魔王-春香=魔王の威厳-
春香を連れてオジキの部屋から退室する。
俺からみれば日常的な風景も、春香にとっては驚く事だったりする。
「豪、大きいカマキリが歩いてるよ!!なんで骸骨が普通に廊下を歩いてるの?」
「二人とも派遣員だから当たり前だろ。カマキリは関根って言って俺の部下だ。それと骸骨じゃなくてリッチ、復興班の骨丈さんだよ」
ちなみに骨丈さんは腐敗魔法を使って、痩せ衰えた大地を手早く栄養たっぷりの腐葉土に変えてくれる。
「豪さん、ご苦労様です。そちらの女性は保護対象者ですか?」
「あー、こいつは何つうか」「豪の婚約者の青山春香です」
「こ、こ、こ、婚約者っ!!ヒッ!!」
春香の話を聞いた骨丈さんが、突然あばらを押さえながら苦しみだした。
「た、大変っす。骨丈さんの心臓が動いちゃったっす!!医療班の人はいるっすか?豪さん、悪趣味な悪戯は止めてくださいよ」
俺に婚約者が出来るのは、止まっていたリッチの心臓が動く程の驚きらしい。
「このカマキリ!!悪趣味な悪戯ってなんだよ。羽をむしりとるぞっ!!」
「豪!!あんた部下を脅してどうすんのよ。いきなり婚約者を連れて来たら驚いて当たり前でしょ」
「あれはコミュニケーションだよ、日常的なコミュニケーション」
「うわっ、あんた普段から部下の人に、あんな言葉を使ってんの!!それにあれはコミュニケーションじゃなく、上司の横暴だよ」
流石に2年近くも同棲をしていた春香は、俺の事が怖くないらしい。
これから春香が俺の仕事を管理するらしい…大丈夫か、俺の威厳。
それから街で、春香の服や生活用品を購入。
「もう少し物を買わなくて良いのか?」
「細々とした物は都度買い足すし、服とかは働いて買うから大丈夫。それで、いつ向こうに戻るの?…やっぱり、殺されなきゃ駄目なの?」
「国を乗っ取った魔王が倒されて初めて依頼が完遂なんだよ」
やっぱり、魔王は生きていたなんて無理矢理パート2を作ったドラマじゃないんだし。
「あれだけ苦労して国を建て直したのに、未練はないの?」
「今回の依頼は家のリフォームみたいなもんだよ。綺麗にリフォーム出来たからって、そこに住み着く大工はいないだろ」
なんという事でしょう、赤字だらけだった財政が匠の手で黒字になりました。
「魔王は破壊の権化って聞いてたのに、まさか財政再建をしてるなんてね」
「派遣員は何でも屋だからな。戦いもするし財政再建もする。依頼があれば勇者も育てるし、伝説の武器を作る時もある…あっ、今回はご迷惑を掛けました」
街で偶然会った知人に会釈をする。
「あれ?今の人どこかで見た事ある」
「お前、自分が産まれた世界の神様を忘れたのか?スフェールの神カルムさんだよ、今回無理を言ってお前を連れ出したから後から箱菓子か酒を贈っておかなきゃな」
「はぁっ!?なんでカルム様が普通に街を歩いてるの?私、子供の頃、よくお祈りをしていたんだよ」
「ここは創竜のオジキが治める世界だか色んな神様が依頼に来たり会合を開いたりしてんだよ。普通に買い物に来たりもするしな」
ちなみにカルムさんが持っていたのが、たこ焼だと知ったら春香はどんな反応をするんだろ。
「まさか、豪に神様の知り合いが出来てるとはね」
「当たり前だろ、俺の携帯の電話帳には神のグループがあるぐらいなんだぜ」
ちなみにアイコンは、なんとなく地球儀。
「へー、女神様もいたりしてね」
「女神で入ってるのは、クマとオラウータンとオーガの女神だな。色々と相談にのってくれた神達だから春香の事を報告しとかなきゃな」
オーガの女神様なんて、神との付き合い方のイロハを教えてくれた恩人ならぬ恩神なんだし。
「人達じゃなく神達ね。それでスフェールの仕事が終わったらグラスランドに戻るんでしょ?私も着いてくから」
ちなみに俺は春香の前でジャッドに斬り殺されて、しこたま説教をされる羽目になった。
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次回から本編です