第4話:幻想的な場所、そして魔獣
1週間後……
俺はすっかりアステノに馴染んでいた。
村人には快く受け入れられ、村長にも挨拶を済ませた。村長は俺の心配をよそに紫髪の美人だった。
下半身は蛇だったけど。
アステノの村人はみんな自給自足の生活を送っていて、俺はテオックの家の倉庫を借りる条件として、テオックの作業を手伝っている。
テオックは主に森の中で狩りをしたり、木の実や果物、山菜やハーブを集めているので、俺もそれに同行して主に荷物持ちをやっていた。
力仕事なら役に立てる。それくらいしか今の俺にできる事がなかった。
「今日は大樹の水場に行くぞ」
「大樹の水場?」
「村の西から森に入って、道なりに南西に進むとあるんだよ。あの辺りは魔素が強いから良い薬草やハーブが見つかるんだ」
魔素とは大気に存在する魔力のようなもので、これを栄養として育つ植物が存在するらしい。
アステノの周囲に広がるクステリの森の中には所々魔素の濃い場所があり、そこでは珍しい植物が手に入るようだ。この一週間でそういった基礎知識は少しずつ覚えてきた。
「その場所は遠いのか?」
「そうだな、距離は結構離れてるが、道が途中まで舗装されているから2時間掛からないと思うぞ」
舗装と言っても、もちろんアスファルトで舗装されているわけではなく、単に歩きや馬で難なく進める程度のものだ。
それでも道があるのとないのとでは大違いだと、この一週間で身に染みて分かっていた。
簡単な保存食と水、それから邪魔な草を刈ったり採取するためのナイフを持って、俺とテオックは大樹の水場へ向かった。
舗装された道を進み、途中で小道へ入る。小道を進むにつれて周囲が薄暗くなり、森が深くなっていく。
足元の草が増えて、木々の間隔が狭くなる。クステリの森の奥というのはこういう雰囲気なのか、と思いながら歩いていると、
「微妙に青みがかってるのは魔素が多いかららしいぜ」
テオックが説明する。
言われてみれば確かに、木々の間の空気がうっすら青みがかって見えた。「らしい」という言い方をするのは、きっと村の詳しい人から聞いた話なのだろう。
青みがかった森の中をさらに進むと、開けた場所に出た。
そこには言葉どおり、大樹と呼ぶに相応しい巨木がいくつもそびえ立っていた。
その根元は水場となっていて、透き通った水が浅く広がっている。
深さは足首から膝くらいのようだ。僅かに差し込む太陽の光が水面に反射して、一帯が淡く照らし出されている。
「なんだこりゃ、凄いな……」
思わず大樹を見上げた。
こういう景色はゲームや漫画の中にしか存在しないものだと思っていた。
俺が景色を眺めている間に、テオックはさっさと水場の近くを歩き回り、座り込んでいた。
「あったぞ」
近寄ってみると、テオックは足元にある白い茎を指差している。
「これは煮込むと甘くなって美味いんだ、後は……」
茎の近くにある背の低い葉を指差す。
「この草は不味いけど魔素が強いから魔力備蓄の料理や薬草に使えるぞ。そこそこ高く売れるから採ってくれ」
他にもいくつかオススメの植物やキノコを教わり、テオックと手分けして採取する。
こういう作業は意外と嫌いではない。無心になれるのが良かった。
「大体は一人でしか来ないから、二人だと沢山採れて助かるよ」
テオックが上機嫌に言う。
採取用の袋が半分ほど詰まった頃、テオックの雰囲気が変わった。
「なにか来るぞ」
耳をすます間もなく、森の奥から体長2メートルはあろうかという巨大な獣が姿を現した。
体毛に覆われ、顔は狼とイノシシの中間のような出で立ちだ。
「魔獣とか、マジかよ……」




