魔王なりの解決策
アリアの身請け代金は金貨1枚、日本の通貨価値に直すと銀貨1枚が1万円、銀貨1000枚で金貨1枚と同額だからアリアの値段は日本円で約1、000万円。
人の所有権が1000万円ってのが高いか安いかは人によるだろう。
ちなみに身請け代が金貨1枚てのはかなり高いほうらしい。
アリアの話をまとめると、アリアの家はゾウル家に何代も騎士として仕えてきたらしい。
アリアの爺さん、早い話がファントムナイトの正体であるゴーチョク・ジンはゼイー・ゾウルの教育係りをしていた。
ゼイー・ゾウルは父親が死に跡を継ぐと増税したり難癖をつけて若い娘を連れてきたりと好き勝手しまくったらしい。当然、教育係のゴーチョク爺さんは諫める。
最初は適当に聞き流していたゼイー・ゾウルも煩わしくなったらしくジン家に謀反の疑いをかけて取り潰しにしたそうだ。
肝心のゴーチョク爺さんとアリアの父親は館に呼び出されたまま帰ってこなかったらしい。
そうなりゃお嬢様育ちのアリアの母親や世間知らずのアリアは周りの親戚、知人から言い様に騙されて気づけば娼婦として売られていたと。
「なんつーか耳にタコが出来るぐらいに聞いた話だよな」
美人や美少女に鼻の下を伸ばして願いを聞き入れて貴族をぶっ倒したのに何回も元婚約者や幼馴染みに美味しい所を持って行かれた経験がありまくる。イケメンだからって後から横取りが許されるシステムは納得がいかない。
「な、なんて事を!!こんな非道な話を聞いて何とも思わないのですか?」
「残念ながら俺は世間を勉強してこなかったり悲運を嘆くだけで何もしねえで白馬の騎士に期待してるお嬢様に同情する気はねえ。騎士の娘なら婚約者がいるだろ?泣きつくならそいつにしな」
こんな話に一々同情していたら派遣員の仕事は出来ないし、社会全てを敵に回さなきゃいけなくなる。
救う価値があると認めたら助ける事はあるが…何回、何十回といい人で終わった事やら。
そんなだから人型の世界に派遣されなくなったんだろうな。
「あなたは私を身請けして何をさせたいのですか?」
アリアは未だに貴族の娘感覚が抜けきっていないんだろう。
「今回の騒ぎを片付ける手伝いだよ。後は特にねえ、テメエで食ってく自信があるなら事が片付いたら好きにしな」
て言うか好きにして下さい、身請け娘なんて連れて帰ったらアルマの可愛い頭から何本も角が出ると思う…出なきゃ寂しい。
「分かりました。ジン家の汚名を晴らせるならどんな屈辱にも耐えてみせます」
つまり俺に身請けされるのは屈辱だと。
「それで爺さんが帰って来なくなったのは何時だ?」
「1ヶ月前になりますが」
おかしい、白骨化するには時間が短か過ぎる。
俺の予想では爺さんの遺体はまだ屋敷にある筈、つまり屋敷内だから死体を分解する生き物は少ないだろう。
…いや、あの馬鹿貴族が自分の屋敷で腐臭がする事に耐えれる訳がない。
そうなると考えられるのは
「アリア、俺はこれからゾウルの屋敷に行ってくる。俺の予想で行くと一騒動起きるぜ」
―――――――――
ゾウルの屋敷に着いた俺は屋敷にサーチをかけてみる。
…正解だ、どうやらゼイー・ゾウルは根っこまで腐りきっているらしい。
屋敷の人間に声を掛けて執務室に案内をしてもらう。
ちょうど真夜中の12時なった頃だ、執務室の前にファントムナイトが現れた。
空洞になったその目はじっと執務室を見つめている、まるで敬愛する主と仕事に勤しんだ日々を思い出すかの様に。
「おい、そいつを早く倒すんだ」
俺の事が気になるのかゼイー・ゾウルは監視に来たらしい。
「ああ、きっちりと片を付けてやるぜ」
俺はファントムナイトに背を向けて歩き出した。
「おい、どこに行くんだ?ファントムナイトは執務室の前にいるんだぞ」
「俺の生まれた国にはな、臭い物は元から絶たなきゃダメって格言があるんだよ。だからファントムナイトの元を絶つのさ」
俺が向かった先は執務室から少し離れた場所にある壁。
それを思いっ切りぶん殴った。
爆音に近い音に合わせて壁が崩れ落ちる。
そこにあったのは、ファントムナイトと同じ鎧を着た白骨化した遺体。
「やっぱりブラックウイッチウィードを植え付けていたか」
ブラックウイッチウィードは魔女草の1種。
白骨化した遺体にはブラックウイッチウィードの根がびっしりと絡んでいた、そしてそのブラックウイッチウィードは禍々しい黒い花を咲かせている。
普通のウイッチウィードは他の植物に寄生して瞬く間に数を増やす。
しかしブラックウイッチウィードが寄生するのは生物の死骸、死肉に根を張り腐る前に栄養を吸い取ってしまう。
「ブラックウイッチウィードの実は麻薬扱いで国から育成禁止令が出てるんだぜ?こりゃ子爵家は取り潰しだな」
「ふざけるな!!見られたらからには死んでもらう」
ゼイの合図と裏家業な人がゾロゾロとで来た
「いいね。久しぶりに暴れさせてもらうぜ!!」
――――――――――
数日後、家に戻った俺にゾウル家取り潰しの報告が入った。
「ゾウル家から大量のブラックウイッチウィードが出て参りました。ゼイは領民さらっての苗床にしてた様です…よほど怖い目にあったらしくゾウル家の人間はヒゲの男を見ると泣き出すそうですよ」
報告に来たのは天使のシャイン、ちなみに俺はシャインに王に対して今回の一件は神はお怒りだと脅す様に命令してある。
「ゼイはブラックウイッチウィードを流してた仲間からトカゲの尻尾切りにされたんだな。奴隷に麻薬か…この国も腐ってやがる」
「なぜあの娘を解放したのです?奴隷なら嫁に出来たのではないですか?」シャインがからかう様に尋ねてくる。
「奴隷制度は不幸しか生み出さねんだよ。必要論を言ってる奴はテメエが悪者になりたくねえだけさ」
人が人を支配するなんざ、思い上がりでしかねえんだから。
そのアリアは
「お姉ちゃん共々メイドとして働かせてもらいます」
「ゴー様に受けたご恩は忘れません」
アリアとマリアさんは姉妹だそうだ、そして今回の件を聞いた母さんが2人に同情し屋敷でメイドとして雇ってしまった。
「お兄ちゃま不潔!!身請けなんかして!!大嫌い」
そして俺はアルマに一週間お話禁止令を出されてしまう。
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