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勇者と初めて会いました

 ようやく1歳になれた。最近、婆ちゃんの疲れが酷くて心配なんだよな。

何気にヒールとか掛けまくっているが効果はなし。

ここの文化レベルは中世だから平均寿命が短いのは予想出来る。

神には婆ちゃんが死んだら丁重にもてなす様に心にも体にも染み込むぐらいに言い聞かせてあるけど。


「ゴーや、儂にもしもの事があったら村長の言う事を良く聞くのじゃぞ。しかしゴーは本当に不思議な子じゃの。手が掛からない所か泣き顔すら見せないんじゃから…我慢ばかりさせてすまないの、儂の娘が貴族なんぞと結婚したばかりに」

またまた重いです、俺は立場を明かす事が出来ないから黙って婆ちゃんを見つめている。

流石に1歳児が"婆ちゃん、俺は一人暮らしに慣れてるから心配ないよ"なんて言える訳がないし。


「ローズさん、具合はどうだい?」

ちなみに婆ちゃんの名前はローズ・セクシリア、昔は名は体を表した美人だったらしいが時の流れは残酷である。


「村長様、儂よりゴーを頼みます。実の親にも捨てられたらこの子が不憫で仕方ありません。どうかゴーを頼みます」

そう言って村長に頭を下げまくる婆ちゃん。


(…仕方ねえ。この世界をきちんと糺して婆ちゃんが自慢出来る様にしてやるか)


「ローズさん安心して下さい、グレイス家から手紙が来ました。近々ローズさんとゴー君を迎えに来るそうです」


「良かった、これでゴーにご飯をお腹一杯に食べさせてあげられる」

グレイス家が迎えに来るのは側室の母親を見殺しにしたとあっては聞こえが悪いからだろう。


(まだ貴族とは関わりたくねえんだが、婆ちゃんに心配は掛けれねえしな。大人しく着いてくか)


数日後、俺と婆ちゃんは無駄に装飾が施された馬車に乗っていた。


(弱ってるお年寄りを乗せるのにクッションの1つもなしかよ。しかも馬車1台にこんなに金を掛けて税率が心配になるぜ)

ちなみに婆ちゃんには酔って体調を崩さない様にオートヒールを掛けてある。

3日かけて着いた町はグレイスシティ、そして案内された屋敷は貴族様の立派なお屋敷でだった。


「お母様、こんなに痩せてしまって」

婆ちゃんをお母様と呼んでる女性がこの世界でのは母親なんだろう。

銀色の長い髪に溢れんばかりの色気…血は繋がってないのに、こんな色っぽい女の人と親子設定なんて。


「アコニや、隣にいるのがゴーだよ。ゴーは手が掛からない良い子に育ったよ」


(アコニって確かトリカブトの事だよな。婆ちゃん、とんでもねえ名前をつけたな)


「お母様を寝室にお連れして、それとその男の子は客室に連れて行って」


「はい、アコニ様」

リアルメイドが返事をする、奥様と言わないのは正室に対する配慮なんだろう。

「あらアコニ様、そちらにいる汚らしい子供は誰かしら?アルマちゃんとは大違い」


(リアル金髪縦ロールだっ!!それと腕に抱かれているのがアルマか。あれが勇者の因子を持つ娘だな)


これが剣の勇者にして俺の妹アルマ・グレイスとの出会いだった。


――――――――――


 メイドの冷たい視線を浴びながら客室に移動。


(くっ、折角リアルメイドがいるのに。ご主人様は無理だけどお坊ちゃまには期待してたんだよな)


連れられ来た部屋は家具から絨毯まで高級品。

(この家具や絨毯に、どれだけ民の汗と涙と怨みが染み着いてんだか)


俺を客室に通した理由、それはあくまで息子ではなく客として遇するって事なんだろう。

そんな事を考えていたら扉が静に開いた。


「ゴー、貴方がゴーなのね。ごめんなさい、ママが弱いばっかりに貴方に寂しい思いをさせてごめんなさい」

涙を流しながら謝るアコニさん…いや、母さん。

あのアルマって娘は俺と年が変わらないと思う。

正室の金髪縦ロールにしてみれば年の近い男子である俺は邪魔以外のなんでもない、それこそ殺してしまいたいぐらいに。

この間の暗殺者は母さんの未練を断ち切る為と金髪縦ロールの懇願って考えるのが妥当。

俺は痛いぐらいに抱きしめてくる母さんの頭を撫でるしか出来なかった。


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