表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
54/84

魔王様一行エクジルへ 契約相手は春香?

 ブラッド伯爵を倒した翌日、空は見事に晴れ渡った。

 容赦なく照りつける太陽の所為で額から汗が滴り落ちる。


「サイス、芋はこんな感じで良いか?」


「ええ、切った面には灰を塗って下さい」

 俺達はただ今農作業の真っ最中、ちなみに農作業指導はサイスにお願いしている。


「畑を耕したり、水を掘り当てるのは直ぐだったのに、ジャガ芋を半分に切るのは手作業なんだ」


「耕やすのはアースウェイブを使えば一瞬だし、水も気弾を使えば一発だけど、細かい作業や植えるのは手の方が早いし確実なんだよ。ったく、トラクターの持ち込みぐらい許可しろよな」

 お陰で、今日は陽が明ける前から起きて水脈を掘り当てたり畑を耕したりしている。


「ヴェランスさん何回もお礼を言ってたね。ゴーもヴェランスさんとアンゴロに行けば英雄になれたんじゃない?」


「昨日、アンゴロを守ったジャックが行くから意味があるんだよ。しっかし、ここの領民が全員アンデットだとは思わなかったよ」

 昨晩アンゴロの町にゲシュライがアンデッドを率いて襲撃を掛けたらしいが、ジャック達が返り討ちにしたそうだ。

 そして朝一でサーチを掛けてみれば人類タイプの生体反応がゼロ。

 つまり、今のところの労働力は俺達だけ。

 

「でも、私は戦っている豪より畑を耕している豪の方が好きだよ。それでこの後はどうするの?」


「とりあえず食物を含めて緑を増やす。緑が増えれば虫や草食動物が来る、そうすりゃ肉食動物やお目当ての連中も来るからな」

 生き物の種類が増えなきゃ自然も戻らないんだし。


「お目当て?猟師でも呼びたいの?」


「ブラッドがいなくなって、ここら一帯は支配者がいなくなっただろ。そこが豊かになれば自ずとお客様が来るのさ…エグジルの魔族達がな」

 エグジルには王がいないから、力のある魔族がそれぞれ領地を納めてお互いを牽制しあっていた。

 当然、ブラッドがいなくなれば勢力争いにも変化が生じる。

 王がいない、つまりブラッドの伯爵は自称だったらしい。


「確か、力があるのは魔王子こと鬼族の斉藤優守、ドラゴン族の魔剣将軍ファング、デビル族のカース大帝、サュキバス族のサリア女王、獅子戦士レオネア、アンデットマスター ダークネビュライなんだよね」


「とりあえず隣り合っているのは獅子族の領地とサキュバスの領地。どっちも大した事ねえから新人の実地研修にするか」

 ついでに農作業やインフラ整備をさせよう。


「私も研修を受けた方が良い?でも、戦い方なんて習ってないよ」


「一人だけ特別扱いは嫌だろ?戦い方ね…春香は魔法を使えるか」

 ルッカ時代に魔法を習っていたら助かるんだが。


「使えるけど魔力が少ないから威力には期待出来ないよ。初級魔法しか知らないし」


「魔力に関しては増えてると思うから心配ない。それに魔法なら俺が教えるよ」


「魔力が増えてる?何でそんな事が分かるの?」

 

「ブラッドの時に聞いたろ?俺の血には魔力や法力が溶け込んでいるって。血以外にも魔力が溶け込んでいるんだよ」

 春香は毎朝毎晩、俺の魔力を注ぎ込まれていた様なもんなんだよな。


「魔力が少ないから魔法使いになるのを諦めてメイドになったのに…キスとかで魔力が増えるなんて」

 キスとかと言った春香の顔は赤く染まっている。


「普段は俺達の近くにいたから気付かなかったのかもな。精霊魔法や召喚魔法を使いたいなら、知り合いを紹介するし」


「紹介って、魔法使いとか?」


「派遣員には精霊や魔族もいるんだぜ。直接交渉して契約を結べるんだよ」

 ちなみに俺は魔族使いが荒いと拒否されている。


「魔族か…ねぇー、豪。契約ってどうするの?」


「書類に名前を書いて相手からサインをもらえば大丈夫だよ。書類なら直ぐに取り寄せる事が出来るぜ」

 契約書類を送ってもらい、春香に手渡したら直ぐに何かを書き始めた。


(春香の奴、魔族に知り合いなんていたのか?)


「はい、サインをお願い」


「申請者は青山春香で契約相手は、ほ、細川豪!?」

 つまり俺。


「これからは豪の側から離れる事もあると思うんだ。でも、これなら安心でしょ」

 確かに、春香は俺の秘書だからタイムスケジュールを把握しているから仕事の邪魔はしないと思う…そう、仕事は。


「あの、これは門限を過ぎた場合も適用されるんでしょうか?」


「事前に誰とどこに行くか教えてくれたら大丈夫だよ。サインしてくれるよね?」

 そう言って上目使いで見つめてくる春香。

 この後、俺はチェーンデュ魔王って、あだ名をつけられた。

 繋がれた魔王、ダンジョンの深層部にいそうだけど、実態は尻に敷かれた俺。

 ちなみに春香が来てから仕事帰りに寄るのは、スーパーかケーキ屋ぐらいしかないから使われる事は殆んどなかった。


――――――――――――――――


 畑仕事が一段落して休んでいると、別件で動いてもらっている骨丈さんと金体さんが帰ってきた。


「豪さん、身元の確認がある程度終わりました」


「ありがとうございます。一覧が出来たらグラスランドに送りますね」

 リッチの骨丈さんにお願いしたのはアンデットになった人の身元確認。

 

「細川殿、どこの土もカリウムが不足しております。近くに塩化カリウムの鉱床もないので持ち込む必要があります」

 ミスリルゴーレムの金体さんには土の成分を調べてもらった。


「マジっすか!!あちゃー、天使に連絡して鉱床を作ってもらうか。サイス、五大天使で土を司っているのは誰か分かるか?」


「確か、ユウキ様だと思っていました」


 ユウキ、アルマの守護天使で出来れば春香とは顔を会わせて欲しくない奴。


(ユウキ伝いで俺の現状がアルマに流れるのも不味いな。ここはジャックか雪さんに任せよう)

 チートな魔王と言えども、彼女に叱られたくないのだ。

感想お待ちしています

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ