一応、赤ん坊です
俺のここでの名前はゴー・グレイス、名前に関しては豪のままだ。
用事が済んだら、この世界から居なくなる訳だから名前を変えるのは面倒なので創竜の親父に弄ってもらった。
ちなみに俺がいる国の名前はグラスランド、名前の通り巨大な草原に建てられた国だ。
そしてこの世界の略称のMSKSm836はMSは(Multiethnic society=多民族国家)K(king=王政)S(Sword=剣)m(Magic=魔法)の略。
ここで言う多民族国家とは、猿人(俺)や猫人、犬人やエルフ、ドワーフがいる世界を現しいて、次のキングは主に敷かれている政治、ソードは主に近接武器が使われている事をmは魔法も使われている事を表している。
そしてグレイス家は子爵だそうだ。
グレイス(優雅)を掲げている子爵だけに俺は忌み子扱いらしい。
これは俺を動きやすい立場にする為に創竜の親父が指定したそうだ。
それはありがたいんだが
「ゴー、ママですよー」
最初に俺に母乳をくれた女性カリアはあれから俺に付きっ切りだ。
(代償行動ってやつか。旦那が死んで子供と引き離されたショックから逃れる為に俺を愛してるんだな。…厄介だな)
これは俺の行動を制限するだけでなく、彼女にも彼女の子供にも悪影響を与えかねない。
「ゴーは、全然ぐずらないでな良い子でちゅねー」
そりゃそうだ、30半ば過ぎの男が簡単に泣く訳がない…いや、最近は涙もろくてホ○ルの墓や親子系ドキュメンタリーを見ると泣いてしまうが。
(それにしてもカリアさんの笑顔はヤバいな。代償じゃ心は埋まらないか…。それなら)
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その日の夜、俺は例の天使シャインを呼びつけた。
「ゴー様、今日はどんな御用でしょうか?」
「あのカリアって女を実子の所に戻せ。…カリアの子供は勇者の因子を持ってんだろ?」
前任の神様が言った勇者は俺と縁のある子供、現時点で俺と縁があるのはカリアの子供か俺の兄弟に限定される。
「そうですが…どうすれば良いんでしょうか?」
「お前がカリアの子供に祝福を与えろ。そして母親が必要な事を告げれば良い。母親を引き離す余裕があるお家柄なんだろ?」
「はい、カリアは農民の出ですが亡くなった旦那は公爵家の次男です。しかし正妻がカリアを疎ましく思ってるようで」
嫉妬か、貴族の正妻なら政略結婚が殆どだ。
かたや農民のカリアは見初められての側室、旦那の愛情がカリアに傾くのは必然。
「その正妻に新しい縁を授ければ問題ない。例えば正妻の実家と取引きしている商人とかだ。その時に正妻と商人をお互いに惚れさせるのを忘れるなよ」
ちなみに今の俺は生まれて3ヶ月である。
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数週間後、無事にカリアが帰って行った。
「カリアは無事に勇者の元に戻りました。これで良いのでしょうか?」
カリアの道中を保護していた天使シャインが報告に来た。
「良い、先の事を考えると勇者に母親を盗られたと逆恨みされるよりも乳兄弟の方が勇者を育てやすいからな。これから来る乳母に小さな幸運を授けるから乳には苦労しない」
俺の精神や力は大人でも消化器官は赤ん坊なので、母乳以外はまだ体に毒なんだよな。
早く熱々の唐揚げを食いながらキンキンに冷えたビールが飲みたい。
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当然の事ながら俺は夜泣きをしない。
トイレも婆さんが起きてくるまで我慢をしている。
その為に夜は1人で寝る事が多い、婆さんも老体に鞭をうって一人暮らしをしながら俺を育てくれてるんだから夜は休ませてあげたいのが人情というもの。
今回はそれが幸いした。
俺の部屋に賊が侵入して来たのだ。
無抵抗で可愛らしい俺にナイフを振り下ろす酷い賊、いや足音をたてない所を見ると手練れの暗殺者だろう。
(この野郎。こんな可愛い赤ん坊を殺そうとするとはふざけた奴だ。食らえっ)
拳を具現化して暗殺者に放つ。
(バインドッ!!おい、お前に命令したのは親父か?…言わなくても頭の中を読んでやるよ)
暗殺者に拘束呪文を掛けて問い詰める。
(おい、シャインはいるか?)
「ゴー様、ここに」
「親父が暗殺者を寄越した。カリアが俺を引き取る様に訴えたんだろうな」
生まれた赤ん坊を放棄したのがバレたら風聞が悪い、噂になる前に殺そうとしたんだろう。
「ゴー様、よく平気で話せますね」
(当たり前だ。俺の中身はは30過ぎのおっさんだぜ。それに親の愛情は本当の親からたっぷりともらったよ)
嫁も見せないままに、生き別れちまった親不孝な息子だけど両親には感謝をしている。
「しかし、今は赤ん坊の姿ですから。それでこの男はどうしますか?」
「そいつは女だよ。なかなか良い女だぜ!!良い体をしてやがる…親父からその女の記憶を消せ」
体が大人なら色々と楽しみたいんだが、しつこい様だが今の俺は赤ん坊。
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