クリボッチ魔王
今回の話はクリハッピーな人にはおすすめ出来ません…そんな人はイブに小説みないか
俺の前には5人の少女とイケメンがいる。
今回のお仕事は美少女戦士キュートハーブの敵役。
今回の手順は
1・俺がキュートハーブをあしらっているとイケメンオレガノライトが攻撃してくる
2・俺が苦戦した振りをして偶然通りかかった子犬【依頼主の女神の仕込み】を俺が狙うとオレガノライトが子犬を庇う。
3・怒った美少女戦士グリーンミントが新技を都合よく閃いて倒される。
ちなみに倒された後に言われたのが
「クリスマスはラブラブな恋人達のもの。あんたみたいなモテない男には無縁なんだから」
依頼主の女神様は泣きながら俺に謝っていた。
そし辛い仕事を終えた俺を待っていたのは冷えきった真っ暗な部屋。
「ただいまー…って誰もいねえよな」
今日はクリスマスイブ、今年はクリボッチ、クリハッピーなんて差別用語が使われているらしい。
言っておく、クリスマスはイエス・キリスト様が生まれた事を祝う日だ。
決して恋人達の聖なる夜でもないし、サンタの日でもない。
そしてこれはクリボッチの俺の負け惜しみでもない…筈。
(春香がいた頃はクリスマスはケーキ屋が忙しいから26日に祝ってたよな)
春香の手作りのローストチキンと俺が作ったケーキとシャンパンをテーブルに並べて…今テーブルにあるのはスーパーの3割引になった焼き鳥と芋焼酎。
ケーキは春香の遺影の前に置いてある。
「春香、情けねえ男だって笑ってんだろ?お前なら私の写真なんて捨てて私が悔しがる良い女を捕まえてみろとか言いそうだな」
春香が死んで7年、俺が派遣員になって6年。
6年と言っても派遣員は仕事を終えると時間を巻き戻されるから実質的には50年以上は戦っているんだが。
「でも今夜ぐらいはお前のサンタさんの愚痴を聞いてくれや、今日なんて美少女戦士の敵役だぞ。恋人達のクリスマスの邪魔は許さないなんて言われてさ」
春香が生きてたらそんな小娘は私が説教してやるって飛び出して行きかねない。
俺が想いでに浸っていると携帯が鳴り出した…この着信音は創竜のオジキだ。
「この番号は現在使われておりません。ピーとなったら」「くだらん事をしてないでさっさっと来い。対応出来る派遣員で暇なのはお前だけなんじゃよ」
悔しいが反論できない。
行こうと立ち上がった瞬間、俺はオジキの前に転移させられていた。
「時間外手当て出るんでしょうね。それで何があったんですか?」
「お前が今日行った世界で穢れ者が怒ったらしい。あの世界を担当してる女神では手に負えぬ」
穢れ者は澱み者とも言われる。
世界を創り上げる時に余った原始の澱みが穢れ者、だけど普段は陰で大人しくしている。
はっきり言って怒った穢れ者は笑えないぐらいに強い。
テンションもモチベーションもあげないと戦う気はおきない。
「なんで怒ったんですか?第一、穢れ者は人見知りが激しくて隠れてるんすよ」
「美少女戦士キュートハーブとやらが私達の世界から全ての穢れをなくするとか言って攻撃したらしい」
俺のモチベーションがた落ち。
「今日がクリスマスじゃなきゃ断ってましたけどね」
私の彼は自慢の彼なんだ。
豪はクリスマスにケーキでみんなを笑顔にするリアルサンタなんだよ。
春香は友達に俺の事をそんな風に自慢していたらしい。
だからクリスマスにダサい事は出来ない。
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穢れ者が暴れたらしく町は壊滅状態になっていた。
「そんな私達の技が通じないなんて」
確かあれはイエローカモミールとか言う娘。
「諦めないで!!絶対に浄化できるから」
次に話したのはグリーンミントか。
「グリーンミント、私も力を貸す。穢れは消さなきゃいけないんだ」
オレガノライトが格好をつけている。
「阿呆か!!穢れも澱みも含めて世界が成り立ってんだ。世の中、てめえらの都合の良いもんだけ認めるなんざただの傲慢なんだよ」
光があれば影が生まれる、笑ってるやつがいれば泣いてるやつもいる、優しさもあれば妬みもある、片方だけ認めるなんて人間のエゴでしかない。
「あなたは魔王ガイチューン!!」
ハーブの敵だからガイチューン…女神手を抜きすぎだろ!!
「残念ながら今の俺のお節介やきのサンタさんだよ。餓鬼ども、今日帰ったら親御さんにありがとうと言え。良いか、クリスマスに1人で頑張ってる人間がいるから笑う事が出来るんだよ。医者がクリボッチだからって患者を拒否するか?お巡りさんがクリハッピーは嫌いだからってお前らを守らないか?料理人が恋人がいないからって手を抜くか?お前らの見下した驕りが穢れを生むんだよ」
なんとかボロボロになって穢れ者を倒せた。
そんな俺を待っていたのは冷えきった焼き鳥。
でも、今年のクリスマスも俺は誰かの為のサンタクロースになれたと思う。
クリスマスにきつい感想はやめましょう、辛くなります