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魔王と5大天使

 トーナメントが行われるの闘技場。

「そういや、ここで誰かさんが天使を泣かせた上にセクハラしたんですよね」

 ジャックがニヤニヤしながら俺に話し掛けてきた。


「あれは誤解だっつうの。冤罪だよ、冤罪…ジャック、サーチをかけてみろ。天使様達は懲りてねえみたいだぜ」


「ありゃま、祝福を掛けまくりじゃないですか?豪さん、どうするんですか?」

 トーナメントに出場する勇者隊の連中には天使達が、これでもかってくらいに祝福を掛けまくっていた。


「そりゃ公平を期す為には消さなきゃいけないだろ?ほいっと」


「サイス、こっちの世界じゃ天使様の祝福って簡単に消せるのか?」

 リミはサイスの体に隠れる様にして怯えながら俺を見ている。


「あれは豪さんとかジャックさんクラスじゃなきゃ無理だよ。リミ、豪さんは色々と規格外だけど優しい人だから大丈夫だよ」


「サイス、俺は豪さんと違って人間は止めたつもりはないんだぜ。一緒にするな」

「そうよ、うちの旦那は祝福は消せても封印は出来ないんだから」

 ぼっち虐めだ、部下達がぼっちな俺を虐める。


「お前らなそんなに俺の酒量を増やしてねえのか…ジャック、ここは任せた。サイスなら負ける事はねえけど横槍を入れて来たら倍にして返してやれ。雪さん、勇者隊から女が出て来たら出てくれ」


「分かりましたよ。今度は止める人がいないんですから、程々にしといて下さいよ。上司がセクハラで逮捕なんて笑えませんからね」


「今度はきちんとサーチを掛けてから戦うよ」

 あの後、春香の写真に土下座して謝ったたんだし。


「豪さん、面倒な女天使様が出て来たら私を呼んで下さいね」


「雪さん、ありがとな。女天使なら魔法で攻撃しとくから大丈夫だよ」


「サイス、何があったんだ?豪さんはどこに行くんだ?」

 リミはまだ派遣員の訓練をしていないから、何が起こったから分からず1人蚊帳の外なんだろう。


「祝福を消された天使が豪さんを気で挑発してきたんだよ…豪さん、闘技場は壊せないで下さいね」


「きちんと結界を張っておくから問題ねえよ、天使どもを逃がす訳にはいかねえしな」


「サイス、豪さんの方が悪者に見えるんだけど」

 リミの突っ込みに派遣員一同が大笑いしやがった。

 闘技場から一歩外に出ると空間が歪められてる所かあった、これは天使がご招待してくれてるんだろう。

 歪んだ空間を抜けると、不自然なまでに澄んだ空気で満たされた部屋に出た。

 部屋は一点の染みもない真っ白な壁と床で作られている。


「ようこそ、ゴウ・セクシリアさん…いや、魔王とお呼びした方がよろしいでしょうか?申し遅れました、私は5大天使のリーダーを勤めさてもらっているノーブルと申します。以後、お見知りおきを」

 話し掛けてきた来たのはロマンスグレーの髪と髭がダンディな紳士の格好をした天使、シルクハットをかぶって燕尾服に身を包んでいる。


「俺が魔王だって知ってるんなら、邪魔をするんじゃねえよ!!こちとらお前らの神から頼まれて来てんだぞ」


「嘘をつくな!!ブライネスト様がお前みたいな醜い者を呼ぶわけがない、何よりブライネスト様をを敬わないのは大罪にあたる」

 横から話に割って入ってきたのは緑色の髪のイケメン天使。


「あのな、俺達派遣員が敬うのは創竜神しかいねえんだよ。そこの苔頭、ブライネストはこの事を知ってるのか?」

 

「コ、コ、コケ頭ですって!?ヴィクトワール様の美しい髪を信じられません!!」

 お嬢様風の金髪の美少女天使が俺を睨み付けてくる。


「コケ、コケ、コケ、鶏じゃねんだからよ!!。ブライネストが知ってるかどうかはっきりしやがれ」


「ブライネスト様と我ら5大天使がいれば、わざわざ魔王を誕生させる必要はありません。何よりもユウキを辱しめブライネスト様の世界を汚した罪は我ら5大天使が見逃す訳にはいかないのです」

 次に絡んで来たのはおしとやかな感じ黒髪美少女天使。


「盲信ここに極まれりってか。お前ら誰にケンカを売ってるか分かってんのか!!」



「貴方の強さは我々も良く存じておりたます。ですから、この様な手段を取らせてもらいました」

 マジかよ…そこにいたのは結界に閉じ込められた3人の女性。

 この世界での俺の母親アコニ・グレイスとメイド姿のマリアさんとアリアだった。


「お前がこの世界で親しくしてる人間は限られている。剣の勇者アルマは利用価値があるが、この者ども罪人」


「魔王を産んだ母親なんて死んで当たり前ですわ。魔王に仕えようとするメイドも一緒」


「ただし、貴方が大人しくしていればこの方達には手出ししません。魔王に騙されていた事にして差し上げます」

 そんな時、アコニ・グレイス…母さんの口が静かに動いた。

ゴウちゃん逃げてと…

 この仕事が終わればアコニさん達との縁は切れる。


「ちっ、分かったよ!!好きにしな」

 俺は真っ白な床に座り込む。

 アコニ母さんからもらった愛情は俺の心を暖めてくれたのだから。

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