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第8話:贈り物には贈り物を

「もしかして、足りない?」

 ピウリが察したようだった。


「あー、その、まあ……」


 手持ちはテオックから貰った銀貨9枚、90ラントだ。150ラントには60ラント足りない。


「本当ならまけてあげたいんだけどねー……」

 ピウリが少し申し訳なさそうに言う。


「気にしないでくれ、サービスしすぎるとアンタが食えなくなるだろう」


 服には「冒険者の服」と書かれている。日本語ではないが読む事ができる。あると今後の生活でも役に立つだろう、出来ればここで買っておきたい。


 テオックに前借りするか……いや、散々世話になっている。これ以上は迷惑を掛けられない。


 ならトレーナーかチノパンを売るか……?


 悩んでいると、後ろから声が聞こえた。


「あら、ピウリさんとヨウヘイ、こんにちわ」


 振り返ると、ウェーブのかかったセミロングの紫髪に、やや細めの整った顔立ち。そして下半身は蛇になっている。


「村長」

「メラニーさんこんにちわー」


 メラニー・ベルベ。アステノの村長で、種族はラミアだ。テオックが言っていた通り、美人で妖艶な魅力に溢れた女性だが、袖の長い緑色の服の上からケープを掛けた装いは上品な印象を受ける。


「ピウリさん、品を見せてくださいな」


「はいはーい、フリドー君、商品並べてー」「はいッス」


 俺はピウリが商品を並べ終える前に来ていたらしい。商品を並べている間、メラニーはすでに出されている商品を眺めていた。その横顔を見ていると、視線に気付いたのかこちらに話しかけてきた。


「ヨウヘイは何を買うか決めているの?」


「ああ、それなんですが……」


 無意識に冒険者の服に視線が向く。


「その服が気になっているのね。おいくらなのかしら」


「それ200ラントなんですけどー、特別価格で150にしてますー」

 商品を並べ終えたピウリがメラニーに答える。


「そうなんですよ、でもまあ……ちょっと」

 値引きされてもなお手持ちが足りないのは、いささかカッコが悪い。


「ヨウヘイはここに来てから日が浅いものね、確かに少し厳しいかも知れないわね」


 アステノに来た時に無一文だった事は村の住民なら知っている。財布の中には小銭と免許証が入っていたが、どちらもここでは使い物にならない。


「では私がこの服を貴方にプレゼントしましょう。この服をくださいな」


「えっ!?いやそれは……」


 ただでさえこの村の人達には世話になっているのに、これ以上甘えるのは。


「どうしたの、遠慮しなくていいわ。貴方がこの村に来た事でテオックをはじめ、村人たちも以前より活気が出ました。きっと人族である貴方の存在に刺激を受けているのでしょう。そのお礼をさせてくれないかしら?」


 そう言いながら、メラニーはピウリに料金を支払っていた。


「はい、150ラント」「どうもーまいどありですー」


「村長の気持ちは嬉しいですけど、俺も村長や皆に助けられてるのでそれは悪いと言うか……」


 しどろもどろになりながら答えると、メラニーは少し考えてから口を開いた。


「では私にプレゼントを渡してくだされば、この服をお返しにプレゼントしましょう」

 優しい瞳でこちらを見ながら言う。


「プ、プレゼントですか……」


 村長へのプレゼント。これは冒険者の服を実費で買うより厄介な難題なのでは。


「楽しみにしてるわね」


 メラニーはいたずらっぽく笑った。




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