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魔王と天使と勇者

 俺は基本的に天使が嫌いだ。

いや、嫌いと言うよりは苦手と言った方が正確かもしれない。

天使は真面目で融通がなきかない、しかも下手に刺激してしまえば堕天をしてしまう。

まるで夏休みデビューをした優等生の様にコロッと変わってしまう。

その上に下手に堕天させてしまうと

「我は真実を悟った。これからは神ではなく魔王様にお仕えする」

「人を救っていたつもりが人を悲しませていたとは皮肉だな」

とか言ってしつこく付きまとってくる。


だから、この展開は非常にやばい…。


「ねえ、王子。僕あのおじさんと戦いたい」

天使の1人が俺との戦いを希望しているらしい。


「ユウキ様、相手は普通の人間なんですよ」

王子、ナイスフォロー。

普通の人間ではないけど、下手に天使を倒したらアルマに嫌われる可能性が高いんだって。


「あのおじさんは強いよ。僕、強い人と戦いたいんだ」

ないわー、俺は強い奴とは出来れば戦いたくない派。

だって負けたら始末書だし、怪我が治らなくても次の仕事入れられるし。

あのユウキって天使を倒すのは簡単だ。

でも天使をあっさり倒したらますます警戒をされてしまう。


(仕方ない…ギリギリで勝った様にみせるか)


「ゴウに命ずる。天使ユウキと試合をせよ」

王子様、俺だから良いけど普通なら死刑宣告だよ。



_________________


 ローブを脱いだユウキは銀色ショートカットの美少年、ショタ好きにたまらないだろうし日本にいたらヤオイデビューが確定だと思う。


「おじさんは斧を使うんだよね。アルマから聞いたよ」

アルマを呼び捨てにした時点でユウキを泣かせる事が確定した。

ユウキは髪と同じ銀色のフルアーマーを身に付けている、武器は片手剣。


「ユウキ様、お手柔らかにお願いします」

周りへの配慮を考えて俺はあくまでも敬語を使う。


「シャインから聞いたよ。君は竜に仕えてるんだってね、竜なんてキモいトカゲでしょ」


……

「おい、小僧。それは創竜のオヤジの事か?」


「だから何?僕がお仕えしてるのはブライネスト様だもん」

天使は自分が仕えてる神のみを崇めるし、ユウキは創竜のオヤジが何者なのかを知らない。


「派遣員の前でオヤジの事をトカゲ呼ばわりしたんだ…痛えじゃ終わらせないからな」

俺もまた創竜と言う神に支える身、オヤジの悪口を聞いたからには堕天する間もなくボロボロにするつもりだ。


_________________



 闘技場に信じられない濃さの魔力が満ちていく。


「リ、リチェル様。この魔力はなんなんですか?あの男は何者なんです」

魔術師隊の1人が涙目になりながら俺に問い掛けてくる。


「ゴー・セクシリア、剣の勇者アルマの兄貴で俺やアンジェに戦い方を教えた男だよ。餓鬼の頃は強い兄貴と思っていたが…ありゃ、化け物だな」

ゴー・セクシリアの魔力は俺の倍ではきかないだろう…下手をしたら5大天使様を越えているかもしれない。

それだけじゃなく、あの化け物は武術も法術も規格外なんだよな。


(無邪気な餓鬼の時なら兄貴と言えたが、今は怖いを通り越しておぞましいな)


普通の人間なら天使様と相対しただけで恐れおののく。

だけど、あの化け物は余裕で笑っていやがる。



________________



 あり得ません!!法術の力は神に支える者が行使出来る力。

だから天使様と戦うなんて不遜な者が使える訳がないのに。


「シャ、シャイニングアロー」

ユウキ様の放ったのはA級の魔物をも瞬殺する光の矢。

それをあの男は蚊で払いのけるかの様に手で叩き落としのです。


「アンジェ様、今のは…」

神官隊の方には分からなくても不思議ではありません…私にも今のは不可能でしょう。


「手の平に法術を構築して光の矢を叩き落としたんです」

人では絶対に不可能な技、出来るとしたら神か…魔王。

神に仕える私の初恋の相手が、魔王とは皮肉ですね。


_______________


 お兄ちゃまのスペシャルお馬鹿!!


(どうして自重しないのよー。なんで人じゃなく天使様の方が涙目になってんの!!)

お兄ちゃまがさっきやったのは魔法の矢を素手で叩き落とすって禄でもない技。

みんなはユウキ様の法術を素手で弾いた事に驚いてるけれどもう1つ大事な事がある。

あの法術は普通の弓矢より速く飛ぶ、それをお兄ちゃまは素手で叩き落としんだよ。


「シャイニングアロー、シャイニングアロー!!く、来るなー!!」


「強い奴と戦いたいんだろ?だから教えてやるよ、トカゲに仕えてる男の強さを」

泣いてるユウキ様を構わずにジリジリと詰め寄ってくお兄ちゃま。

他の天使様もお兄ちゃまの力を測りかねて近づかない。


「絶対防御…アストラルバリアー!!」

アストラルバリア、あらゆる攻撃や魔術を防ぐ光の壁…って聞いたんだけど。


「自分から檻に入るとは良い心構えじゃねぇか…どうりゃ!!」

お兄ちゃまがアストラルバリアに頭突きをかます。

1発でひび割れるアストラルバリア。


「ほうら、見ぃつけた。大人しく捕まりやがれ」

そう言って笑うお兄ちゃまは悪者にしか見えない。

お兄ちゃまはユウキ様の鎧を素手で砕いいた後、胸ぐらを掴んで引き寄せた。


_________________


 ユウキを引き寄せた瞬間、手に柔らかい物が触れた。


「ぼ、僕のオッパイ触ったー!!もう、やだー」

…これはやばい。 

何がやばいって冷たすぎる観客の視線。


「お前女なのか?」

ユウキで僕だからてっきり。


「僕、女の子だもん!!」

つまり俺は女を泣かせた挙げ句に鎧を砕いて胸を触ったと。

事故って言っても誰も信じないよな。

戦いに男も女も関係ない…今の状況じゃやばいセリフか。

リチェルがドン引きしてる。

アンジェが軽蔑の眼差しを向けている。


そして

「お兄ちゃま、僕とお話しようね…主に女の子の扱いについて」


「はい、分かりました…あのアルマなんで髭を掴んでるのかな?」

アルマは笑いながら俺の髭を掴んでいる…正確には目が笑ってないけど


「ユウキ様、家の兄はきちんと反省させますので失礼します…お兄ちゃま!!こんな大勢の前で馬鹿じゃないの!?ほらっ行くわよ」


「アルマ、髭が抜ける!!女だって知らなかったんだって」

結果、サイスの出場権は手に入れたが俺は社会的信用を失いかけた。


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