」


「大丈夫ですよ、ユウキ様は細川の好みでないので。それとこれは豪の女として言わせてもらうからねっ。おあいにく様だけど豪は私がきちんと満足させていますから。第一、私達はあんた達に頼まれて来てるのよ?鉱床を作ったら直ぐに帰って構いませんから」

 そして豪の腕に自分の胸を押し付けてみせる。

 

「な、なーに?それ?分かったよ。作ったら帰るからね!!イーだっ」

 ユウキはそう言うと窓から飛び出して行った。


「春香、ありがとな」


「あんたはただでさえ、誤解されやすいんだから。きちんと考えてから行動しなさい。よく今までハニートラップに引っ掛からなかったわね」

 どうやら、私以外に豪の秘書は勤まらないみたいだ。


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