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第9話:感謝を形に――現代の知恵と不器用な贈り物

 俺は川を隔てた村の東側の木陰に座っていた。視界には数軒の家と、その間に広がる畑。村人が黙々と畑を耕している。


 あの後、ニコニコしている村長とニヤニヤするピウリに見送られ、何をプレゼントすれば良いか考えながら村を歩き回っていた。


「村長へのプレゼントね……」


 遠くを眺めながら唸っていると、


「どうしたんじゃ?」

 と声を掛けられた。


 声の方向を見ると、羽の生えた赤い猫が立っていた。


「ロバートじいさんか、いやあ、ちょっとね……」


 羽の生えた赤い猫、名前はロバート。数百年生きているらしい。見た目は可愛らしい猫だが、その言動は完全におじいちゃんだ。


「そうだ、ロバートじいさんは村長って何が好きか分かる?」


 村長とも古い友人のはずだ。何も知らないということはない。


「ほっほ、お主、村長を口説くのか?」


 猫なので表情は読めないが、明らかに笑っている。


「いやいや、そうじゃなくて……」


 先ほどの村長とのやりとりをかいつまんで説明した。


 ロバートじいさんはふーむと唸ってから、「なるほどの、お主も律儀じゃな」と言った。


「ワシが知ってるのは、村長は裁縫が趣味、後は綺麗好きで花を育ててる事くらいか。参考になるかの」


 村長は裁縫が趣味、綺麗好き、花を育てている。

 なるほど……


「それじゃ、ワシもピウリの店見てから魚獲りに行ってくるかのう。贈り物で大事なのは気持ちじゃぞ」


 そう言ってロバートじいさんはのろのろとピウリの居る村の入り口へ飛んでいった。たまに川でロバートじいさんが遊んでいるのを見た事があったが、アレは魚を獲っていたのか。


 それから俺は村長へのプレゼントを考えながら、村の中をゆっくり歩いていた。


 一周して村の入り口付近に差し掛かり、再びピウリの店を覗いた。


「いらっしゃいー、さっきぶりだねー」

 ピウリに迎えられる。村長とロバートじいさんは既に戻っていたらしく、今ここにいる村人は俺だけになっていた。


「メラニーさんへのプレゼントを探す?」

 ピウリがニヤニヤしているようなニコニコしているような表情をしている。


「う~ん」


 村長もこの店の商品を見ているからなあ。同じものを渡すのも気が引ける。


 村長は裁縫が趣味で、花を育てている。裁縫に役立つものが渡せないだろうか。


 商品を眺めていると、裁縫道具と布生地、綿はある。


 裁縫と言えば、昔学校の家庭科の授業で縫い物をした時に使った針山ピンクッションがあったな。この世界に針山があるかどうか分からないが、もしも無ければ便利ではないだろうか。


 ピウリの店にある裁縫道具の中に針山は見当たらない。


 ただ、買ってそれで終わりでは味気なさすぎる。自己満足かもしれないが、感謝の気持ちを伝えるなら作った方が良さそうだ。


 作ったものを入れる木箱があれば、さらに喜んでもらえるかもしれない。


「ピウリ、この裁縫道具と布生地と綿を買いたい」


「はいはい、全部で10ラントでいいよー」

 ピウリが腰の袋をごそごそと漁り、「はいこれサービスね」とおまけを渡してくれた。


 ピウリの店で買い物を済ませた後、村で木材加工をしているオークのムルルスから良質な木の板と釘を5ラントで購入した。さらにムルルスから木箱の作り方を教わりながら、一緒に作業した。


 1時間ほどしてからテオックの家に戻る。家主は今呑みに行っているので、この場にいるのは俺だけだ。


「疲れたが、まあまあ良い出来だろう」


 幅、高さ、奥行きが30センチほどの木箱。飾り気はなく、素人が作ったからやや歪んでいるが、達成感の補正のせいか悪くない造型に見える。使った木材だけは良質なので見映えは良かった。


「次は針山だ」


 裁縫道具で裁縫道具を作るというのもなんだかおかしな話だが、綿と布があれば針山は作れるはずだ。裁縫は学生の時以来なのであまり自信はない。


「失敗作は自分用にして、作ってみるか……」


 購入した布生地や綿は結構な量がある。服の補修にも使えるし、無駄にはならないだろう。


 それから夕方になるまで、俺はひたすらこの作業に費やした。不器用なのかもしれない。



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