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今回の依頼は外れらしい

 それは奇妙な光景だと思う、何しろ生まれたばかりの赤ん坊に男が怯えきっているのだから。

男には純白の羽が生えている、所謂天使って奴だ。


(おい、なんで神自身が来ねえんだよ?創竜カンパニーを舐めてんのか?)

まだうまく喋れない為に天使には念話で話し掛けている。


「決してそんな訳では…美神ブライトネス・ブレイブ様は大切なデートがあるらしく」

ブチッ、俺の中で音をたてて何かが切れた。


(ふざけんなっ!!キャンセルだ、キャンセル。なんで俺が転生してきたってのにふざけてんのか?)

赤ん坊と言う無力な存在に戻る転生にはデメリットが多すぎる。

その為、新人職員には守護者が派遣されるし、俺ぐらいのベテランになると、多少…それなりに人様から恨まれているので元の姿に一時的に戻る事が出来る。


「しゃーねえ。早くこの世界のメモリースティックを寄越せ」

ちなみに口を荒くしているのはワザとだ。

今回の転生待遇は決して良くない、このまま弱気で接していると好き勝手な条件をつけかねない。


「こ、こちらです」

天使は怯えながら俺にメモリースティックを渡してきた。

本来なら派遣された時に、その世界の神から渡されるのが、世界の知識を記憶しているメモリースティック。

内容は言語・宗教・生物・文化・風俗・国・依頼内容と多岐に渡る。


「こ、こちらです。ブレイブ様は明日の昼には来ますので」


(自分の上司の用件を他社に伝える時は様を外すのが基本ですっ!!)

日本でもサラリーマンだった俺としては見逃せない。


…嫌だ…もうお家に帰りたい。

この世界、MSKSm836は中世レベルの文化で銃はまだ生まれていない。

特徴としては魔法が生活に浸透しているそうだ。

それで俺への依頼は

1・女性勇者を強くして魔王を倒させる事。

2・邪神を倒す事。

3・勇者と王子様に硬い絆を結ばせる事。

何それ?自分には嫁も彼女もいないのに、他人様の恋のお手伝い?

久しぶりに人型の世界に来たのに?

しかも女勇者を育てろって?勇者への修行を開始出来るのは最低で12歳からだ。

当然、俺は本来のオッサンの姿じゃなきゃいけない。

つまりゴツいオッサンが"君、勇者になりたくないかい?それなら僕の弟子にしてあげるよ"…修行の前に捕まるって。

今から邪神を速攻で倒して魔王を陰から操るのが一番楽なんだけどね。

そんな事を考えていたら扉の向こうに人の気配を感じた。


「頼んだよ、ゴーはこの部屋で寝ているから」

最初に入って来たのは俺にトラウマを植え付けた婆さん。


「はい、分かりました」

そして婆さんと一緒に入って来たのは20代前半ぐらいの女性。

美人とまではいかないが優しい雰囲気で好印象をもてる。


「実の馬鹿娘も手放した赤ん坊だ。無理をしなくていいよ」


「それなら私と一緒です。旦那が死んで赤ちゃんと引き離されたんですから」


重い、てっきり街で乳が多く出ている母親が連れて来られたと思ったんだけとも、これは重い。

つい先までこの人の胸が見れると喜んでいた自分を殴りたい。


「今日から私がゴーのお母さんよ。よろしくね」

…実家から離れて10数年、優しい気持ちに久しぶりに触れた感じがした。


――――――――――


 次の日、俺の魂だけが神界に来ていた。

ちなみに本体はスヤスヤとお休み中。


「それではブレイブさん、お話を聞きましょうか?申し遅れました、私は創竜カンパニー戦闘班主任細川豪です」

言葉は丁寧だけれども、俺のご機嫌はめっちゃ斜め。


「いやー、昨日はごめん、ごめん。ちょっと女神とのデートで行けなくてさ。それじゃ勇者の事はよろしくね」

悪びれなく話すのがこの世界主神ブライトネス・ブレイブ。

ちなみに金髪長髪のイケメン。


「ブレイブさんは神になられてまだ日が浅いんですか?」


「良く分かったねー。一昨年、パパから引き継いだんだよ」

そりゃ分かるさ。

俺のもう一つの仕事を知らないみたいだし。


「それで前任の神様は私が来た事はご存じでしょうか?」


「パパには言う必要ないじゃん。今の世界は僕が管理してるんだし、今回の勇者プロジェクトも僕の発案なんだし」

やっぱりだ、神になりたての奴は世界を思い通りに出来ると勘違いしやすい。


「だったら前任者に報告して来て下さい。創竜カンパニーに依頼をしたけど、約束をすっぽかしたって」

俺はそう言って力を解放する。

いくら腹がたっても先に手を出した方が負けなのだから。

俺の力に気付いたのか初老の男性が転移して来た。


「誠に申し訳ありません。息子には厳しく言い聞かせますから」

ペコペコと謝る前任神。


「それはお任せしますから、今後の動きを知りたいんですが。それと息子さんの査定は次回にしておきますね」

派遣に並ぶ俺達の大切な仕事に神の査定がある。

神になったからといって好き勝手が出来る訳ではない。

好き勝手にされたら他の世界に悪影響を及ぼしてしまう事が多い、だから色んな世界に出入り出来る俺達が依頼のついでに神の運営状況を査定して創竜の親父に報告する。

しかし俺達は接待や贈り物を禁止されているので旨味はなく恨まれるだけの損な仕事だ。


「ありがとうございます。ゴー様には勇者と一緒に旅をしてもらいます。ちなみに勇者の因子を持つ娘はゴー様と縁が深い者です。そしてゴー様には途中から魔王となり勇者に倒されてもらいます」

つまり最終的には俺は教え子に倒されろと…

それ、何の嫌がらせ。


感想お待ちしています

ちなみに改訂作とは無関係な作品です

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